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仮面を被った清純派(アイドル)

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仮面を被った清純派(アイドル)

9 - 式場パンフレットの完成試作 ‐あの日の撮影したパンフレットが遂に完成!‐

2024年02月27日

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-5月初旬-

今日は今月末に発売される今年の式場パンフレットが出来た(仮)という事で、本日午後一で確認の為に撮影場所でもあった式場に1人で来ている。一応、その午後からはダンス稽古があるのだが直ぐに終わるとの事で、少しの時間抜けて来ている。そしてこの写真の確認には彼、西君も来ている。ううん、正確に言うと来ていた。

実は、本来一緒の時間に確認をする予定だったのだが、私が‥というより歌番組の収録が以外にも長くなってしまった。その結果、予定より1時間以上の遅れが生じる為、申し訳なかったが先に西君が確認をしてもらっていた。その後に私が来た。そして彼は既に式場を後にしていた。


はぁ…ここ2ヵ月顔見れてなかったから期待してたのに…クソ音楽番組め!


そう。新曲が出るとなると何かと忙しい。連絡すら平気で半日後とかざらにある。いつも申し訳ないと思いつつも西君は優しく応える。だから今までは謝っていたのを最近は普通に返事をしている。そう思いながら私は今、完成された写真を見ている。これを見ると、あの時の色んな記憶が思い出されて凄く懐かしさと幸せを感じる。なんせ、これを切っ掛けに西君とは付き合いが始まったのだから。



「‥とまぁこんな感じで出来ています、いかがでしょうか」

写真を担当して頂いた新高さんがそう言う。

「あ、はい、凄く良いと思います。因みに西さんは何か言われたんですか?」

「そうですね、強いて言うとここのページの部分に対して、こちらに変更できればって言われましたが、まぁ上原さんの判断にって事で…」

新高さんはそう言うと、他にも候補の写真の中から西君が言っていた写真を見せる。

「このシーンって‥」

ここは鮮明に覚えている。確か午前中の最後の撮影場所になった華やかセットの一幕だ。私が余計な事を考えて不安にさせちゃったせぃで西君が落ち込んだ所にむぎゅっと抱き締め、おデコに指をツンとした後にニコッとしたシーン。その写真はなんとも2人共幸せそうで、私自身が西君の事が好きだと確信になった瞬間だ。

因みに仮写真は背景もっと写り込んでいて、その影響で人物が小さくなって向かい合っている状態。

うん。これはこっちしかないね。

「こっちで…」

私は西君が選んだ写真にした。



「分かりました、ではこのシーンはこちらに変更したいと思います。他特になければ今日はこれで終了です。最後にこちらが記念で撮影した写真です」

これも先程と同様、華やかセットで撮った一枚。これはフォトスタジオでは良くある家族写真の様な感じで非常に奇麗に写っている。

「凄く奇麗です。ありがとうございます、この後稽古なんで早速メンバーに見せたいと思います(笑)」

私がそう言うと

「西さんも友達に見せるって張り切ってましたよ(笑)。羨ましいですね愛されていて」

私はその言葉にいい気分になり

「そうですかー、最近顔を見てないですが凄く幸せです」

「ん‥?」

すると新高さんは思った答えと違ったのか、首を傾げて変な間が出来る。その間を感じて私は今言ったセリフを思い出すと、凄くアウトな発言をしてしまった事に気付いた。私は新高さんが何か言いたそうな所を止める様に

「あいゃそうじゃなくて、劇場に足を運んでいる姿が最近見られてないのに、ずっとファンでいてくれて幸せだなーって‥いゃー本当にファンが居てこその我々なんで、嬉しい限りですアハハ」

すると新高さんは

「あーそう言う事なんですね、今の発言を聞く限りだと、てっきりお付き合いかなんかされたかと思いました(笑)」


あっぶねーー。今の一言でそう捉えるなんてなんて勘が良いんだよもう!焦るわーマジで


「い、いゃー私が居るアイドルは恋愛禁止なんで、そんな事したらアイドル活動終了で、冗談でも出来ないですよーー」

私は近所のおばさん感を出しながら新高さんにそう言った。

「恋愛禁止!?」

新高さんは驚いた様子を見せる。

「まぁそうですね、私達の事務所は結構その辺厳しくて、上の人曰く、アイドルって芸能人を好きになるとは違って、ファンによって輝きを見せるのがアイドルとの事で、それに好きな人に近い存在っていうか、だから両想いは即ち他に好きなってくれた方を裏切る事になるとの事で、まぁ後は過去の先輩達が恋愛で色々やっちゃったもんだからですね。それでも恋愛するなら卒業してからって感じです」


私はそう言いながら『何言ってるんだと私』と思ってしまう。そう思いながらも


「なんですか裏切りって?こっちとはしては裏切ったつもりないのに、勝手に裏切りって笑わせるよね?」

何故か私の気持ちを代弁してくれる新高さん。

「はい…」

「なるほどそういう理由で‥」

私はその言葉に一瞬疑問が浮かんだが、考える暇もなく話は続く。

「そうなんですね、その辺て昔から変わらないんですね。個人的にはアイドルも人間なんで、普通に恋愛して良いと思いますけどね。それで去って行くファンはそれまで的な感じで。現に他のアイドルで結婚しても普通に続けている人もいますよね」


『他のアイドルは』ね。


私はそう思いつつ

「そうですね、正直私自身も恋愛自由なアイドルは羨ましいです」

「そうですよねー、ねねここだけの話、いないんですか好きな人とか?」

新高さんは突如近寄って来て小声で言ってきた。

「わわ、私ですか?いないいないですー」

「えーそうなんですか?」


正直な所言いたい、凄く自慢したい。でも口が裂けても言えない。


私はグッと堪えながら新高さんの言葉に相槌する。

「凄く残念ですねー、西さんは上原さんの事が好きなんでしょ?どうです?彼は」

ここぞとばかりにグイグイ来る新高さん。何故そんなに言うのか尋ねると

「え?だってとてもお似合いで、それに撮影会の時、特に昼食くらいから一気に距離が近くなった感じがして、もしやとは思ってたんですけど、勘違いだったですかね?」

「確かに話すに連れて距離は縮まりましたが、だからと言って付き合ったりはしませんよ?それに恋愛禁止って今言ったばかりじゃないですかー?」

すると少し残念そうに新高さんが、

「もう真面目ですね、今しか出来ない事があるのに、アイドルっていう言葉で恋愛も出来ないなんて寂しいでしょうに」

「そりゃ‥そうですけど」

何故そこまで恋愛に執着しているかは別にして、確かに新高さんの言う通りだ。アイドルとはいえ中身はただの人間で、過去に何度も言っている様に、アイドルという仮面を脱げば、その辺にいる普通の女子高生で恋愛に興味無い訳はない。我々が独自でやっている握手会での『イケメン探し』。これも実際は異性に興味あるからこそ、密かな楽しみになっている訳である。

入った当初では感じなかったこの感情。アイドルという言葉1つに、人として必要な『恋愛』を捨てないといけないのは中々の苦である。勿論、中には本当に恋愛興味ゼロの人もいるだろう、だが私は違う。普通に恋愛したいしデートもしたい。だから今、彼氏となっている西くんが存在する。寧ろ、大好きな人がいるからという理由でモチベーションが上がるから、全体的なパフォーマンスも向上してる。


現に今回の新曲に関しては、今までにないくらいの出来と自分でも思う。これは今の恋愛事情と重なる部分もあったりするからであろう。だからあながち恋愛は悪い事でななく、寧ろプラスに動くと私は思う。よって新高さんの意見は賛同できる。ただ…

「どうしてそこまで恋愛に拘るんです?」

私は内容より、どうしてそこまで恋愛に執着を持つのかを尋ねた。すると新高さんはこう答えた。

「拘ってる訳ではないんだけど、ここだけの話、私こう見えて若い頃は地下アイドルをやってたのよ?」

「え!そうだったんですか!?」

「うん、まぁその恋愛のせぃで3年という短い期間だったんだけどね」

話を聞くに新高さんはその恋愛が関係していて、元々恋愛禁止なアイドルではなかったらしく、それもあって新高さん自身がスタッフに対して片思いしている所から始まった。いつの日かその人と付き合う事が出来た‥のは良いんだけど、誰だが分かんないけどそれが良く思わない人がいたらしく、ありもしない噂を立てたりとちょっとした問題になっていた。

これ以上続けると他の方に迷惑が掛かるという事で新高さん個人と会社で会議になった。ただその会議は明らかに新高さんが非がある様な言い方で、その時ははっきりと言われなかったそうだが、新高さん自身は丸で「別れろ」と言われている様だったと語る。ただ当時の新高さんはアイドルよりも恋愛だったので、新高さんが自棄になって「要は恋愛を続けたいなら辞めれば良いんですよね?じゃー喜んで辞めます!」と言ってその一週間後に退職。まぁ表上は『新しい夢が出来た為に卒業』って事になったらしい。


「‥今となっては当時の彼氏が旦那になっちゃってるし、元々アイドル時代に趣味でやっていた写真撮影が1つの写真集としてなったのが切っ掛けで、今となっては写真家になってるんだけどね…。話は逸れたけど、要はアイドルとはいえ1人の人間。恋の1つや2つしちゃうもんだからね。だから、私がこうだからって言うつもりはないんだけど、今の子達にはアイドルは勿論、普通に恋愛して欲しいんだよね。まぁ、私がそう願った所で何の意味もないんだけど(笑)」

そう新高さんは笑顔で言った。


私も同感だ。アイドルにも恋愛という自由が欲しい。だから私は


「私もそう思います。実際今、言ってしまえば年頃の女ですし、自分で言うのもなんですが、『私はアイドル、キャッキャ!』みたいな事は正直きついって思うんですよねー」

「へぇー以外。仕事とプライベートは別的な?」

「そうですね、決してアイドルが嫌いって訳ではないんです。ただ、アイドルになった頃とは違う感情っていうか、アイドルと現実という差がどうしても引っ掛かってまして、恋愛もしたいって‥」


‥って何悩み相談をシレっと新高さんにしてるんだ私!


「やっぱりそうなんですねー」

私の悩みについて当たり前だけど共感を持つ新高さん。まぁ同じアイドルを知っている唯一の人でもあるから、いっそのこと相談に乗ってもらってもいいかも‥と思った。

「そうなんですよねー、折角なんで悩み聞いてもらってもいいですか?」

「おぉ?何々?ここで悩みって恋バナ?」

ご察しがいい新高さん。私は西君と付き合い始めて誰にも相談出来ていなかった事を、新高さんなら受容してくれるんじゃないかと思い、思い切って相談してみた。

「ご名答です」

「やっぱり恋してるんですか?」

恋の話になると食い気味なる新高さん。

「実は…そんな所です」

「やっぱりそうなんだー」

そう言って腕を組んではうんうんと頷く新高さん。

「どうしてやっぱりなんですか?」

「なんかそんな感じしたからですね。私も同じ思いをした身。誰にも言いませんから」

『誰にも言わない』。この言葉の力ってなんなんだろう。この人なら大丈夫って心の何処かで思ってしまう。


ただのアイドルと写真家の関係なのに…


「本当に誰にも言いませんか?信じても良いんですか?」

「うん、大丈夫です。寧ろ契約に『仕事を受けた被写体の個人情報を漏らしてはいけない』っていうのがあるので、喋べれないです。喋ったら違反でクビになっちゃいますもん(笑)」

そう笑顔で言う新高さん。

「わかりました。実はですね、かくかくしかじかで‥」

私は新高さんの言葉を信じて、私自身が抱えている事や西君との出会いから実は付き合っているって事。全てを打ち明かした。

「へぇーそうだったんですね。ウチの仕事が切っ掛けで。こちらとすれば凄く嬉しい事ですよ」

「そうなんです。お互いで運命みたいな事を感じてですね、まだデートというデートはしていないんですが、ライブとかに来て下さったりしてとても嬉しくて頑張ろうってなるんです。あ、そう言えばですね、このストラップはですね‥あ!」

私は思わず喋り過ぎてしまい、ふと我に返る。

「うふふ、余程好きなんですね」

「うぅ…恥ずかしい」

ぐうの音も出ないってこういう事言うんだと思う今日この頃。

「でもやっぱりそうだったんですね。式のスタッフもお似合いの様に見えましたから、”二人が付きあえればいいのに”って言ってたんですよ」

「そうだったんですね!その期待に応えられて良かったです(笑)」

「そう考えると尚更会うのは難しいですよね?」

「そうなんですよねー。二人で会うにしろ、絶対週刊誌とか居そうだから中々会えないっていうか、会いずらいって言うかで‥まぁ一応事情が事情だから。西君も承知の上でいますけどね」

「うーん…」

そう言いながら頭を抱える新高さん。ていうか、たださえ難しい状況に新高さんが考える事が可笑しい事であり、そもそも間違っている。これは私と西君の問題であって新高さんではない。

「あの…相談しといて悪いんですけど、やっぱり大丈夫です」

「え、どうしてですか?」

「よくよく考えたら、これって新高さんじゃなくて私たちの問題なんです。余計な事を考えさせてしまってすみませんでした、帰ります」

「ちょっと待って!」

明らかに強い言葉に私は思わず止まってしまう。

「別に相談されて苦に思ってたりとかしてないよ?さっきも言ったけど、私自身も同じ思いをした身。少しでも上原さんの力になりたいから。それに、相談相手が居ないんですよね?」

「‥そうです‥けど…」

「うん。だから全然話していいよ」

「うぅ‥新高さーん」

私は頼もしい新高さんに泣きながら抱き着いた。

「それで、上原さん自身はどうしたいんですか?」

「彼とデートしたいです」

「わかりました。ではこれはどうです?」

「ほえ?…」

私は新高さんに泣いて抱き着いていた体から離れて話を聞く。それは驚く内容だった。

「え!良いんですか!?ってでも、ウチの事務所にはどう言って説明するつもりですか?」

「まぁ普通に私の推薦でって言えばいいじゃないかな?」

「マジですか…」

その内容というのは、なんと新高さんはここの他に『Map Travel』という観光雑誌のカメラマンをしているそう。観光雑誌とは、普通の旅行雑誌と違ってより観光地を重点的に纏めてその場所に特化した雑誌らしい。だから旅行雑誌よりは圧倒的に頁数は少ないが、場所については旅行雑誌よりも詳細に書かれている。その撮影に新高さん推薦で私と西君を呼び、撮影込みのデートにさせようっていう作戦だそうだ。

「丁度依頼していたモデルがキャンセルになっちゃってねー、代わりを探してたとこなんです。これも運命ってやつで便乗したらどう?内容は結婚雑誌みたいなかしこまった感じじゃなくて、寄った店の食べ物の感想や印象を語って頂くだけでいいので、普通に満喫しちゃって下さい。写真撮影は勝手に撮ったり、時には合図を出しますので」

「私とすれば嬉しい限りですけど、西君に聞かないと‥」

と、そう言いながらスマホを取り出そうとすると、新高さんが私の方を軽く叩いた。

「その心配はないですよ。実はあなたが来る前に西さんから相談受けてましたから」

「えぇ!?」

驚くのも無理はない。新高さん曰く、私の前に来てた際に同じ悩みを打ち明けたらしい。面白いのが内容がほぼ一緒で、先程言い掛けたストラップの件も自慢げに話したらしい。そして西君自身も私とデートしたいという事らしい。

「全く。相談を受けたのはいいんだけど、まさかこんなにも似た相談を受けるなんてねー」

そうちょっとため息交じりではあるが、決して呆れている様な発言ではなさそうだ。

「いゃー恥ずかしいです」


そっか、西君も同じ事考えてくれてたんだ。


「よし。じゃーそうと決まればそちらの事務所に連絡するから、追って連絡しますね」

そう言ってその場所を後にした。


to be continued…

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