テヒョンside
骨髄穿刺という痛い怖い検査が終わって病室に帰ってきてからも、ジミナは長いこと泣きじゃくっていた。
「怖かったね〜。頑張ったねジミナ。」
僕は、しゃっくりが止まらない可哀想なジミナの背中をさすり、必死で宥めていた。
ようやく少し落ち着いてきて…
僕は、汗で額に張り付いたジミナの前髪を手で漉きながら、言った。
「ジミナ〜汗すごいねぇ。」
「ベトベトして気持ち悪いよぉ。ねぇ、シャワーしたいなぁ…ダメ?」
「う〜んジン先生に、今日はシャワーダメって言われたでしょう?だって、骨に針刺したんだから…。」
「そっかぁダメなんだ…ぐすん。なんか、寒くなってきちゃった…。」
「汗で身体冷えちゃったよね…このままじゃ風邪ひいちゃう。お着替えしよっか。」
「お風呂入りたいなぁ…おうちのお風呂。テヒョンはいいなぁ。僕だっておうちに帰りたいよぉ(泣)」
ぷーっと膨れっ面のジミナ。
「ジミナぁ〜そんな顔しないの…(汗)」
「だってぇ…」
僕はジミナの膨れたほっぺがかわいくて、両手でぷにぷに触った。
いっつも黙って我慢ばかりしているジミナが、そんな風に駄々をこねるのは珍しかった。きっと、検査のダメージが大きすぎて、悲しくなっちゃったんだと思う。
「ねぇジミナ、僕、家のお風呂には入ってないんだよ?」
「え…。なんで?」
「なんでって…ジミナが我慢してるのに、自分だけ湯船に入ってぬくぬくするなんて、やなんだもん。シャワーはもちろん浴びるけどね。」
「そ、そうなの?ずっと…?僕、そんなつもりじゃあ…」
「ジミナが退院してお家に帰ってくるまで、絶対に湯船には入らないって決めたの!…だからジミナ、早く帰ってきてよね、僕待ってるんだからね。」
「う、うん…。」
僕は、涙目でしょぼんとしているジミナの頭をポンポンした。
ずっと家にも帰れない、お風呂にも入れないジミナ。
いっぱいいっぱい我慢して…今日の痛い検査も、僕にしがみついて、泣きながら頑張ったんだよね。
口に出さないけど、内心は検査結果も心配でたまらない筈…。
僕はそんなジミナが可哀想で堪らなくて、少しでも、気分を変えてあげたかった。
「そうだ!お風呂は入れないけどさ…身体、拭いてあげよっか?」
「えぇ〜それならいい…恥ずかしいもん…また痩せちゃったし…。」
「ジミナ〜なんでそんなこと言うの〜?じゃあさ、顔と手足だけでも拭いてあげる。すっきりするよ?ね?」
「ありがと…ぐすん。」
給湯室で洗面器に熱いお湯を汲んで、急いで病室に持って行った。
「ジミナおまたせ〜。じゃあ、ベッド座ってやろっか。」
僕はジミナをベッドに座らせて、カーテンを閉めた。
ジミナは所在投げに、足をプラプラさせてた。
「顔から拭いてくね。」
固く絞ったタオルで、ジミナの小さな顔をそっと拭った。
沢山泣いたから顔は腫れぼったくて、涙の跡がついてる。
「次は手を拭くよ〜。お袖まくるね。」
しょぼんとベッドに座るジミナの動かない手をとって、袖をまくる。
ジミナの細い腕は注射や点滴の跡がいっぱいで、ところどころ紫色になっていて、とっても痛々しかった。
小さな白い手の指の間まで、丁寧に拭いた。
「ジミナの小指は短くてかわいいねぇ。」
「もぅ、気にしてるんだから、言わないで!」
また顔をぷーっと膨らませるジミナ。
「ごめんごめん!次は足拭くね。ズボンまくるよ〜。」
白くて細い太ももから足の先まで、優しく拭いていく。
「どう?ちょっとはすっきりした?」
「うん…ありがと…」
「やっぱりお風呂がいいよね…ごめんねぇ。そうだジミナ、いいこと考えた!ちょっと待っててね。」
「な、何〜?」
僕は急いで給湯室に行くと、大きめのバケツにお湯をたっぷり汲んで、ジミナの病室に戻った。
ジミナは重いバケツを持って戻ってきた僕を見て、驚いたみたい。
バケツのお湯に、アロマオイルを数滴たらしてと…。
「ジミナ、はい、出来上がり!」
「な、何するのぉ…?」
「お風呂は入れないけどさ…代わりに足湯、してみない?」
「……足湯?」
「そうそう。ここに足入れてごらん?」
僕はベッドに座っているジミナのズボンをまくって、足を入れるように促した。
怪訝な顔をして足を入れたジミナだったけど…
その瞬間、ジミナの顔は一気にほころんで、感嘆の声を上げた。
「ふわぁ〜〜〜…。気持ちいい〜。」
「そう?良かった!!」
「いい香り〜。あったまる〜。まるでお風呂に浸かってるみたいだよぉ。」
ジミナは目をつぶって気持ち良さそうに、ゆっくりと深呼吸してた。
「なんだかすご〜くリラックスする。生きてて良かったなぁって感じ。」
ジミナが喜んでくれたのが、僕は何より嬉しかった。
「そかそっか。ねぇ、また今度外出許可もらってさ、前に遊園地の後行った日帰り温泉行かない?」
「行きたい!露天風呂、気持ち良かったよね。」
足湯をしながら楽しくジミナとお喋りをしていたその時…
ジン先生が突然、病室に入ってきて、カーテンを勢いよく開けた。
「あ、ごめ!足浴してたのか…。ジミナ!骨髄の検査結果でたよ。全て正常。大丈夫だったよ!!」
…その瞬間、
ジミナはホッとしたのだろう。足はお湯に入れたままで、
「うわーーーーん。」
泣き崩れた。
口には出してなかったけど、検査結果をきくのが、どれだけ怖かっただろう。
それは、僕も同じだった。
「ジミナ〜良かったねぇ。怖かったよね。」
「うん…本当は、不安で不安でたまらなかった…テヒョン〜怖かったよぉ。うわーん。」
僕もホッとしたら、涙が出てきて…
泣きながら、ジミナをギューっと抱きしめた。
ジン先生は、そんな僕たちをポンポンして、声を掛けてくれた。
「良かったなぁ。先生もホッとした。ジミナ、痛い検査がんばってくれてありがとな。怖い思いさせて、ごめんな…。少しでも早く検査結果出るように、無理言って解析早めてもらったんだよ〜。」
「せ、先生、ありがとう…。」
僕は先生の気持ちが有難くて、安心して、益々涙が、止まらなかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!