朝起きると坂川は欠伸をして起き上がって、用意された修道服を着ると、食堂に向かった。食堂では、シスター達が朝食の準備をしていた。
「おはよう御座います!」と、坂川が挨拶すると、 シスター達も「おはよう!」と返した。シスター達の手伝いをして朝食を済ませた。そして、修道院(避難所)を出て街の散策を始めた。最初は冒険者ギルドに行くことにした。
冒険者ギルドは、街の中央広場に面した場所に建っていた。中に入ると冒険者達が酒を飲んで騒いでいた。受付のカウンターに並んだ坂川は順番が来るまで待っていた。「次の方どうぞ!」と、受付嬢が言った。
坂川は前に進み出た。
「冒険者登録をしたいのですが?」
「はい、わかりました」と言って、受付嬢は手続きを始めた。書類に必要事項を記入して提出した。受付嬢は内容を確認すると、ギルドカードの発行手続きを行った。数分後には目新しいギルドカードが出来上がった。
「これがギルドカードです」と、受付嬢から手渡された。
坂川は礼を言って受け取ると、ポケットに仕舞った。次に坂川は中央広場にある大きな噴水の近くで朝市をやっている露店を見て回った。武器屋に行った時にはある剣にどうしても目が行ってしまい思わず手に取った。剣の刀身は綺麗な模様が彫られていた。鞘から抜いてみると刃の部分も綺麗で、切れ味も良さそうだった。見るからにとても良い品だと思った。
「この剣はいくらですか?」と、坂川は武器屋の店主に尋ねた。
「金貨5枚だよ!」と、店主は答えた。坂川は舌打ちをして剣を棚に戻した。
修道院からは生活必需品は支給されても、お金は支給されないのである。「どうされましたか?」と、武器屋の店主が尋ねた。
「この剣が欲しいのですが、お金を持ってなくて」と答えた。「ああ、そういうことかい…すまないねぇ、こっちも商売でやってるから…我慢してくれ。」と、武器屋の店主は言った。
坂川はオーバーに肩を落として凹んだ。そして「やっぱり……異世界でもお金がないと何もできないのか……」と呟いた。「わかりました。」と、坂川は俯きながら言った。「すまないねぇ、でも何か困ったことがあったら訪ねて来てくれよ!話を聞く分にはタダだからよぉ!」と、武器屋の店主は笑顔で言った。坂川は残念そうな顔をして店を出た。あとになって坂川は(お金を稼ぐ方法を見つけないとな……)と思った。坂川は、異世界で生活するためにお金を稼ぐ方法を考えた。(冒険者として魔物を倒したり、薬草や鉱石を採取して売ればいいか?)と、坂川は考えた。しかし、それは危険を伴う仕事であることがわかった。
「よしっ!決めた!」と、坂川は言った。(まずは冒険者ギルドで依頼を受けよう!)と思ったのである。そう思うと何故か急激に気分が高揚してスキップを取りながら修道院に戻った。
夕食を済ませて食堂でくつろいでいると坂川がシスターに声をかけた。「シスター、ちょっといいですか?」と、坂川が言うとシスターは笑顔で答えた。「はい!何でしょうか?」「実は冒険者ギルドに登録したんですけど……」と言った。シスターは「まぁ!凄いですね!」と、言った。さらに「冒険者として登録したのですか?それとも何か他の仕事を?」とシスターは尋ねた。坂川は「いえ、まだ登録したばかりで何も仕事はやってないんですけど…」と答えた。シスターは「そうですか…でも、冒険者として登録したなら魔物退治の依頼とか受けてみたらどうですか?」と、シスターは言った。坂川は「そのつもりなんですが装備に充てるお金がなくて困ってるんですよ。どうにかなりませんかね?」と答えた。シスターは「それは難しいですねえ。」と、言った。「そうですよねぇ…」と坂川は肩を落とした。さらにシスターは続けて「それでしたら、修道院の畑仕事を手伝ってくれませんか?人手不足なので……」と、言った。それを聞いた坂川は思わず天にも昇るような気持ちでガッツポーズを取り、飛び跳ねた。この修道院では公共事業のような事を修道院自ら行っているらしい。坂川は喜びを体現したまま「はい!喜んでやらせてもらいます!」と答えたのだった。
翌日から坂川は修道院の手伝いを始めた。朝起きると朝食を済ませて修道服に着替えると、修道院の畑へと向かった。まず手始めに鍬を使って土を耕した。その後、雑草を抜いていく。そして種を蒔いた。それから水やりをする。最後に収穫した野菜を修道院に運んだ。坂川は、この仕事をするうちに体力がついてきたような気がした。坂川はフゥっと深く息を吐いて気合いを入れると作業に取りかかった。やがて時は過ぎ、「ふぅ……疲れたなぁ……」と、坂川は思った。「お疲れ様です!お昼の時間でーす!」と、シスターが労いの言葉をかけた。
その後、昼食を摂ってから午後の作業に取りかかった。今度は開墾作業だ。鎌を使って雑草を刈り取り、一箇所に集めることの繰り返しだ。坂川は黙々と作業をした。その後は夕食までずっと働いていた。坂川は修道院に戻ると夕食を済ませて自室に戻った。直後、ベッドに倒れ込むと深い眠りについた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!