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頬から感じるアンタの指の体温。
此方を見つめる赤い瞳。
透き通るような白い肌。
整った顔。白い髪。
アンタの全部が愛おしくて、好きだ。
「一郎。」
顔を上げる俺にはにかんだ。俺にだけ見せる、優しい笑顔。それを思うと嬉しく思った。
「ゼッテェ、離さねェよ。」
目を開くと暗い路地裏の壁。
座って寝ていたのか体が痛くなっていた。
……久しぶりに夢をみたのかと思ったらアイツの夢かよ…クッソ胸糞悪ぃ……
なのに、何でこんなに心臓がうるせぇんだよ。
俺はそんな事を思いながらギュッと目を瞑る。さらに脳裏にアイツの顔が出てきてうざったしく思えた。
俺は目を開けて上を向く。ふとポツリと言ってしまったアイツの名前。
「…左馬刻………」
俺はマフィアの一員だ。
金を稼いで弟たちと和解してそれで一緒に家に住むためにマフィアに入ったとも言える。
でも裏を返せば俺は帰る場所が欲しいだけかもしれない。今の俺は身元を突き止められないように路地裏で寝泊まりしろなんて言われるくらいだからだ。
でも、この先に平和で楽しい未来があるのなら、俺はまだ頑張れる。
そんなことを胸に刻んで今日も今日とてマフィアのアジトに俺は行く。暗い路地を通って。
「んもぉっ!イチローっおっそーい!遅刻だよ!ち・こ・く! 」
「いんや一郎は時間にはちゃんと間に合ってるぜ。」
ぴょんぴょんとはねながら怒る乱数とソファでくつろぐ空劫がアジトで迎えてくれる。なんだか微笑ましい絵面だ。
「わりぃ、タイマーセットすんの忘れてよ……」
「まぁ、最近イチロー結構な頻度でボスに仕事任されてるからねぇ。時にはボスに休みもらえばいいんじゃない?」
「お前はちと休みすぎだがなー」
「くーこーちょっと黙ってて…ねっ!」
乱数はストックの飴を開けて空劫の口に突っ込む、喉奥に突っ込まれたのかむせていた。
「おい!ラムダァ!テメェ!一発殴らせろや!」
「えへへっ〜☆おーにさんこーちら!にゃはははっ♫」
喧嘩が勃発し、部屋中を駆け巡る奴らをみてて昔の事を少し思い出した。
「おい、また花瓶とか割ってボスに怒られたくなかったら辞めろ」
「!?……わーったよ……」
そう言うと2人は言うことを聞いておとなしくなる。ボスには誰も逆らえねぇからな……ま、おれもだが。
「とりあえず、ボスはまだなのか?」
「んーっとねぇ。ボス忙しめだったらしいからぁ早めに来た僕とくーこーに用件伝えていってどっかに行っちゃった☆」
「ほーん…なるほどな。で?その用件の内容はなんだったんだ?」
「えーと……忘れちゃった♫」
「おいおい、お前腐っても一郎の補佐かよ笑わせんな!」
「じゃあくーこーは覚えてるのぉ??」
「ったりめーだろ!ノアールとまた揉めたらしくてそんで今回はそのノアールの第2部隊を潰しに行く!……多分」
「くーこーだってうろ覚えじゃぁん!人のこと言えるようになってからいってよねん!」
「うっせ!とりあえず、うまくやれってよ。」
ノアール、か。確か左馬刻が行ったとこか……
つーかなんで朝っぱらから左馬刻が出てくんだ!早くいなくなりやがれ!
ノアールは確か第1と第2で部隊が分かれてたな…第1は幹部とボス、第2はその他諸々だったような……ま、いいか。第2部隊ならあの野郎と合わなくても済むだろうし大丈夫か。
「おい、一郎。なにボーッとしてやがんだ」
「ん?あぁ、ちょっと考えてただけだ。」
「もしかして……左馬刻のこと気にしてたりしたぁ??」
「はぁ?そんなわけねぇだろ。誰があんなやつのこと気にすんだよ……」
「ならいーけどぉ 」
飴を片手に乱数が言うなりまた乱数の表情が変わり、次は明るく何かを思いついたような顔つきだった。
「あっ、そうだ!どうせ決行は夜だから今からその第2部隊のテイサツ?にでも行こーよ!」
「はぁ?バレたらどーすんだよ」
「大丈夫大丈夫!僕が上手く変装させてあげるから♫」
「そういやお前本業でファッションデザイナーやってたな。……お前拙僧と一郎を着せ替え人形にしようとしてねぇだろうな?」
「人聞きが悪いなぁくーこーは!今日は一人一着ずつしか持ってきてないから着せ替えはしたくてもできないよ☆」
乱数はボスから結構自由にしていいように言われている。理由は単純、乱数はある程度の拷問に耐えられ証拠を消すのが上手いからだ。俺はそんな器用にできねぇからまだ余分な自由は与えられていない。
「んじゃ、そうとなったら偵察いくぞ。」
「おっイチロー久々に乗り気じゃぁん♫やっぱり左馬刻が…?」
「だから、ちげえつってんだろ!」
俺は冗談半分で乱数を怒って偵察に行くために着替えを始めたのであった。