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数分後。
「なるほどね、OK。大体覚えたよ」
全員の自己紹介を聞き風夜は頷いた。
「一発で覚えたんですか?」
ブラックが問う。風夜はコクンと頷いて一人一人指しながら全員の名前をサラサラと言って見せた。
「おお……✨」
銀さんが目をキラキラさせていた。
「記憶は消えたけど覚えるのは得意なんだよ」
「まあ……それはそれでありがたいですが……やっぱり貴方ただの人間ですか???」
「やだなぁブラック。いつまで疑うんだい?僕は人間だよ。こんなに人間らしいのにまだ疑うのかい?まぁ記憶喪失だけどボソッ」
風夜は頑として人間である事を主張し続けるらしい。先程は『何者かは分からない』と言っていたがやはり人間であると思っているらしい。どう考えてもおかしいが。
「あれだけのダメージ受けておきながらピンピンしておいてよく言いますね」
ブラックが嫌味たっぷりにそう言うも
「すまない先生だって不老不死で、ミュータントゾンビに潰されてもピンピンしてるじゃないか」
とあっさり返す。
「でも服までは即座に回復しないんですよ」
ブラックは負けじと反論するが
「それは僕自身じゃなくて服の方じゃないか」
とあっさり論破された。ずっと論理が堂々巡りしている。
「二人とも」
すまない先生が割り込んだ。
「その論争は後ででも出来るでしょ?この洞窟はミュータントモンスターが湧いて危険だからまずはスクールに帰ろう?」
二人は渋々頷いてすまないスクールへの帰路についた。
「すまない先生……」
「ん?」
夜の学校。教室に残ったブラックがすまない先生に話し掛けた。
「風夜の件……どう思います?」
「……僕もね、まだ確証が得られないんだ……」
すまない先生は遠い目をする。
「あれは……風夜くんは僕が『地下−64層』で出会った【世界の過去を写す魔導書】と姿は全く同じだ。黄緑色の髪も、光加減で赤にも紫にも見える目も全てね……」
ならもう風夜で良いのではないかと思ったがすまない先生は続けた。
「でもあの場所は薄暗かった……だから姿が微妙に違ったのかもしれない。その疑念が残るから僕は強く言い切れないんだ」
すまない先生はそう言って目を伏せる。しかしあそこまで人間離れした回復力と姿が酷似している事を総合すれば、もう確信しても良いのではないだろうか。更に本人には記憶が無くただ自称しているだけなのだから。
「そうだね……僕も風夜くんが魔導書なんじゃないかっていう思いの方が強い事は否めないんだ……」
ブラック達は【世界の過去を写す魔導書】に会った事は無いため、それに対しては何とも言えない。しかし人間では無いという考えには大いに賛同できる。
「風夜の記憶が戻れば一番手っ取り早いのですが……」
「しばらくは様子見かもね」
そう言い、その日はそのまま別れた。