出発してから少し経った頃
どこに行こうかと言う話になり、私は最初にここへ来た時に見た
「色ん、な色、のお花…畑が、見たい!」
とシダレに話した。
するとシダレは「いいな!」と賛成しながらこんな質問をした。
「どっちの花畑にする?」
「どっち?」
「あ〜…サクラが最初居た場所から川を渡った所の花畑か、それともサクラ側にあった花畑か!」
「伝わったか?」
と手を繋いでいる反対の手で頭を搔く。
私もしっかり「伝わったよ」と首を縦に頷く。
すると安心した様にニカッと笑った。
正直どっちからでも良かったのだけれど、川を渡るならもっと近くで綺麗な川を見る事が出来る気がしたから
「川…の先…?のお花、畑が、いい」
と伝えるとシダレはコクリと強く頷き
「それじゃ行くぞ〜!」
と先程よりも早く歩いて向かって行った
少しつづ川の流れる音が聞こえてきた。
聞いているだけで涼しくなれる穏やかな水の音。
すると突然
「ストープッ!」
とシダレが大きな声を出すからビクッと体が大きく跳ね上がる。
すると
「あ、わりぃ。驚かせつもりは無かった…」
と少しだけ眉毛を八の字にしたから
「大丈夫…だよ…!」
と返事をした。
シダレは安心した様な笑顔になり、片手は繋いだまま私の前に立った。
「どうしたんだろう?」と思い首を傾げると
シダレは「いいか…」と真剣そうに聞いてきて思わず唾をのみゴクリ…と鳴らしてしまう
「今から通るあそこの川を見ちゃうとな…」
「魚になっちまうんだ!!」
とあからさまに嘘な事を、当時幼かった私は真剣に捉えてしまい
「魚に…なっちゃう、の!?」
と反応していた。
その反応を見て「来たっ!」とでも言いたげなでも真剣そうな表情で話を繋げていく。
「あぁ…そうなんだ…サクラも魚にはなりたくねぇだろ?」
「いや、だ…!」
「だろ?だから今からサクラは目をつぶれ!
俺が手を引っ張りながら案内してやるよ!」
「あれ…?それだと、シダレ、が、さ、魚にな、なら…ない…?」
と幼い私の純粋な疑問に少しだけ顔を歪ませたが「あ〜…えっと…」と考え「そうだ!」と思いついたのを勢い良く話す
「サクラみたいなお客さんだけ魚になっちまうんだ!!」
と苦しい言い訳に幼い私は
「おぉ…!」
となぜかすごく納得していた。
シダレは安心した様にため息を吐いていたけれど気を取り直したようにまっすぐ私を見て
「じゃあ、目をつぶって!川を渡るぞ!」