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#怪異
イキリ火の玉
946
「おいおい梶よー、どうなってんだ?」
ミニバンの横で親分が不機嫌そうにタバコを咥えていた。その隣には愛人のミサも細いタバコを吸っている。他の仲間とちぃこも全員が車の外に出ていた。
「オヤジさん、どうも袋小路に入ったみたいで朝にならないと状況がわかりません」
「はぁ? なーにやってんだよっ!」
「すみません」
「チッ、だから俺は来たくなかったんだよ」
「チャーさん、そんなに怒らないでよぉ」
ミサが甘えた声で親分にもたれかかると幾分怒りが収まったようだ。
「ねぇ、朝まで時間があるのならどっちかイジメなぁい?」
ミサが怪しく微笑むと空気が凍った。そう感じたのは努だけかもしれないが。
「殺さない程度でしたら、どちらでもどうぞ」
努は泣きそうな顔で梶を見たが梶は気にした様子もなくメガネをいじっていた。少しは仲良くなれたと思っていたけど相手が非情なヤクザだということを思い出していた。
「アタシ、爪の間に刺すやつ、あれ見てみたぁい」
ミサはまるで少女のように瞳を輝かせている。そして、その瞳は努に向けられていた。
「え? イヤ、イヤだ!」
慌てて逃げだそうとした努は巨体の安田に捕まり地面に押さえつけられた。
「やめろおっ! やめてえっ!」
努がいくら暴れても万力に挟まれたように動けない。パンチ頭の沢村がやってきて左手首を掴んで伸ばした。努に出来る抵抗は拳をギュッと握ることだけだ。
「針がないのでコレを使いましょう」
梶は名刺のような紙製のどこかの会員カードを差し出した。
「こんなので?」
「姉さん、どうぞ」
「アタシがやっていいの?」
不満そうだったミサの顔が一気に爛々と輝く。梶がうなずくとカードを受け取った。
拳を握って抵抗している努はいよいよ顔が青ざめてさらに拳を強く握る。だが抵抗虚しく沢村に手首を曲げられ痛みで力が抜けた瞬間、人差し指を掴まれ一本伸ばされた。
「イヤイヤ、ヤメテッ」
努が嫌がれば嫌がるほどミサは楽しそうな顔になる。
「いっちゃうわよぉ」
カードの角を爪の間にゆっくりと差し込む。
「イダアアアアアアッ!」
静まりかえった世界に努の悲鳴が響く。ジンジンとした鈍い痛みが指先から伝わる。その痛みは引くことなくカードを抜き取られたあとも続いた。
そしてその拷問は左手の指五本全部でおこなわれた。
「はぁ、ちょっと濡れちゃってるわぁ」
ミサは恍惚とした表情でつぶやく。
「うぅ……ウッ……ウッ……」
努は泣いてミサを見上げた。その哀れな顔にますますミサは興奮した。
「いいわぁ……ねぇ、チャーちゃん」
ミサは親分に流し目を送る。努をいたぶるよりこの興奮を発散させたくなったのだ。
「おい、梶」
親分はやらしい顔を隠そうともせずに顎をしゃくった。
「はい。おい、ミニバンの椅子を倒してこい」
梶の命令でパンチの沢村と金髪リーゼントの島がミニバンに向かった。ちぃこは長髪の木村に連れられて外車の後部座席に乗せられた。
木村は戻ってくるとミニバンの側に立ってタバコを吸い始める。どうやら親分たちの世話係のようだ。
「長岡、お前も外車のほうに行け。お前らは交代で見張りをしろ」
梶はテキパキと指示を与えると今度は一人で車を離れていった。
外車には後部座席に努とちぃこ。運転席に巨漢の安田、助手席には島が乗り込んだ。沢村は外車のすぐ側でタバコを吸っている。
「イタイのイタイの飛んでけー」
こんな目に合った原因のちぃこだが今は怒る気力もなかった。
「かわいそう、かわいそう」
そう言ってちぃこは血の滲む努の指をパクリとくわえ込んだ。
「あ……」
咥えたままペロペロと指先を舐めるちぃこに痛みを忘れて思わず股間が硬くなる。
「ンッ……」
それに気づいたのか、ちぃこは右手をそっと努の股間にあてがった。その手の動きはズボンの上からでも刺激が強くて努は思わず腰を引いた。
「どうしたの?」
不思議そうに首をかしげるちぃこ。
「も、もういいです。大丈夫だから」
「そっかぁ」
ちぃこはニコッと笑った。その笑顔はとても愛らしくて思わず原因となったことを忘れてしまうくらいだった。
緊張で疲れ果てていた努がまどろんだり起きたりしているうちに空が白み始めた。努がようやく深い眠りに落ちそうになったときにドアが乱暴に開けられた。
「長岡、出てこい」
梶だ。嫌だと叫びたかったけど指の痛みが言葉を飲み込ませた。相手はヤクザ。怒らせていいことなんてなにもなかった。
コメント
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第6話、読み終えたよ……。いやあ、冒頭のカードの拷問シーンは想像しただけで痛くてぞわぞわしたわ。ミサの狂気じみた楽しみ方もヤバいし、努が非情なヤクザの世界に飲み込まれていく緊張感がすごかった。 そんな地獄みたいな状況の中で、ちぃこが努の指を舐めてあげるシーンはギャップがエグかった。責めてる本人なのに妙な優しさがあって、人間の二面性みたいなものが感じられた。そして梶の冷徹な采配とか、組の上下関係がヒシヒシ伝わってくる。この先どうなるのかマジで気になる。続き楽しみにしてる🔥