うるさいな。そう思いながら、私は目を開ける。
「あ、やっと起きた。おはよ。」
「おはよ~。健人君。」
「まぁ、もう昼だけど。」
彼━健人君は、私の彼氏。
「早苗ってば、昼休み中ずっと寝てたんだよ。」
私━早苗は、時計を見て、
「あれ、本当だ。」
「5時限目始まるよ。早くしなよ。」
「分かってるよ。そのくらい。」
急いで準備をする。ギリギリセーフ。
放課後に、彼からデートに誘われた。明日、公園で。だって。楽しみだなぁ。
次の日。お弁当を持って公園へ。今日は思ったよりも寒い。
公園に着き、彼の姿を━━。あ、いたいた。すぐに駆け寄り、
「おはよ。健人君。待った?」
「あ、おはよう。早苗。今来たところ。」
「正確には?」
「早苗に話しかけられたときから数えると、、、10秒くらい前についたかな?」
「ホントに今じゃん!」
私たちは空いているベンチへ。
「そういえば、ずっと気になっていたんだけど、持っているそれって、お弁当?」
「そうだよ。」
「早苗が作ったの?」
「もちろん!味は保証しないけど。」
「味の保証はないんかい。」
「だ、大丈夫だよ。…多分」
「そっか。うん。まぁ、信じとこう。大丈夫だって。」
お腹が空いてきたから、お弁当を食べる。健人君の1口目。
「美味しい?」
「美味しい!」
「良かったぁ。」
うれしいな。美味しいって言ってくれて。うん。我ながらさすがだ。
食べ終わった頃、空が黒くなってきた。
「うわ、曇ってきた。どうする?早苗。帰る?」
「まだ帰りたくない。もっと話したい。」
「それじゃあ、もう少ししてから帰りますか。」
30分後。彼が言った。
「あ、雪。」
「ほんとだ。雪だ。どうりで寒いわけだ。」
「それじゃあ、帰ろうか。雪が降ってきたし。」
「そうだね。帰ろう。」
私たちは、歩きだす。歩きながら、話す。
「ねぇ、覚えてる?私と健人君が出会った時のこと。」
「覚えているよ。俺が転入した時、1番最初に話しかけてくれたよね。俺は、不安だったから。安心できた。君が、助けてくれた。」
「違うよ。」
「え?」
「独りだった私を、健人君が助けてくれたんだよ。私が話しかけた時に、君がちゃんと答えてくれた。暗いところにいた私に、手を差しのべてくれた、光を差してくれた。」
「そっか。だから早苗は俺と一緒にいたんだんな。」
「そう。だからね、ありがとう。健人君。」
「ああ。」
プ━━━━!と、不意にクラクションが鳴った。後ろから、光が近づいてくる。
「危ない!」
彼に、押された。
「健人…君。」
━━嘘…でしょ━━
「健人君!ねえ!」
「早苗、怪我はない?」
「私は大丈夫。でも━━」
「聞いて、早苗。君は、生きて。俺の分まで。」
「何で、そんな、お別れみたいなことを━」
「車に轢かれたから、ね。ごめんね、早苗。でも、俺は、君の心の中にいるから。ずっと。支えてあげる。だからさ、笑って。早苗。俺は、早苗の笑っている顔が好きだな。」
健人君の脈が、弱く、、。
「嫌だ、イヤだ!健人君!」
「ごめんね、早苗。ありがとう。さよなら」
脈が、もう━━。
「━━━━!」
声にならない悲鳴。
「健人君!健人君!」
もう、ダメなんだ。帰って、来ないんだ。もう━━。私は、声を上げて泣いた。
何日か後━━。彼の、健人君の葬式が行われた。終わった後、健人君の言葉を思い出す。
うん。決めた。私、ちゃんと生きるよ。健人君の分まで。君が、助けてくれた、救ってくれた、命だから。どんなに辛くても、苦しくても、君は、そばにいるから。私はもう、大丈夫だ━━。
End
コメント
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なにこれ切なっ!