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ポテサラ
2,468
#実況者イラスト
アル🧩👾
11
城に住み始めてから、少し経った。
正確な日数は分からない。
時計がないからだ。
けれど。
レウには、なんとなく分かるようになってきた。
眠くなったら寝る。
腹が減ったら食べる。
起きたららっだぁを探す。
そして。
暇になったら城を歩く。
そんな毎日だった。
「……暇」
廊下の真ん中で呟く。
返事はない。
らっだぁはどこかにいる。
たぶん。
いや。
もしかしたら、いないかもしれない。
「らっだぁ」
呼んでみる。
当然、返事はない。
「らっだぁー」
もう一度。
やっぱりない。
レウは少し考える。
それから。
「命令」
と呟いてみた。
返事はない。
「……俺まで何やってるんだ」
自分で言って笑った。
そのまま歩き出す。
長い廊下。
何度歩いても広い。
けれど、最近は迷わなくなってきた。
少なくとも、自分の部屋と食堂くらいは分かる。
地下への階段も。
中庭への道も。
らっだぁがよくいる部屋も。
少しずつ。
この城のことが分かってきた。
角を曲がる。
そこには、昨日までなかったものが置いてあった。
小さな椅子。
「……何これ」
近付いてみる。
木製の椅子だった。
特別高価そうでもない。
古くもない。
ただの椅子。
レウは首を傾げた。
誰が置いたのだろう。
答えは考えるまでもなかった。
「らっだぁ?」
呼ぶ。
すると。
少し離れたところから声が返ってきた。
「ん?」
壁の向こうから、ひょこっと顔を出す。
「これ」
レウが椅子を指差す。
「あぁ」
「何?」
「椅子」
「それは見れば分かる」
「じゃあいいじゃん」
「そういう問題じゃない」
最近、よくこのやり取りをしている気がする。
らっだぁは椅子を見る。
「そこ、座る場所なかったから」
「俺の?」
「たぶん」
「たぶん?」
「違ったら俺の」
「どっちだよ」
レウは笑った。
らっだぁも少し笑う。
それだけだった。
けれど。
レウは椅子に座ってみた。
ちょうどいい高さだった。
「……悪くない」
「そう」
らっだぁはそれだけ言って、またどこかへ行こうとする。
「待って」
「なに?」
「ありがとう」
らっだぁが振り返る。
少しだけ目を丸くした。
「⋯どういたしまして」
そう言って。
今度こそ行ってしまった。
レウは椅子を見た。
ただの椅子。
それだけなのに。
少し嬉しかった。
それから数日。
城の中に、少しずつ物が増えていった。
最初は椅子。
次は、小さな机。
その次は棚。
どれも必要最低限のものだった。
レウが欲しいと言ったわけでもない。
らっだぁが何も言わずに置いていく。
「これ何?」
「机」
「それは分かる」
「じゃあいいでしょ」
「……もういい」
そんなやり取りも増えた。
そして。
レウ自身も、少しずつ物を増やしていった。
森で拾った綺麗な石。
花冠を作った時に余った花。
古い紙。
本。
食堂から持ってきた小さな皿。
全部、大したものではない。
けれど。
自分で選んだものだった。
ある日。
レウは自分の部屋を見回した。
最初に来た時は。
何もなかった。
大きなベッド。
机。
本棚。
それだけ。
今は違う。
窓辺には小さな石。
机の上には本。
壁には、森で拾った葉。
そして。
棚の隅には。
少し枯れた花。
レウはそれを見つめる。
「……増えたな」
いつの間にか。
自分のものが増えていた。
自分がここで暮らしている証拠みたいだった。
その時。
扉が開く。
「何してるの?」
らっだぁだった。
「部屋見てた」
「何か変?」
「いや」
レウは部屋を見回す。
「物が増えたなって」
らっだぁも部屋を見る。
「そうだね」
「最初、何もなかったのに」
「俺の部屋もそうだったよ」
「え?」
レウが振り返る。
「見る?」
「いいの?」
「うん」
らっだぁは歩き出した。
レウもついていく。
長い廊下。
角を曲がる。
階段を上る。
そして。
以前見た、らっだぁの部屋。
扉が開く。
中へ入る。
相変わらず暗い。
けれど。
以前とは少し違っていた。
机の上。
そこには。
花冠があった。
あの日のもの。
すっかり乾いて、花は少し色を失っている。
それでも。
捨てられてはいなかった。
レウは立ち止まる。
「まだあったんだ」
「うん」
「捨てないの?」
「捨てない」
「枯れてるよ」
「知ってる」
らっだぁは花冠を見る。
「初めて、誰かからもらったものだから」
レウは何も言えなくなった。
らっだぁはそれ以上何も言わず、本棚へ向かう。
レウはもう一度、花冠を見る。
少しだけ。
胸が温かくなった。
「……じゃあ」
レウは言った。
「もっと増やそうよ」
らっだぁが振り返る。
「何を?」
「物」
「なんで?」
「この城、広すぎるから」
「うん」
「何もなさすぎるし」
「そう?」
「そう」
レウは少し考える。
「だから」
笑う。
「もっといっぱいにしよう」
らっだぁは黙った。
少し。
本当に少しだけ。
そして。
「いいよ」
そう言った。
それから。
二人は少しずつ城を変えていった。
レウが花を見つけて飾る。
らっだぁが古い家具を見つければ持ってくる。
森へ行った日は、石や枝を拾った。
食事をした後は、食堂に綺麗な皿を置いたままにする。
本を読んだら、机に置く。
椅子を一つ置く。
二つ置く。
使う部屋を少しずつ増やす。
最初は何もなかった場所に。
少しずつ。
生活の跡が増えていった。
ある頃。
レウは食堂にいた。
らっだぁも向かいに座っている。
二人の間には、食べ終わった皿が二枚。
それだけ。
けれど。
レウはそれを見ていた。
「どうしたの」
らっだぁが聞く。
「いや」
レウは笑った。
「なんか変だなって」
「何が?」
「この城」
らっだぁが周囲を見る。
「普通じゃない?」
「前はもっと静かだったじゃん」
「今も静かだよ」
「そうだけど」
レウは少し考える。
そして。
「前より、狭く感じる」
らっだぁが目を瞬かせる。
「狭い?」
「うん」
レウは笑った。
「物が増えたからかな」
らっだぁは周囲を見る。
広い食堂。
高い天井。
長い机。
以前と変わらない。
それなのに。
確かに。
何かが違っていた。
「……そうかもね」
らっだぁが言った。
レウは少し笑う。
「ね」
しばらく沈黙。
けれど。
その沈黙はもう寂しくなかった。
誰かがいる。
物がある。
生活がある。
それだけで。
大きすぎた城が。
ほんの少しだけ。
二人の家になっていった。
その後。
レウは自分の部屋へ戻った。
扉を閉める。
ベッドへ腰掛ける。
窓を見る。
厚いカーテンの向こう。
外はまだ知らない世界。
朝も知らない。
太陽も知らない。
青空も知らない。
けれど。
今は、それでよかった。
この暗い城の中で。
自分たちは少しずつ。
何かを増やしている。
時間も。
思い出も。
物も。
そして。
一緒にいる理由も。
レウは布団へ潜り込む。
目を閉じる。
明日もまた。
何かが増える気がした。
NEXT=♡1000
コメント
9件
久しぶりに見に来たけどやっぱらっだぁとレウさんのなんでもないやり取りが凄く可愛くて好き