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蒼乃 月
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コメント
1件
あらら、これは体調悪い文也さんがかわいそうすぎますね…。宗一郎さんから風邪うつされたのに、仕事も気になって休めないの、めっちゃわかります。でも、そんな時にあの「声」の女性との出会い!「生まれる前からその声を探し求めてきた」っていう表現、心に響きました。瞳の描写もすごく丁寧で、キラキラしてる感じが目に浮かぶようです。ふらふらなのに恋が始まりそうな予感…次が気になります!
【メビウスビル1階スターバックスコーヒーカフェ】
。 .:・.。. .。.:・
ゴホッゴホッゴホッ「う~~~・・・」
メビウスフォールディングスの経営企画部長「松下文也24歳」は激しく襲ってくるこの咳を、なんとか静めようと冷たいカフェインを一気に喉に流し込んだ
文也はメビウスビルの一階にある、スターバックスコーヒーカフェの窓に隣接されているカウンターバーの右端に座り、窓の景色を眺めているように座り、自分のガタイの良い体をなるべく目立たないように縮めて、テーブルにノートパソコンを広げ、経営部の重役が作成する報告書の処理に追われていた
鼻が激しく詰まるし、喉の痛みは時間を追うごとに酷くなる、文也は降って湧いたようなこの災難を、自分の気持ちはとりあえず脇に置いて、極力客観的に見なおしてみた
昨日、宗一郎が文也の家に泊まって行った時、以外に寂しがり屋のアイツは終始ゴホゴホいっていた、正直文也は帰って欲しいと思っていたけれど、アイツが1年前におふくろさんを亡くしてからは、なぜか宗一郎に強くモノを言う事をためらわれた
そしてアイツは最近出来た婚約者と、その子供に風邪をうつしたくないと言っていた、その気遣いは文也にはどうやら向けられないらしい
宗一郎はメビウスホールディングスの最高財務部長だが、目下、妻になる人とその子供に夢中で、最近は実際的に職務の面ではまるで役に立たない、ハネムーンでしばらく留守になるのはむしろありがたいと、同じ部署の誰もが内心思っているはずだ
そして舞いあがっている氷の財務部長が、再び地上に降り立ってくれる日を、心待ちにしている。だがそんな友人を文也は責める気持ちには到底なれなかった
なぜなら、心から孤独だった宗一郎に、新しい家族が出来るのを祝福していたからだ、人一倍の寂しがり屋の宗一郎が、一人で家にいるのが嫌なものだから、昨日はゴホゴホ言いながらも文也の家で、深夜までマリオカートをしながらジンを3本開けていた
11時過ぎに竜馬がペットの散歩帰りにハナを連れてひょっこり現れて、一番年下の文也はなぜか三人分のラーメンを作らされた
子供の運動会じゃあるまいし、竜馬と宗一郎はマリカーでどちらかが勝ったとか負けたとかで、深夜まで言い争っていたため、文也はよく眠れなかった
文也が大学を卒業し、いとこの竜馬の会社に入社して数年、誰よりもこの二人の事は熟知している。そもそも日々に不満があるわけでもない、「いとこの竜ちゃん」が経営する西日本を代表する総合商社のメビウスホールディングスの経営企画部長という職務は、大いにやりがいがある
入社した時から、文也はこの仕事が好きだった、昇進には興味なかったが学生時代から大変な苦労をしてきた竜馬を支えて、やるべき仕事に誠心誠意取り組むことを繰り返していたら、いつの間にか入社3年目でここまでの役職になっていた
部署内の、各担当の全ての動きを把握し、会社全体が上手く回るように管理する役割は、自分の性格にはぴったり合っていた
竜馬と宗一郎に言わせれば、文也の仕事に対する集中力は一歩間違えば変人レベルだそうだ、大学を出てから仕事一本の文也はいまだに童貞だった、でもそんなことは全然かまわなかったし、恥ずかしいとも思っていない、自分に合った相手が出てきたら自然とそうなることだと思っていた
今はまだ自分に合った相手が現れていないだけだ・・・そんなロマンチストの文也の考えを竜馬と宗一郎はおこちゃまだとからかう
夕べはそんな二人をリビングに残して、文也はさっさとベッドに入った、しかしその頃にはすでに喉に嫌な不快感を感じていた一晩寝れば治るだろうと思っていたが、その考えは甘かった
グスッ・・・「宗一郎のやろう・・・絶対アイツだ!」
今日は有給を取ろうかと思ったが、それでも報告書が気になったので、オフィスに出勤すると、ゴホゴホ咳込む文也をみんなバイ菌扱いし、誰も近寄りもしなかった
髭も剃る気力も無く、頭もボサボサだ、誰一人病気の自分を気遣ってくれない、薄情なもんだ、なので気分を変えてここ1階のスターバックスに来て作業をしていた
しかし、ここへきてパソコンの画面の文字が二重にかすむ・・・文也は頭を起こしておくには重すぎるとばかりにテーブルに突っ伏した
―ダメだ・・・今日はやっぱり帰ろう―
。. .。.:・
「もういいですか?」
その時、誰かに文也の横から声をかけられた、文也はその女性の顔を見る前に声が良いと思った、なぜか彼女の声は背筋に震えが走るのを感じた
深く愛し合い・・・耳元で名前を囁いて欲しい・・・そんな声だ、文也の胸に不思議な感情がこみあげた
まるで生まれる前からその声を探し求めて来たかのようだ、パソコンの画面から顔を離し、キョロキョロと声の主を探した
「ねぇ・・・聞いてる?」
文也は左隣の席を見た、声の主は彼女だった、彼女は文也をじっと見つめていた、じーっと見つめていた・・・なんて美しい瞳なんだろうと考えることしか文也にはできなかった
大きな黒い瞳を覆いつくす様にまつ毛がびっしり生えている・・・そしてそのまつ毛は重力に逆らって全部上に向いている、そのせいで彼女の瞳により光が入りやすいのだろう、涙袋は可愛くぷっくりしてて・・・なんだか全体にキラキラしている
そして白目の部分はどこまでも澄んでいた