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姿を変えた、かつて我俺僕私俺だったもの

火を纏うその姿は、罪をうつした成れの果て。

呆然とする黒鵺に、炎が放たれた。


🔥     👤  👤


その炎は勢いよく飛んでいき


🔥  👥


黒鵺に襲いかかる!!


🔥🫂


ドサッ!!


咄嗟に庇ったのは不破 喧士だった。黒鵺を押し倒し、何とか炎を回避した。

喧士「とりあえず、ここから逃げよう!!」

私達は転びそうなほどに速く逃げた。未知の化け物を前に、そうするしかなかったのだ。私達の後ろには、足を引きずり、不気味なほどに口角をあげた炎が迫ってきている。3メートルは距離があったが、メラメラと熱さを感じた。私達は、1本道の廊下で、ジリジリ追い詰められていた。睨みつけるその先には、炎を纏う異形。薄暗いはずのここが、今は驚くほど眩しい。目が焼けてしまいそうなほどに。

私達は咄嗟に部屋へ入った。ドアを勢いよく閉め、薄すぎる壁をつくる。


黒鵺「おい!!どうしちゃったんだよ!!」

久遠「無駄ですわ…多分もう、彼は彼じゃありませんもの。」


黒鵺はしばらく扉を見つめ、息を整える。彼は咄嗟に鏡の前へと向かっていく。すると、


ガッシャーン!!!


彼は拳を打ち付け、古びた鏡をバラバラの破片に変えた。彼の拳には小さな破片が刺さったのか、血が滲み出る。私達は驚愕し、それを目に一歩後ずさりしてしまう。黒鵺は覚悟を決めたような顔で、その破片を握る。


グサッ!!グサッ!!


なんということか、 黒鵺は自分の腕を深く刺した!!思いっきり抜いて、もう片方の腕も同様に。


喧士「お、おい!!何やってんだ!!」

久遠「やめなさい!!」

黒鵺「あ、ぁあ。あいつ…火だろ?だ、だからぁ。俺の血で、消化すんだよぉ!!」


そう言って彼は腹部にも深く傷をつくる。

うぅと唸る声が部屋に小さく響いた。そしてドアを開け、変わり果ててしまったその異形に飛びかかり、抱きついた。黒鵺の皮膚がどんどん燃えてゆき、唸り声も大きく汚くなっていく。鏡でできた鋭い破片を、その異形に刺せばいいじゃないか。なんで自分が傷つくような真似を…。いや、そうか。そうだよな。

かつての仲間を刺し殺すなんて、できないよな。

異形の炎はどんどん小さくなる。よく見ると、異形の胴体は肋が露呈し、少しくすんでいる。

黒鵺「ヴヴヴヴヴうううぅうう!!!」

ほぼ全身赤黒くなってしまった黒鵺は、必死にその異形に炭のような腕で抱きついている。腕の傷口からは、今でもブシュっと大量の血が飛び出している。その両腕には、もうほとんど感覚もないはず。身体が焼け、激痛の中でも、彼はその腕を絶対に離さなかった。


その覚悟は、無駄にはしない…。私は足元の破片を握り、異形へと立ち向かった。躊躇いがなかった訳でもない。ただ、私は今の私が考える、最善の行動をするだけ。


その異形の胸を、背後から思い切り刺した。熱湯のようなどす黒い液体を流した異形は、その場に倒れ込んでしまった。刺したはずの私の手からは、すっと熱が引いていた。ボロボロになった身体は煤のように崩れていき、笑っていた口だけが、数秒の間、何かを言うように消えていく。肉がプツプツと焼ける音に不快な匂い。黒鵺からでていた。彼は膝から落ち、床に倒れ込んでしまった。


息がない。屍と化した黒鵺を、私と久遠、喧士がじっと見つめる。書籍を燃やし、異形を生むきっかけになってしまった。その罪は、幼い彼には重すぎた罪だった。彼の、彼なりの贖罪だったのかもしれない…。

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