※昔の在籍メンバーの存在を匂わせてます。
「仁人、好きだ」
「え、は?」
「俺の恋人になってほしいんだけど」
「…佐野くんはアルファでしょ?僕ベータだけど」
「そんなの知ってる」
端正な顔立ちをしている男が僕をまっすぐ見つめる。僕より先に成人したけどその顔はまだ幼さが残ってる。きっとこれからもっと格好良くなるだろう。
新しいドラマの練習だろうか、はたまた冗談か。そう思いたかったが彼の瞳からは本気さを感じ取れる。
グループ結成から4年経ったから分かる。これは真面目な時の顔だ。まじかよ。
前に僕たちとすれ違った番組スタッフさんが彼を見て、あんなアルファと番になりたいって言ってるのが聞こえた。あのスタッフさんだけじゃない。みんなが思ってる。
だから佐野くんにはいつか美人で守りたくなるような素敵なオメガの恋人ができるんだろうと思ってた。なんならもう相手がいるのかもとすら思っていた。そう、ずっと思ってたのに。信じられない。
よほど豆鉄砲を食らったような顔をしていたのだろう。佐野くんが顔を覗き込んできたことで僕の意識が戻ってきた。何か話さなきゃ。
驚きで口が渇いてる。
「し、知ってるならなんで?アルファはオメガと…。じゃないの?」
急に告白されて驚いてる僕に、佐野くんはとんでもない爆弾を落としてきた。誰にも言ったことなかったのに。
「…そういう仁人だってオメガのあの子のこと好きだったじゃん。もしかして今でも好きなの?」