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管野アリオ
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結局、二人はそのまま列に並ぶことになった。
休日の人気店ということもあり、列には若い女性客やカップルがほとんどで、手を繋いで笑い合うカップルや、楽しそうに写真を撮り合っている女性客をぼんやり眺めながら、亜佑美はふと思った。
(私たちも、傍から見たらカップルに見えるのかな)
そう考えた瞬間、急に気恥ずかしくなってしまう。
ふいに隣に立つ朝陽をちらりと見れば、本人はそんなこと露ほども考えていないのか列の先を見ながら、「早く食べたいですねぇ」なんて呑気に呟いていた。
その無防備さに、余計に心臓が落ち着かない。
「そういえば木葉さんって普段からカフェ巡りしてるんですよね? どういうところに行ってるとか聞いてもいいですか?」
「あ、うん」
問われた亜佑美はバッグからスマートフォンを取り出す。
「写真結構撮ってるから……あ、これとか」
少し前に行ったカフェの写真を表示して見せると朝陽は目を輝かせた。
「これ、凄いですね! 美味しそう!」
ふわふわのパンケーキに、たっぷりのクリームとフルーツ。
食い入るように画面を覗き込む朝陽の反応があまりにも素直で、亜佑美は自然と笑ってしまう。
「藍島くんって甘い物好きなの?」
「はい! 大好きです! でも、俺の周りって甘い物苦手な人が多いからカフェとか行かないんですよ。だからこういうパンケーキとか食べる機会無くて……」
少し照れたように笑ってから朝陽は続けていく。
「だから、今日は誘って貰えて本当に嬉しいんです!」
「そうだったんだね」
そんなに喜んでもらえるとは思っていなかった亜佑美の胸はジンと温かくなる。
「あ、そういえばここのパフェがね、凄かったんだよ」
言って別の写真を表示した時だった。
ブブッとスマートフォンが震え、届いたメッセージが画面上部に表示された瞬間、亜佑美は動きを止めた。
《さっきの合コンの件だけど、参加でいいよね?》
メッセージは友人からで、なかなか返信が無いことから再度送ってきたようだ。
朝陽も画面を見てしまったらしく、ほんの少しだけ視線を泳がせ、気まずい空気が流れていく中、亜佑美は慌てて通知を閉じた。
「あ、そ、そうだ!」
そして、誤魔化すように声を上げる。
「私SNSやってて、カフェでの写真載せてるから、良かったらフォローして欲しいな」
すると朝陽は申し訳なさそうに眉を下げた。
「あ、すみません。俺、SNSとかやってなくて……」
「え?」
今どき珍しい返答に亜佑美が目を丸くすると朝陽は困ったように笑う。
「でも、木葉さんの投稿見たいから始めてみようかな! 良かったらやり方、教えて貰ってもいいですか?」
「……え」
一瞬、言葉が出なかった。
(私の投稿を見るために?)
これまでSNSをやっていなかったのに、自分の投稿を見るという理由でわざわざ始めようとするなんて驚きしかない。
けれど、亜佑美は嬉しくなったのか自然と頬が緩む。
「もちろん。じゃあまずアプリ入れないとだね」
「はい!」
亜佑美に言われ朝陽は素直にスマートフォンを取り出すと、アプリをダウンロードしてアカウント登録、プロフィール設定まで一つ一つ教えて貰う。
「名前って本名の方がいいんですか?」
「別にニックネームでも大丈夫だよ」
「うーん、どうしよう……」
名前一つに本気で悩み始める姿が可笑しくて、亜佑美は思わず吹き出した。
「そんな真剣に考えなくても」
「で、でも、名前って大切じゃないですか」
「ふふっ、確かに」
そんなやり取りをしているうちに、長いと思っていた待ち時間は驚くほどあっという間に過ぎていく。
そして亜佑美は改めて思った。
朝陽といると本当に退屈しないし、むしろ、もっと一緒に居られたら良いのにと。
コメント
1件
読んできましたぁ…この二人、距離が縮まってる感じがすごく伝わってきて、心臓がきゅってなりました🤍 亜佑美が「私たちカップルに見えるのかな」って思うとこ、すごく共感。無防備な朝陽くんの「早く食べたいですねぇ」が可愛すぎて、亜佑美の気持ち分かるなぁ…。 あと、SNSのためにアプリ入れるって言い出す朝陽くん、最高に純粋で尊いです。名前で真剣に悩むのも、全部が「この人のこと好きなんだな」って滲み出てて、続きが気になります🥀