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??「………あの………大丈夫……です…?」
長い沈黙に耐えかねたのか、彼女が翡翠の瞳を少しだけ見上げて、心配そうに聞いてきた。
少し困ったような、それでいてひたすら純粋な視線が、俺の胸に突き刺さる。
(やばい、可愛すぎて息が止まる……!)
三十路の理性が一瞬で消し飛んだ。
俺は今、漆黒のマントを羽織った、世界を滅ぼす最強の魔王。
そんな男が、路地裏の入り口で、小柄な妖精の少女を前に完全に挙動不審になっている。
何とかして「大丈夫だ」と言いたいのに、喉が完全にロックされて声が出ない。
(落ち着け俺! 前世の営業スマイルを思い出せ! いや、魔王の顔で笑ったら脅迫になるか!?)
脳内が大パニックのサラリーマンオタク。
しかし、見た目は威圧感MAXの冷酷な魔王アズリス。
俺の無言のプレッシャーのせいで、彼女をさらに怯えさせてしまっているかもしれない。
何とかして、この最悪の第一印象を取り返さなくてはならなかった。
俺の無言の威圧感のせいで、彼女は小さく肩を震わせ、翡翠の瞳を泳がせてオロオロとし始めてしまった。
淡水色の4枚の羽が、不安を表すように細かくパタパタと揺れている。
(しまっていこう、元サラリーマンの俺! 顧客(一目惚れ相手)を不安にさせてどうする!)
俺は胃に穴が空きそうだった前世のプレゼン直前を思い出し、喉のロックを力技でこじ開けた。
魔王の重低音ボイスが、威圧感にならないよう細心の注意を払いながら、なんとか言葉を絞り出す。
「……あ、いや。すまない。怪我は、なかっただろうか」
奇跡的に、ちゃんとした大人の敬語が出た。
黒いフードの奥で、俺はこれ以上ないほど必死に、穏やかな笑みを浮かべようと試みていた。
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