テラーノベル
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知らない老人が何かを呟いて、貴方に薬を振りかけられた瞬間に目が覚めました。
夢だったと安心して目を閉じると、隣で寝ていた狐が寝返りを打って貴方を潰します。
痛い!と言おうとしましたが「ぷきゃっ!」という変な音が喉から出ました。
狐「んぅわ?!〇〇さんっごめんなさ…」
貴方の鳴き声を聞いて慌てて起きた狐は、こちらを向いて謝りましたが、言葉が詰まり、目の前の光景にぽかんとしたような顔をしています。
「どうしたの?」と尋ねたくても、喉から出るのはきゅうきゅうという音だけです。
狐「…どうして…いや、〇〇さんは…?」
狐は貴方を拾い上げましたが、貴方を探して辺りを見回しています。
しかも、いつもより狐の体が大きく、床からの距離が離れすぎています。
狐が携帯の電源を付けると、画面越しに貴方の姿が写りました。
白い毛の小さなうさぎになった貴方が…
狐side
「ぷきゃっ!」 そんな声が隣で聞こえ、思わず俺は飛び起きた。
寝返りを打った拍子に〇〇さんを酷い目に遭わせてしまったと思い、謝罪をし振り返ると、そこに彼女の姿はなく、白うさぎが転がっていた。
狐「そもそも…この子は一体何処にいたのでしょう?〇〇さんが何も言わず連れてくることもなさそうですし…」
それに、家中探しても〇〇さんの姿が見当たらない。
こんな夜更けに女性が姿を消すことも異常だ。
狐「…あ、おかめさん!俺です!すみません〇〇さんが…」
俺はメンバー全員に〇〇さんが家にいない事、見つけたら知らせて保護してほしい事などを伝えた。
俺も外に出て探しに行こうとすると、うさぎが離れようとしなかったので、そのまま連れて行くとにした。
外は息が白くなるほど寒く、コートを肩に掛けて走り出した。
〇〇さんが行きそうな場所を必死に探したが、彼女の姿どころが、それらしい人を見たと言う情報すら得られなかった。
狐「〇〇さん!…〇〇!…〇〇っ!!」
何時間かして、空が少し明るくなり始めた頃、息が上がり、脚に限界がきて、よろよろと歩き始めた。
近くの公園のベンチに腰掛け、胸騒ぎを抑えるよう大きく息を吐く。
腕の中にいるうさぎも寒さのせいか小刻みに震えていることに気付き、コートの中に包み込んだ。
狐「っすみません、寒かったですね…」
本当は〇〇さんを見つけてすぐこうしたかった。
今頃彼女は泣いているのだろうか、それとも…
狐「…〇〇っ」
自身の情けなさに涙が溢れ出し、うさぎの白い毛に染み込んだ。
ふと膝に重みを感じ目を開けると、さっきまで必死に探していた〇〇さんが膝に乗っかっていた。
「狐さん…私…」彼女が何かを言う前に、俺はきつく彼女を抱きしめた。
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