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「ひぃぃぃっ!」
暗闇の中、女の子の悲鳴が響いた。
よし、成功だ……たぶん。
俺は今日からお化け屋敷のバイト。
初日だし、タイミングもうまくつかめない。
何度かミスって先輩に注意されたけど、
今の悲鳴で少し自信がついた。
「じゃ、ラスト一組終わったら休憩ねー」
先輩の声を聞いて、俺は思った。
(あ、あと一組来るんだな)
薄暗い通路にしゃがみ込み、
息を潜めて待つ。
やがて、足音が近づいてきた。
……来た!
タイミングを見計らって、
「わっ!」と飛び出す。
「きゃぁぁぁっ!」
甲高い悲鳴。足音が遠ざかる。
――決まった!
満足した俺は、すぐに休憩室へ戻った。
そこには、先輩がいた。
「おー、○○くん。どこにいたの? もう出ていいよ。休憩おわりね!」
「え? 今、休憩“おわり”…?」
「さっきラスト一組終わったら休憩って言ってましたよね?」
「うん、言ったけど? ……キミ、序盤の方のオバケ役でしょ?」
「はい」
「序盤で脅かしても、まだお客さんは館の中だよ。
出口を出てからが“終わり”になるんだよ」
「あ、そうだったんですね! てっきり勘違いしてました!」
なるほど、と俺は相槌を打った。
先輩の言う「ラスト一組終わったら」とは、
屋敷全体を通して――
つまり、お客が出口を出たらという意味だったのか。
俺はてっきり、自分の持ち場が終わったら、という意味だと思っていた。
……でも、だとすると不自然だ。
本来、休憩中にお客が入ることなんて、ないはずだ。
じゃあ、俺が脅かした――
“あの足音”の人は、誰だったんだろう。
終わり