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2.無断訪問

翌日、二人はgodが通っている北乃森高校に訪れていた。

汚れなど一つもないほどきれいに手入れされた景観で、校庭を含めると、まるでコンサートドームのように広い。

godから”主にお金持ちの人たちが通っている学校”というのは聞いていたが、実際二人の想像の範囲をはるかに超えていた。

「そういえば、学校に許可をもらわずに来てしまいましたけど、大丈夫なんですか?」

「んー、まぁ大丈夫よ。ちゃんとそこらへんは考えてあるから」

いつもなら伺う前に電話などをして、正式に許可をもらうのが自分たちのやり方。探偵とかそういう身分を盾にして、無理やり話を聞くというのは、今までで一回もなかった。

そこら辺を一番わかっているのは、紛れもないマリア自身だ。きっとそこに何らかの意図があるのだろう__花音はそう思うことにした。

二人は学校の裏口へ行き、職員室につながっているであろうインターホンを押す。

しばらくすると、一人の女性が裏口のカギをあけ、顔を出した。

身長は自分たちより上で、スラっとしたスタイルが際立っている。二人を見つめるその瞳から、警戒と不快感が感じられた。

「今日は何の御用でしょうか」

「2年1組の担任の先生とお話ししたいのですが、よろしいでしょうか?」

「……蓑原先生のことですか?ご用件は?」

「ちょっと生徒関連のトラブルについて、詳しくお話を聞けたらと思いまして」

いきなり訪問しておいて、内容を濁す。そのような人を警戒なしで出迎えるほど、人間は馬鹿じゃない。

しばらく裏口で話していると、奥のほうから一人の男性がこちらに走ってくるのが見えた。

中年の男性で、肌はgodと同じく黒く染まっている。おそらく体育系の部活の、顧問の先生なのだろう。

「遅くなってすみません。私が1組の担当の、蓑原智樹といいます。南先生、ここは僕に任せて、君は仕事に戻ってください」

優しそうに言うと、女性の先生は少しためらいながら、軽く解釈をして職員室の方へ戻っていった。

「ここで話すのは大変でしょうし、奥の部屋で話しましょう。そこでなら、誰にも聞かれないはずなので」

__まさか、マリアはこの担任の先生がこのような人物で、あの時来ることをすでに知っていたのだろうか?

チラッとマリアのほうを見ると、まるで作戦が成功したかのようにニヤッと口角を上げていた。


3.生徒の秘密

少し歩いたところにある個室には、ソファが向かい合って二つ設置されているだけ。おそらく、話し合いや相談の場で使われている部屋なのだろう。

お互い向かい合うように腰を落とし、最初に口を開いたのは蓑原先生だった。

「先ほど、生徒関連のトラブルとおっしゃっていましたよね?それって……春先くんと、黒川くんのこと、ですか?」

流石というべきか、担任の先生といものは生徒間のトラブルのほとんどは把握しているらしい。

マリアは足を組みながら、今までのことを話し出した。

「そう。私たちは子供たちを救う探偵、というのをやっているの。今回、あなたのクラスの誰かから依頼を受けまして。春先くんと黒川くんとの間にあるいじめを止めてほしい、という内容を。そこで、今回は担任の先生であるあなたから話を伺うために、ここに来た。調査のため、話を聞かせていただいても?」

「……正直、あの問題には関わるなと校長からくぎを刺されているんです。いじめっ子である黒川くんを摘発すれば、俺も校長に消されるかもしれないから」

でも、と蓑原先生は足の上に置いていた拳を強く握りしめる。

「それは、俺が目指していた先生じゃない。俺は、子供たちのお手本となれる先生でありたいんです。ですから、どうか俺にも、捜査の手伝いをさせていただけないでしょうか」

その瞳に、嘘も偽りも何もなかった。真実と正義だけを表している。

断る理由など、ない。

花音はカバンの中から、パソコンを取り出す。彼女が常日頃から愛用しているパソコンだ。

「それでは、まず春先くんと黒川くんについて聞かせてください」

「春先くんは、いつも期末テストでは満点で、常に学年1位をキープしています。休み時間では黒川くんから嫌がらせをされているところを目にしていますが、そうじゃない場合は、絵を描いていることが多いです」

「春先くんに友達とか、家族間でのトラブルとかってありませんでしたが?」

「いや……特になかったと思います。いじめが起こる前は、普通に友達と一緒にいることもあったんですけど、最近ではめっきり見かけませんし。家族間でも、面談では問題ないといっていました」

話をまとめると、春先くんはいわゆる秀才、という人であり、いじめられる要因として考えられるのは、おそらく学力の嫉妬とかだろう。

だが、その予想は早くも崩れることとなる。

「黒川くんは……見た目は不良っぽいですけど、成績はいつもトップクラスなんです。それこそ、学年4位、5位らへんを常にキープしているほど安定しています。なので、学力面が原因ではないと思うんですよね」

黒川くんも頭がいいのであれば、一体なぜ、春先くんをいじめるのだろうか。そのなぞは一向に複雑化されていく。

一方、マリアはそのなぞとは一切関係ない質問を、蓑原先生に問いかけた。

「一応聞くけど、黒川くんが起こした行為は、今回のいじめだけ?」

「えっ?それって、どういう……」

困惑している蓑原先生を横目に、表情を一切変えずに、静かに問う。その姿はまるで、氷の女のようだ。

「依頼人の生徒さんから聞いたの。黒川くんは、昔はいじめをするようなひとじゃなかったって。ぶっきらぼうで、不良っぽいことはしていたけど、誰かを本気で傷つけるようなことはしない。そんな人だったって。でも、今回のは明らかに悪意がある。生徒の間でなにかがあったのは事実よ。だからこそ……今回が最初の行為だと、どうしても思えないの」

しばらく無言の時が流れる。

蓑原先生は下を向く。その表情からは、迷いが感じられる。

きっと何かを知っている。事件の真相に近づくために、心を抉ってしまうとしても、それを聞き出さなくてはならない。

それが__探偵としての、務めだと思うから。

「……黒川くんは、過去に一回だけ、絶対に許してはいけないことをしました。祖父である校長が対処したので、このことは先生の間と黒川くん、そして被害にあった人しか知りません」

「被害って、いったい何をしたんですか?黒川くんは」

蓑原先生は、その重たい口をゆっくりと開いた。

そこから発せられたのは、誰もが絶句してしまうようなないようだった。

「彼が高校1年生のころ、夜の街で一人でいた女子中学生を背後から襲い、トイレへ連れ込んだんです」

「えっ?そ、それってまさか」

「……レイプ行為をした、ってことね」

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