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#らっだぁ運営
あーちゃん
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みみ/不定期
10
いつの間にか、雨は止んでいた。
静かな城の中に、雨粒が屋根から落ちる音だけが残っている。
ぽたり。
ぽたり。
レウは廊下を歩いていた。
眠れなかった。
理由は特にない。
ただ、目が冴えていた。
城の中はいつも暗い。
だから、時間なんて分からない。
眠くなったら寝る。
起きたら起きる。
最近は、それにも少し慣れてきていた。
角を曲がる。
階段を下りる。
その先に、見慣れた背中があった。
「らっだぁ?」
「ん」
壁際に座っていた。
珍しい。
いつもなら本を読んでいるか、どこかへ消えているのに。
「何してるの」
「休んでる」
「それは見れば分かるけど」
「じゃあ聞かなくていいじゃん」
「そういう問題じゃない」
らっだぁが少し笑った。
レウも隣へ座る。
窓の外は見えない。
けれど、雨上がりの匂いがどこからか入り込んでいた。
「雨、止んだね」
「うん」
「また降るかな」
「たぶん」
「分かるの?」
「匂い」
「……ヴァンパイアってすごいな」
「そう?」
「俺なんか雨が降ってても気付かないことある」
「それは鈍いだけじゃない?」
「ひどい」
笑う。
少しだけ。
それから沈黙。
最近、この沈黙にも慣れた。
前は気まずかった。
今は違う。
何も話さなくても、隣にいる。
それだけでいい。
「ねえ」
「何」
「らっだぁって、何歳?」
突然聞いてみた。
らっだぁは少し考える。
「忘れた」
「え」
「数えるの面倒だから」
「何百歳とか?」
「たぶん」
「たぶんって」
「それくらいは長く生きてるよ」
「ずっと前から?」
「うん」
レウは少しだけ黙った。
「……すごいね」
「何が?」
「ずっと生きてること」
らっだぁは少し首を傾げる。
「そうでもないよ」
「そう?」
「生きてるだけだから」
その言葉に、レウは何も返せなかった。
生きているだけ。
それが簡単なことなのか。
難しいことなのか。
レウには分からない。
ただ。
自分は、生きることを諦めていた。
あの集落で。
鎖に繋がれて。
誰にも必要とされないまま。
炎の中で。
死ぬのだと思っていた。
「俺も」
気付けば口にしていた。
「昔、生きてるだけだった」
らっだぁがこちらを見る。
何も言わない。
レウもそれを分かって、言葉を続けた。
「朝になったら起きて、」
「ご飯を食べて、」
「言われたことやって、」
「怒られたら謝って、」
「また鎖に繋がれて」
淡々と。
まるで他人の話みたいに。
「それだけ」
らっだぁは黙って聞いている。
「だから」
レウは少しだけ笑う。
「ここに来てから、変なんだよね」
「何が?」
「毎日、何かあるから」
「例えば?」
「昨日は地下で迷子になった」
「それは俺のせいじゃないよ」
「探し物忘れてたのはらっだぁでしょ」
「そうだった」
少し笑う。
「それから」
レウは指を折る。
「森に行った」
「うん」
「花冠作った」
「うん」
「本を頭に乗せられた」
「楽しかったね」
「俺は全然楽しくなかった」
「俺は楽しかった」
「知ってる」
また笑う。
それから。
レウは少しだけ目を伏せた。
「……だから、怖いんだと思う」
らっだぁが黙る。
「何が?」
「なくなること」
静かな声だった。
雨上がりの匂いがする。
「ここに来るまで、何も持ってなかった」
「だから、なくなるものもなかった」
レウは手を握る。
「でも今は違う」
らっだぁを見る。
青い瞳。
暗闇の中でも、よく分かる。
「俺には、ここがある」
らっだぁは何も言わない。
「だから」
少しだけ笑う。
「なくなったら嫌だなって思う」
らっだぁの表情が、ほんの少し変わった。
けれど何も言わない。
レウも、それ以上は言わなかった。
ただ隣に座る。
しばらくして。
「命令」
らっだぁが言った。
「なに?」
「忘れないで」
「何を?」
「今日のこと」
レウは少し驚いた。
それから笑う。
「それが、命令?」
「そう」
「分かった」
レウは頷く。
「忘れない」
らっだぁは目を細める。
「約束?」
「約束」
静かな城。
雨上がりの頃。
二人は並んで座っていた。
外の世界を知らない二人。
朝を知らない二人。
けれど。
少なくとも今は。
同じ時を生きている。
それだけで十分だった。
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コメント
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コメント失礼します(* .ˬ.) どの作品もとても大好きで楽しみに見てます 体調に気をつけて頑張ってください 応援してます 続きを楽しみに待っています