テラーノベル
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切る言葉は、
準備していた。
短く。
曖昧にしない。
希望を残さない。
それが、
一番、優しい。
「次、どう切る?」
あの夜のメッセージから、
数日。
ジュンは、
言われた通りに動いた。
優しくしない。
期待を伸ばさない。
特別扱いしない。
ただ、
“終わらせる言葉”を使う。
結果は、
驚くほど早く出た。
その子は、
来なくなった。
連絡も、
減った。
ブロックも、
逆恨みも、ない。
——成功。
ジュンの売上は、
落ちなかった。
むしろ、
安定した。
「……すげぇな」
昼の通りで、
ジュンはそう言った。
「言われた通りにしただけで、
全部、片付いた」
わたしは、
頷かない。
「怖くない?」
そう聞くと、
ジュンは少し笑った。
「正直?」
一拍。
「楽」
その言葉に、
胸の奥が、少しだけ冷える。
「勘違いを切っただけで、
世界が静かになる」
「誰も泣かない」
「誰も騒がない」
ジュンは、
自分を納得させるみたいに言う。
「これ、
最適解だろ?」
——そこ。
「うん」
わたしは、
否定しない。
「“今は”ね」
ジュンが、
顔を上げる。
「成功ってさ」
わたしは、
ゆっくり言う。
「一番、
倫理が鈍る瞬間」
「うまくいくと、
人は“考えなくなる”」
ジュンは、
黙る。
「今日切った言葉」
「それを、
誰にでも使い始めたら?」
「慣れたら?」
「売上が伸びたら?」
言葉を、
重ねる。
「それはもう、
対処じゃない」
一拍。
「武器」
風が、
二人の間を抜ける。
「……でも」
ジュンは、
視線を逸らす。
「武器を持たないと、
この世界じゃ生き残れない」
その言い方は、
正しい。
だから、
否定しない。
「だから、
条件を追加する」
ジュンが、
こちらを見る。
「切る言葉は、
“相手を守るため”だけに使う」
「売上のために使い始めたら、
契約は終わり」
静かに告げる。
沈黙。
ジュンは、
しばらく考えてから、
苦笑した。
「……厳しいな」
「現実」
その夜。
ジュンから、
短いメッセージ。
ジュン
次の客、
ちょっとヤバい。
既読は、
つけない。
内容を、
察する。
成功は、
安心を連れてくる。
でも。
安心は、
次の油断を呼ぶ。
画面を閉じながら、
わたしは思う。
——次は、
“切れない相手”。
この成功が、
試される。
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