テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
チトセ_kt国
119
#二次創作
よんがつ
126
#夢小説
しらすのお部屋
567
――病院外。
吹き飛ばされたままの飛彩、大我、貴利矢。
三人は、荒い呼吸のまま動けずにいた。
静寂。
風の音だけが、わずかに響く。
その時――
「――ああああああああっ!!」
病院の奥から、叫び声が響いた。
「……!?」
飛彩が顔を上げる。
「あれは……!」
貴利矢の表情が強張る。
「エム……!?」
だが――
それきり、何も起きない。
静寂が戻る。
「……おい」
大我が低く呟く。
「今の……」
空気が、張り付くように重い。
――ミシッ……
病院の外壁に、亀裂が走る。
「……っ!?」
視線が集中する。
ヒビが、ゆっくりと広がる。
まるで――内側から押されるように。
そして。
バキィィッ!!
爆音と共に、壁が内側から吹き飛んだ。
コンクリート片が空中に散る。
白い煙が、外へ溢れ出す。
その奥から――
赤い光が、滲む。
「くっくっく……」
低い笑い声。
ワンテンポ遅れて、姿を現す。
レウコイド。
「いい声だ……」
煙の中、ゆらりと浮かび上がる。
「絶望の声というのは――」
一拍。
「実に甘美だな」
赤い光が脈打つ。
そのまま、ゆっくりと下降する。
焦らすように。
見せつけるように。
やがて、地面へ降り立つ。
コツン。
軽い音。
だがその瞬間、空気が沈む。
「さて――」
レウコイドの目が、三人を見下ろす。
「次は、お前たちだ」
赤い力が膨れ上がる。
「息の根を止めてやろう」
「……っ!」
飛彩が歯を食いしばる。
だが、体は動かない。
大我も拳を握るが、立ち上がれない。
貴利矢も、必死に体を起こそうとする。
しかし、身体が言うことをきかない。
じわじわと光が収束していく。
その時だった。
――コツ。
小さな足音。
レウコイドの背中側。
ゆっくりと近づいてくる。
コツ……
コツ……
全員の視線が、一斉にそちらへ向いた。
そして――
そこに、立っていた。
「……小児科医……?」
飛彩の声が、かすれる。
そう。
そこに居たのは。
永夢だった。
だが。
その姿は、あまりにも異様だった。
顔色は真っ青。
呼吸は浅く、肩がわずかに揺れている。
それなのに――
その目だけが、静かに光っていた。
まっすぐ。
迷いなく。
レウコイドを見据えている。
大我の表情が固まる。
「……おい……」
貴利矢も、言葉を失う。
「エム……?」
弱っているはずの体。
今にも倒れそうなはずの状態。
それなのに。
その場に立っているだけで、空気が変わる。
ぞくり、と背筋が冷えるような感覚。
飛彩の目が細くなる。
「……お前」
低く呟く。
「嘘だろ、その身体で……?」
永夢は、何も答えない。
ただ一歩、前へ出る。
その瞬間。
レウコイドが笑った。
「ほう……」
赤い目が細くなる。
「まだ動けたか、宝生永夢」
永夢は静かに口を開いた。
「……ああ」
その声は――
どこか、低く。
冷たい。
そして。
ほんの少し、楽しんでいるような響き。
「勘違いするなよ」
永夢の口元が、わずかに歪む。
「俺は――」
次の瞬間。
その目が、赤く光った。
「パラドだ」
レウコイドは、ゆっくりと永夢を見据えた。
赤い瞳が細くなる。
「そうか……」
低く、納得したように呟く。
「お前が、共生していたバグスターだったか」
その言葉に、永夢――いや、パラドの口元がわずかに歪む。
だが、何も答えない。
その視線の奥で――
一つの記憶がよみがえる。
ーー少し前。病室。
レウコイドの姿が消えた後。
砕けた壁の向こうから、外気が流れ込む。
白いモヤだけが、ゆっくりと残っていた。
その中で。
永夢の呼吸だけが、かすかに響く。
呼吸は浅く、速かった。
胸が大きく上下する。
体は小刻みに震え、指先は力が入らない。
「……パラ……ド……」
声はかすれて、ほとんど息のようだった。
パラドが顔を近づける。
「なんだ」
永夢は何か言おうとするが、言葉が出ない。
「……っ……」
喉が詰まる。
呼吸が乱れる。
それでも――
必死に、声を絞り出す。
「……このまま……じゃ……」
言葉の途中で息が途切れる。
「……みんな……が……」
胸が苦しい。
呼吸が追いつかない。
「……ぼく……は……いい……」
パラドの眉が深く寄る。
「……何言ってる」
永夢は小さく首を振った。
その動きさえ、辛そうだった。
「……だ、から……」
息を吸う。
うまく吸えない。
「……パラ……ド……」
視界が揺れる。
それでも、必死に言う。
「……ぼく……を……」
喉が震える。
「……のっと……って……」
その言葉に、パラドの目が見開かれる。
「……!」
永夢の体が、びくりと震える。
「……ムテキ……で……」
永夢は震える手を、ゆっくりと胸元へ動かした。
指先がうまく動かない。
何度も空を掴みそうになりながら――
ようやく、ポケットの中のガシャットを掴む。
金色のそれが、かすかに光る。
だが、手は激しく震えていた。
「……あい……つ……」
永夢は、必死に腕を伸ばす。
ガシャットを――
パラドの方へ差し出す。
「……とめ……て……」
声は、ほとんど息だった。
震える手から、今にも落ちそうになるガシャット。
パラドは黙ってそれを見つめる。
そして――
そっと、永夢の手から受け取った。
永夢の指先は、力が抜けるようにシーツへ落ちた。
それでも。
永夢の目は、必死にパラドを見ていた。
その覚悟は、痛いほど伝わる。
パラドはしばらく黙ったまま、永夢を見つめる。
この体の状態で戦えば――
どうなるかは、分かっている。
それは、ほとんど死に向かうような選択だ。
だが。
永夢の意思は、揺らがない。
それは、パラドにもはっきりと感じ取れた。
「……分かった」
小さく、呟く。
そして、ふっと息を吐いた。
「ほんと、お人好しだよな……お前は」
永夢の肩に手を置きながら、苦笑する。
「……永夢」
その目は、どこか優しかった。
現在。
レウコイドの前に立つ永夢。
だが――
その目の奥に宿る光は。
宝生永夢のものではない。
パラドは小さく笑った。
「……まったく」
肩を軽く回しながら、呟く。
「お前は本当に無茶ばかりだな、永夢」
飛彩、大我、貴利矢は言葉を失っていた。
永夢の体。
だが、そこにいる存在は違う。
パラドはレウコイドを見据える。
その瞳に、鋭い光が宿る。
「だが――」
ゆっくりと一歩、前へ出た。
「約束だからな」
静かな声。
しかし、その場の空気が変わる。
戦場の空気が、張り詰める。
「お前は――」
パラドは、笑った。
「ここで俺が止める」
その瞬間。
パラドの手が、ゆっくりと上がる。
握られているのは――
金色のガシャット。
ムテキガシャット。
飛彩の目が見開かれる。
「……それは……!」
大我が低く呟く。
「おい……待て……」
貴利矢も息を呑む。
「……まさか、おまえ……」
パラドは、ガシャットを見つめた。
ほんの一瞬。
頭の奥に、声が響く。
――パラド……
かすかな声。
弱く、揺れる声。
「……永夢?」
ほんの一瞬だけ、パラドの目が細くなる。
――お願い……
――みんなを……
声は途切れそうだった。
それでも確かに、そこにある。
パラドは小さく息を吐いた。
「……分かってる」
その言葉に、飛彩の表情が強張る。
「待て、パラド!」
一歩、踏み出す。
「その状態で変身すれば――」
大我も低く言い放つ。
「確実に体がもたねぇ」
貴利矢が続ける。
「エムは今、戦える状態じゃない!」
一瞬の静寂。
パラドは、ゆっくりと三人を見た。
そして――
「……分かってる……!」
低く、はっきりと言い切る。
その目は、揺るがない。
「でも――」
ガシャットを強く握る。
「これは、永夢の意思だ」
一歩、踏み出す。
「俺は、それに応える」
その言葉に。
三人は、何も言えなくなる。
ベッドから起き上がることすら危うかった体。
戦える状態ではない。
それは、ここにいる全員が分かっている。
それでも。
飛彩が低く言った。
「……どこまで無茶をすれば気が済む」
大我が肩をすくめる。
「ほんと、救えねぇ患者だな……あいつは」
貴利矢は小さく笑った。
「……ったく。」
そして三人とも、前を向く。
止めない。
止められない。
それが、宝生永夢だからだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!