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このまま彼女と何時間でも見つめ合える気分だった、文也は彼女を見つめ続けた、そして気づいた、彼女は何かを待っている、そして・・・文也もそんな彼女をじっと見て待ち続けた・・・・何を待っているのだろうか?
「終わった?」
彼女の声に文也は我に返った、文也は目をしばたき、再び彼女のブラウンの深い眼差しに捕らえられた
「何の話?」
文也は妖精を見つけたらそうするであろう、優しく囁くように彼女に言った
「その・・・あなたが充電しているテーブルコンセント、私のテーブルのモノだと思うんだけど、終わったら私に充電させほしいってさっきから言ってるんだけど・・・」
「え?」
そう言われてよく見てみると、確かに自分のノートパソコンの充電器を、隣の彼女のテーブルのコンセントに刺していた
「あっ!ああっ!すいません!」
彼女の言う通りだった、文也はこのテーブルに着く時にコンセントがあるかどうかは確認しなかったが、ノートパソコンが思ったより充電出来ていなかったので、来た時には誰もいなかった隣のテーブルのコンセントをお構いなしに使っていたのだった
彼女が自分のスマホを見て文也に言った
「これから会議なんだけど、充電が10パーセントしかないの」
「ああっっ!すいません、ちょっと待ってね」
慌てて充電器のコードを片付けようとする、しかしパソコンの画面を見て文也はうなだれた
「僕の・・・ノートパソコンの充電は2%なんだ」
まったく充電されていないバッテリーが故障ぎみなのは、前から気づいていたが、取り換えるのがめんどくさかった、でもやっぱり充電を新しいものに変えておくべきだったと文也は反省した、今電源が落ちると、初期設定が上手く作動しないかもしれない、すると彼女がため息をついた
「どうやらあなたの方が危機感があるみたいね、充電したいからこの席を選んだのに、あなたのパソコンが10%になるまで待つわ」
「え?いいの?」
「その変わり充電できるまで、私のおしゃべりに付き合ってくれたらね、あなた世間話し好き?」
「得意だよ!!」
本当はそんなことなかったけど、文也はこの美人と世間話しが出来るチャンスは二度と来ないだろうと大きく頷いた
「僕は松下文也!!メビウスの経営企画部にいるんだ」
そう言って首から下げている社員証を彼女に見せた、今度は彼女が驚く番だった
「経営企画部長?まぁ!あなた、そんなお若いのにやり手なのね」
「そんなことないよ」
文也は彼女に褒められてデレついた、これもいとこの竜馬に助けられてここまでこれたおかげだ、竜馬は典型的なワンマン経営者だ、それ故に何だって自分の思い通りにする、だからこそここまでメビウスが総合商社として大きくなった半面、沢山の犠牲も払ってきた
なので必然的に自分の肩書きが経営企画部長となっているが、要はワンマンな竜馬の尻ぬぐい的な存在だ、そして文也はメビウスがスポンサーの社会人ラグビーチームのフルバックのポジションを守っている、なので平日は遅くまで仕事をし、週末はずっとラグビーづけなので、あまり女性と知り合いになれる機会がなかった
文也は竜馬に「お前は猪突猛進だ」とよく言われていた事を思い出した
―どうしよう・・・猛進する相手がみつかったかもしれない―
.:・.。. .。.:・
「私は森本藤子よ、21階に引っ越してきたばかりなの」
そう言って彼女は文也に名刺を渡した
「藤子と呼んで、そしてあなたとは初対面じゃないわ」
文也は眉を寄せた
「いや、お会いしたことがあれば、絶対覚えているはずなんだけど・・・」
こんな美人忘れるわけがない、文也が確信を持っていると、彼女が鈴を転がすようにコロコロ笑った
―うわっ・・・笑った声も可愛いぞ―
.:・.。. .。.:・
今の笑顔でノックアウトされそうだった、でもなんとかそうならずに済んだ
「最もあれは「お会いした」という訳ではないかもね、だって会議を立ち聞きしてあなたにいきなり怒鳴られて、私達、走って逃げたの」
文也は驚いてうめき声を飲み込んだ
「それじゃ、君は神崎広告代理店の?」
「今ではメビウス広告マーケティング部第一企画部室長よ」
渡された藤子の紫色の綺麗な名刺には、メビウス広告マーケティング部第一企画室長、セールスコピーライター、WEBディレクター、心理カウンセラー、整理整頓アドバイザーなどなど沢山の肩書が書かれていた
「全部本物よ、肩書きは仕事を貰う上で、あればあるほどいいの」
そういって彼女はウィンクした、こんな美人あそこにいたっけ?文也は驚いた、メビウスで文也が見慣れていた地味な商社の女性社員は、大概黒かグレーのスーツだ
こんな華やかで綺麗なピンクのブラウスを着こなす人がこの会社にいるなんて、薄いピンクのシフォンのブラウスに、クリーム色の膝までのタイトスカート、文也は芸能人を見ている気分だった
とても彼女は洗練されているし、それどころかこれまで出会った、どんな女性よりも女性らしかった、「ザ・女」って感じだ
これまた重力に逆らった大きな胸・・・大きなお尻・・・その割には細い腰・・・そして脚はふくらはぎの形が綺麗な曲線を描いて、足首は締まっていた
肌色の艶やかなストッキングに、白のハイヒールがなんともセクシーだ、文也は彼女を見つめずにはいられなかった・・・
竜馬が決めた会社の規則の地味目なオフィスファッションのこの会社で、こんな華やかな女性を見かけるのは奇跡としか言いようがない
文也には彼女が真冬に咲くバラのように映った
―ダメだ・・・どうやっても目が彼女を見てしまう―
.:・.。. .。.:・
「もう充電してもいいかしら?」
彼女が自分の細い手首に巻きつけている、これまた細いブレスレットのようなグッチの腕時計を見て、文也のパソコンのコードを抜いた
そして自分のうさぎの耳がついた充電器をソケットに差し込んだ、なんと爪もミルクティー色に艶々して綺麗だった、彼女のすべてに文也は衝撃をうけた
―素敵な女性だな・・・―
.:・.。. .。.:・
コメント
1件
このエピソード、すごく良かったです!コンセントの貸し借りから始まる出会いが、すごく自然でリアルだなって思いました。文也さんが藤子さんに見惚れてしまう気持ち、すごくわかります。華やかで綺麗なのに、気さくで話しやすい感じが伝わってきました。それに「初対面じゃない」っていう伏線が気になる…!次が楽しみです!