おはよーっ!
バリバリの朝投稿ww
今回ちょっと太宰さん達がすれ違うかんじがな……?((一寸じゃない
Let’s Go!
「信頼」と云うものが判らなくなっても、私は此処から離れたくなかった。
道化の仮面をかぶり今まで演じ続けて来たと云うのに、結局私は“破滅”の道を進み、自らを地獄へと堕としていく。
然し道化でも、信頼という感覚は───確かに、確かに其処にあったんだ。
だからその感覚を思い出すべく、私は此処から離れたくない。
またあの時の空間を────日常を取り戻す為に、私は此処に居たい。
私は────此処に居ても佳い?
此処に居たいと────願っても佳い?
でも、そんな資格、私には無いよね。
***
その日、私は様々な準備をした。
与謝野女医に健康状態をはかってもらった上で、与謝野女医、社長、乱歩さんと共に、車やバスに乗ってある病院に向った。
長い事、椅子に座っていたのを憶えている。
辺りが薄暗くなった頃、其処に到着した。森の中の大きな病院だった。
総合病院なのかと思って玄関に這入った。
然し玄関から院内に這入ってみると、病院だからか妙にしんみりしており、その真っ白な空間に、私は不快感を覚えた。
そして微かな恐怖と不安も。
私はその病院の若い医師に、イヤにものやわらかな鄭重(テイチョウ)な診断を受けた。
廊下の待合席で、私はれいの若い医師と乱歩さん達が話し終わるのを待っていた。
「……………」
何も感じない。
本当に、ぽっかりと胸に穴が空いたようだ。
埋めて欲しい。
あの温もりで埋めて欲しい。
埋めてくれるだけで───傍に居てくれるだけで、私は何時も通りになれるんだ。
だから「っ!」口元を手で抑える。
今発しようとした言葉を、その名を、私は云わないようにした。
だって彼は、私を助けてくれなかった。
信頼してたのに。
信頼してくれている事を信じていたのに。
「………………ほんと大嫌い」
誰にも聞こえる事のない其の言葉は、辺りの物音にかき消された。
「太宰さん」
れいの若い医師が、私に話しかけて来た。
「暫く静療が必要です。病棟にご案内します」
そう伝えられ、私は乱歩さん達と別れた。
***
扉の前に立つと、医師が懐からカードキーを取り出し、扉の近くにあった機械に近付ける。
機械からピッと音がなる。大きな音を立てながら、鉄格子の鍵と扉が開いた。
私はソレを、静かに“見ていた”。
「それでは、此方です」
医師に案内される。
部屋には幾つかの隔離室があり、中には病人───否、狂人が居た。
此処に入れられるという事は、私も同じ狂人という事になる。隔離室の一つに案内され、ガチャンッと鍵がおろされた瞬間、私はその事に実感が湧いた。
ここからが、地獄のような日々の始まりである。
***
この病棟は殆どが男性患者しか居らず、看護師も男性しか居なかった。
そして、れいの若い医師は毎日はにかむような笑顔を浮かべて、私の所へ来て診療した。
女性の患者も、数人居た。
然しその内の二人が発狂し、五・六人の男性看護師によって連れてかれた。恐らく別の病棟に入れられた事だろう。
私が此処に這入ってから、敦君や国木田君、社員の皆が見舞い───否、面会と云った方が正しい。仕事の状況やその日の出来事を教えてくれたり、私の体調を心配してくれた。
皆が来てくれた。
その事に嬉しさを感じる訳ではなく、只々道化の仮面を付けて、私は話していた。
道化の仮面は、私が“唯一”理解できなかった「人間」に対しての最後の求愛だった。
けれど、結局誰も、私を愛してくれる人など居なかった。居たとしても、全員私の前から消えて行った。
この病棟には狂人しか居ない。
詰まり、此処には“狂人しか入れられない”のだ。
ならば私は狂人だろう。
たとえ、此処から出たとしても変わらず狂人───否、廃人だ。
あの時の私は、与謝野女医の言葉に「信頼」というものを抱かなかった。
だのに、あの言葉について深く判断せずに此処に来た。
疲れていたから?
もう何もしたくなかったから?
─────違う。
中也が、相棒が、傍に居てくれないからだ。
この虚無感を埋めて欲しいのだ。
私の胸に空く虚無感は周りの人間には存在しない。私にしか存在しないのだ。
それが、私は嫌だ。
でも中也なら、ソレを埋めてくれる。無い状態にしてくれる。
嗚呼…………何を考えているんだ私は。
中也は私の事など信頼していない。身を持って知った筈だ。
だのに何故こんなにも────
会いたい。
触れたい。
傍に居たい。
信頼して。
私を必要として。
生かすって云って。
「…………………」
全て私の本音だった。隔離室のベッドの上にうずくまる。
中也は決して、私に「生きろ」と云った事は無かった。
それは、中也自身も生きる辛さを知っているから。だから中也は最低限、「死なさない」か「生かす」しか云わなかった。
気遣いなのか、自然と出る言葉なのか、何方にしろ私はそれが佳かった。
それが心地良かった。
「…………」
苦しい。
息が詰まる。
此処から出たい。
疾く来てよ。
嗚呼……………………コレが「信頼」か。
結局私は君を信頼してるんだ、中也。
「────でも、此処から出ても私は結局…」
『________。』
“耳鳴り”が、突如私を襲う。
枕に顔をうずくめて、声を抑えた。
「っ、ゔ………ぁ…」
結局私は─────人間、失格。
出ても出なくても。この狂人が入れられる病棟───精神病院に入れられても、入れられなくても。
人間、失格。
私は人間ではないのだ。
人間になれなかった。なら私は何だ?非人間か?
抵抗もできない私、では聞こう。無抵抗とは罪なのだろうか?
判らない。誰が答えを教えてくれる?
きっと……………誰も、判らない。
「_______…」枕を抱きしめる。
私という存在が消えて逝く。壊れて逝く。
何故こんな所に私を閉じ込めたの?
皆の目から、私はそう見えた?
此処に居る者達と同じ───狂人に見えた?
酷い。
苦しい。
辛い。
「…………………………………此処から出よう」
掠れた何処にも行き場の無い声は、儚く消えた。
【この地獄のような部屋と、何も無い世界。果たして何方の方が悲惨か。或いは何方の方が幸せか。】
コメント
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うわ、なんかすごい(?) これからどうなっちゃうんだろう... 今回も素敵なお話でした!!