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「ひどいっス……」
車を離れてすぐに努は小さな声で文句を言った。
「そんなもんですんで良かったと思えよ」
「そんなもんって滅茶苦茶痛かったんですよ?」
「別に木の枝でやってもよかったんだぞ?」
「それは……」
確かに紙の角だから少し血が滲む程度で済んだが、これが木の枝などでやられていたらもっと酷い事になっていただろう。梶なりに配慮をしていてくれたのはわかる。
「でも結局最後は殺すんでしょ?」
梶は答えずに細いメガネの奥で睨むだけ。努は目を反らしてうつむいた。
トンネルの出口に止めてある車から村に入る一本道を歩いて行くと、まもなく夜の月明かりでは見渡せなかった村が見えてきた。
一本道は車一台が何とか通れるほどの幅で昨夜車と徒歩で歩いた道だ。
歩いている土の道のすぐ横は雑草に覆われていたが村に近づくと田畑が増えてきた。畑のほうがなにか野菜が育てられていたが、田んぼのほうはまだ春前だからか土が剥き出しになっていた。
村は道を挟んで左側、太陽の位置から考えると南に山があり、そこから北に向かってなだらかな下り斜面になっていてその先には大きな川があるようだった。
「あれ、なんの看板でしょう?」
努は村の入り口にあった柱を指さした。そこにはまな板ほどの大きさの板が吊されており横二本線にバッテンを合わせた記号が描かれていた。
梶はチラリと見ただけで足を進める。努は慌ててその後に続いた。
村には家が道ばたや田んぼの奥にポツリポツリと建っている。どれも木とかやぶき屋根で出来た古民家だ。
ほとんどの家からは屋根から白い煙が出ている。囲炉裏に火が入っているのだろう。
しばらくの間その違和感に気づかなかった。昨夜、家に人の姿はなかったけど人の気配があった。でも。
「人が……いるみたいですね」
昨夜と同じく村に入って一番近くの家に行った。梶は扉を叩かずにいきなり開けた。
努が恐る恐る中を覗くとそこにはわずかばかりの白髪を残した70歳くらいの老人が囲炉裏の前に座っていた。
まだ早朝は冬と変わらないこの時期だからか老人は半纏を着こんで下はねずみ色の作業着のズボンという格好をしていた。
上着がいかにも江戸時代の農民という服装に対して、ファスナーのついたズボンはやけに近代的に見えた。
「……迷い人か」
老人は驚いた様子もなく梶と努を交互に見てつぶやく。
「じゃまするぞ」
梶は靴を脱いで上がった。
「ここはなんという村だ?」
「まあ待て……わからないことが多いじゃろ? 説明は長くなる。そこに座りなさい」
老人は囲炉裏の横を指さした。
「お、お邪魔します」
努も靴を脱いで上がり梶の隣に座った。
「お茶でもどうかな?」
老人は棚から湯飲みを二つ持ってくると囲炉裏にかけていた鉄製のヤカンをとって急須にお湯を注いだ。
「お茶は遠慮するが話は聞きたい」
「まあ遠慮はしなさんな」
老人は湯飲みと自分の使っていた茶碗にお茶を入れると湯飲みを二人に渡した。
「村から出られんのじゃろ? ここはそういう村じゃ」
お茶を一口飲んだあと、老人はゆっくりと話し始めた。
#怪異
イキリ火の玉
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コメント
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第7話、読んだよ! 村の様子が具体的で、囲炉裏の煙とか古民家の佇まいとか、映像が浮かぶ感じ。そして何より「迷い人か」「村から出られんのじゃろ?」っていう老人のセリフ、めっちゃ気になる展開すぎる……! この村、ただの田舎じゃなさそうで、続きが待ち遠しい🔥