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時空魔道士ウルティモの協力が得られたルティとフィーサ、竜人アヴィオルの三人は、イデアベルクを出発することが出来た。アックたちに合流するには、先回りをしなければ難しい――そんなことを聞かされたからである。
「え、ここは? ど、どこのお城ですか!?」
「小娘は目まで悪いなの? 城じゃなくて廃城なの」
「ふ~ん? ここからなんだ~?」
ウルティモの移動魔法により着いた先は見知らぬ地。アヴィオルをのぞき、ルティとフィーサは知らない光景に一気に不安になった。
「うむ。精霊竜の言葉を頼り、われがたどったこの地に来たのだが……ルティシアさんならば問題無く進めるだろう。われは戻り、再びイデアベルクを守ることに努めよう!」
ルティたちを送るだけで、ウルティモはあっさりと帰ってしまう。ルティはさらに不安になり、今にも泣き出しそうになっている。
「えぇぇ、ウルティモさんがあぁぁ。もう行っちゃった~……」
「あの男はマスターと違うなの。マスターはルティに構い過ぎていただけなの! 比べたら駄目駄目なの!!」
「はうぅぅ……」
「あんな男に優しさを求めたって無駄だよ! 優しかったらこんな所に連れて来ないし……」
精霊竜アヴィオルだけはここを知っているらしく、呆れた顔をみせた。
「竜人娘は知っているなの? ここがどういう場所なのか、はっきり言って欲しいなの!」
「ここには空を飛べる竜か、魔法で飛べる者じゃないと来られないバラルディア王国……だった場所」
「お、王国!? えぇ、こんな岩山しかそびえていない島にですか!?」
「だからぁ、今は無いって言ったでしょ! ちゃんと話を聞いてよー!!」
アックたちに先回りするということで連れて来られた場所は、かつて王国があった所だった。
巨大な岩山をくり貫いて築かれた城をそびえさせ、周辺は全て海に囲まれている。空からでなければ王国の全景を確かめることが不可能とされて来た所のようだ。
「――じゃ、じゃあ、ここは地図から消えている場所?」
「そんなの当たり前の話なの。小娘はもう少し理解を深めて欲しいなの……」
「だってだって! すごい国だったところなのに~!!」
ルティだけが興奮状態でフィーサは至って冷静に目の前の光景を眺めている。
「古代に存在した王国……って言えば分かってくれる?」
「古代……えーと、とっても古い」
「小娘には説明をしないと無駄無駄なの!」
かつてこの王国には、精霊、魔法、魔術、幻獣……そして、妖精や獣人といった種族に関係無く、生きるもの全てが豊かに暮らしていた場所だった。
しかし自然災害に加え、外界の魔導士に見つけられたことによって豊かだった均衡が崩れた。それにより人間が増え、他種族は外界に出て行くしかなかった。
少数の人間が再建を目指していたが、残っていた種族とともに全て絶えたとされた場所である。
「――というわけ。理解出来た?」
「ここって、えーと……フィーサの故郷みたいな場所だったりするの?」
「ヘリアディオスとはちょっと違うなの。あそこは偏屈な神しかいないなの。でもでも、ここは全ての種族が仲良く暮らしていた王国だったなの」
「――あ! じゃあ、アック様のイデアベルクみたいな国!」
ルティの言葉に、フィーサ、アヴィオルは顔を見合わせた。あながち間違いでも無い答えに、複雑な表情を浮かべるしかなかったからだ。
「そ、それで、あの魔導士がここに連れて来たのはどうしてなの?」
「アック様がここに来るってことなんですよ、きっと! そうですよね、アヴィ?」
「ううーん……ここは確かに古代だけど、でも~……ここはもう何も見つからないはずだし~」
「ふぅん? 精霊竜には気配を感じられないなの? あの魔導士が胡散臭いのは知っていたなの。だからここに連れて来たはずなの!」
時空魔道士ウルティモによって、彼女たちはとある孤島に連れて来られた。そこには廃城がそびえており、滅びたバラルディア王国には生き残りはいないとされていたが――。