「 ん”〜……、ぁあ…何してたっけ、俺…」
少し開いた窓から真っ暗な部屋の中に光が差し込むと同時にちゅん、ちゅん、と鳥の鳴き声が微かに聴こえた。すぐに耳障りだと思ったけど、普段耳を塞いでるし、たまには良いのかもと寝ぼけた頭でそう解釈することにした。
と、そんなことを考えると同時に昨日のことを思い出していた。確か、久しぶりに高額の仕事があったような……それを確か、納品して、それで…
段々と思い出してきた。と共に自分の目的をも把握し。ズル、と自分より一回りでかいバッグの中に様々なモノをぶち込んだ。
「 はは、汚。 」
今日で使わなくなった部屋に向かって声を漏らす。自分よりでかいバッグを背負って少し肩を落とした。それにも直ぐに慣れ、キィと音を鳴らし。扉を開けて俺は外に出た。
ー この世界で、自分はいつか死ねるだろうか。 ー
〜 第1話 〜
《 初めて死ぬ音を聴いた日 》
「 ……眩しい。」
ボソッと呟いた。ガヤガヤとうるさい街で呟いても誰も何も気にしないのだ。周りには陽キャに、陽キャに、陽キャ……陽キャばっかし。陰キャには辛い場所だ。そう思いすぐさま薄暗いジメジメした路地に入った。
「 はふ……落ち着くな、 」
周りを見てすぐに呟いた。今日はやけに独り言が多いような気がする。まぁ、友達とか。いないし。仕方ないものなのかもしれない、でも思い出せば。1人だけ友達がいた。遠くから聞こえるこの声のように、。と考えていたら。遠くから声が聞こえていることに気づいた。
「 ……ぉぉぉおおい!!!佐藤ッ!! 」
危な!と思ったのもつかの間。ドスッ!と音がした。後ろに勢いよく倒れたようだ、怪我は無い。そうして飛びかかってきたやつを呆れた目で見て。こう言い放った、
「 いい加減。名前覚えろ…塩……。俺は砂糖。 」
さっき飛びかかってきたヤツの名前はお塩。( 偽名。 )性格がとにかく馬鹿で、阿呆で、明るくて。The陽キャ。な性格。
で、俺の名前がお砂糖、もちろん偽名。とにかく陰キャでなるべく目立ちたくないというのにひたっすら此奴が絡んできて毎日が明る過ぎて辛い。
「 お前こんな所で何してんの?! 」
「 死ぬ為の旅。しようと思ってんの、 」
「 ……お前何言ってん? 」
珍しく正論で返されてしまった気分になった。その通りなのだけれども、。この世界では、人が死なない、訳でも無いけど。歳をとるとぽっくりちゃんと逝く。がそれ以外では絶対に死なない。何故だかは分からない。だけど死なない。そこは確定、と言われている。それが気に入らなかった。だから俺は死ぬ為の旅をしようと数年前から決意していた、我ながら馬鹿だと思う。だけど。歳をとって、ただひたすら死ぬんだという恐怖に怯えたくなかったのも、理由の一つ。なのかも、しれない
「 お前なんなん?ついにパソコンに頭食われたんか? 」
「 ンな訳ねぇだろ。 」
結構真面目に言われて、馬鹿だなぁ、何も変わってねぇな。と少し笑いそうになってしまった。そういう思いを載せて、煙草を吸い始める。
「 ぇ”。じゃあ何なん?じゃあ、まじで死ぬ為の旅?とやらをするんか? 」
「 さっきからそう言ってるだろ。 」
はァ、と俯いて地面に向かって煙草の煙を吐き。焦る様子を見せるそいつに呆れながらもそう返事をする。そろそろ先に進みたいなとか考えていたから。後ろに倒れている状態からゆっくりと立ち上がる。
「 なァ、もう先。行っていい? 」
「 ち、ちょちょ!!ちょっと待ってや!!! 」
先に行きたくて言葉を放つと明らかに焦った声で返答されてしまった。珍しく焦り、ぐるぐるしているそいつを見て面白くなってしまった。
「 、す、ス○バ行こや!! 」
「 え?ぁ”っ!!おま!引っ張んな!! 」
いきなりグッと腕を引っ張られ走り出されてしまってこっちも慌てて走り出す。腕がちぎれそうなのと、ス○バって何?!という気持ちと走るのが疲れたという気持ちがこんがらがってきたような。
〜 数分後 〜
「 …お前マジで気ぃ変わらんのな。 」
「 今の俺に何言っても無駄なの分かっただろ。だから早く行かせろ。 」
この会話をもうあと何回するのかというくらいにした。行こうとすると腕を引っ張られて行けないようにするのはやめて欲しいから早く許可が欲しいのだ。
「 ゔ〜…仕方ねぇな…もう、こうするしか。 」
「 は?何言ってん……の、?…ぇ? 」
今、この瞬間。俺の知ってる彼奴のイメージがガシャァンッ!!という音を鳴らして壊れたような気がする。いつの間にかあいつは俺の胸辺りに銃を当て付けていて。カチャ、と引き金に指を添えているのだ。
「 、??あ、?ど、うなってんだよ…… 」
「 ……は…はは、wwお前らしくない。じゃん、それは、俺もかぁ……うはw 」
どういう事だ。これはもう、死……??いやいやいやそんなことは無い。はずだ、だってこの世界は寿命以外で死ぬ事は出来ないのだ。でも。これ俺もう…無理では、と脳内がぐるぐるぐちゃぐちゃと踏みつけられるようだった。俺は咄嗟にそいつから逃げようとして、体が動いていた。
なんだどういうことだ?俺の知ってるあいつは、馬鹿で、純粋で、ただひたすら陽キャで、裏表のない良い奴。のはずなのに、今のあいつは完全に俺を殺す気でかかっている。ダメだ死ぬ。確実に、
「 待って、 」
そう聞こえた。そう言ったのだろうけど。パシ、と手を取る音が聞こえた。手を取られていた。頭がぐるぐる回っている、どうすればいいか、何をしたら死なないか。そう考えていると咥えていた煙草はいつの間にか地面に落ちていて、ザァァァアと雨の音が聞こえた。
「 ……手、離せ。 」
「 、無理や。 」
分かっていたことだけど。死にたくない、死にたいけど。その狭間でずっと揺れ動いている。このままこいつに身を委ねれば死ねる。でもこんなにもあっさりと死にたくない。なんて、出過ぎた願いだろうか。
「 俺は、お前が初めての親友や。だから、まだ殺した無い…… 」
「 ぁ、?何……勝手に話を、」
嫌な予感がした。自分にふりかかる不幸とかと違って何か、全身が沼に沈んでいくような……。いきなりよく分からない話をし始めた親友に混乱して、。この状況も飲み込めなくて。そんな中で嫌な予感とか、確実に、的中するじゃ、ねぇか。なんて
「 ……っぁ、俺も死にたないけど。仕方ないねんな……、お前は、生きてくれや。そんで、死んでくれ…… 」
ドォン。
美しくて、残酷で、悲しい。そんな音が街中に鳴り響いた。俺の耳と目は確実に彼奴の死に際を捉えていた。耳に残る。目に残る。なんなんだ一体。サァァァア、と雨の音がした。街のザワザワ言っている音だって聞こえたというのに。何故お前はいつも通り大きな、耳障りな声で話しかけてこず、そこで赤い液体を流して寝ているのか。
その光景を見て、俺は。察したんだ。ちゃんと、
「 …っ、ははw……死ぬんじゃん、寿命以外でも……。 」
この時点で俺はもう壊れていたのかもしれない。今流しているのが、汗なのか雨なのかそれとも……
そうして俺は初めて
人が死ぬ音を聴いたんだ……。
〜 第1話 〜
《 始めて死ぬ音を聴いた日 》
ℯ𝓃𝒹
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