テラーノベル
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差し込む朝陽が眩しくて、私はゆっくりと瞼を持ち上げた。
……けれど、固まった体をわずかに動かそうとした瞬間、全身を突き抜けるような衝撃に思わず息が止まった。
「……っ、あ……」
腰から下に力が入らない。
それどころか、節々がミシリと音を立てるように重く、鉛のような鈍い痛みが這い回っている。
恐る恐る、滑らかなシーツから出た自分の腕を見れば、そこには昨夜の「熱狂」を物語る
鮮やかな赤紫色の痕が点々と、愛おしげに刻まれていた。
「……起きたか、メリッサ」
すぐ隣から、低く掠れた声が聞こえた。
振り返ると、そこには既に身支度を整えかけたシュタルク様がいた。
昨夜の獣のような猛々しさはどこへやら、今の彼はどこか落ち着かない様子で私の様子を伺っている。
慌てて体を起こそうとした私の肩を、彼の大きな掌が優しく、けれど拒めない強さで押し留めた。
「そのまま寝ていろ。昨夜は……その、少し…いや、だいぶ無理をさせたからな」
どこかバツが悪そうに視線を泳がせながら、そう言ったシュタルク様。
公爵としての威厳はどこへ行ったのか
まるで悪戯が見つかった子供のような彼の様子に、私は思わず小さく噴き出してしまった。
そんな私を見て、彼は驚いたように目を瞠ったけれど
やがて呆れたように、そしてつられたように低く笑い出した。
「メリッサ」
ひとしきり笑い合った後、不意に彼は私の名を呼んだ。
冗談を排除した、真剣な声で。
「……その…幻滅、してないか……?俺に」
シュタルク様は、彫刻のような整った顔を珍しく歪め、困ったような表情を浮かべている。
きっと昨夜のことを気にしているのだろう。
あの、理性の箍が外れ
獣のように荒々しく私を貪った自分に
私が呆れ、嫌悪していないかと不安なのだ。
だが、逆に言うならば。
私が『女』であることを、逃げ場のないほどに無理やり意識させてくるようなあの激しさ。
あんなにも熱く、強く求められて
私が彼に幻滅するはずがない。
むしろ、胸が苦しくなるほどの嬉しささえ感じていた。
それでも、シュタルク様は壊れ物を扱うように私を気遣ってくれている。
その不器用な優しさが愛おしくて、私は自然と微笑んでいた。
「大丈夫ですよ」
私が優しく答えると、彼は目に見えてホッと胸を撫で下ろした。
その様子に安心させることができた喜びを感じる反面、どこか可愛らしいと思ってしまう自分に苦笑してしまう。
「幻滅なんて、するわけありません。私は……」
私はシュタルク様の大きな手に、そっと自分の手を重ねた。
指先に残る彼に噛まれた痕が、微かな熱を持って脈打つ。
「むしろ、とても嬉しかったです。……シュタルク様も、ちゃんと男性なんだって、私のことをあんなに求めてくれるんだって肌で感じられましたから」
私の言葉に、シュタルク様は一瞬で耳の付け根まで真っ赤に染まった。
そして、やり場のない視線を部屋の隅へと泳がせている。
普段の冷徹な公爵様からは想像もつかない、あまりに人間味に溢れた姿。
それがたまらなく愛おしくて、私は彼の手をぎゅっと握り締めた。
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