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家族みたいな
あれは…何だったんだろう……。
ホームシック?(そもそも、帰る家もこの世界にはないのだからホームシックと言っていいのか分からない)を発揮してリヴァイ兵長の前でみっともなく大泣きして、吹っ切れてお部屋の前まで送ってもらって。
おやすみの挨拶と一緒におでこに……き…キス!
キスされちゃったよ!お母さん!お父さん!
あ、お父さんにこんなこと話したら、ものすごい形相ですっ飛んで来そう。
最初はちょっと気難しそうで怖いかもって思ってたリヴァイ兵長。
でもこの数ヶ月、調査兵団で過ごして分かった。
兵長は目つき悪いし潔癖だし口調も乱暴だけど。
ほんとはすごく優しくてあったかい人なんだ。
それでいて強い。
みんなが慕うのも分かる。
昨晩、机でうたた寝してた私にそっと自分の上着を被せてくれて、しれっと横に来て話を聞いてくれて。
堪えきれなくなって泣いてしまった私の涙を自分のハンカチで拭ってくれて。
頭を撫でてくれて。
嬉しい言葉もくれて。
すごく救われた。
突然この世界に来て、寂しさとか不安な気持ちを紛らわす為に必死に仕事をしてきたけど、ふとした時にマイナスな感情に押し潰されそうになってたから。
ここにいていいんだ、って改めて居場所ができた気持ちになれた。
私を保護して、メンタルケアもしてくれたリヴァイ兵長。
そんな相手が、私に…キス…!…したなんて。
どうしよう。
どんな顔で兵長に会えばいいの??
昨夜のことを思い出すだけで、耳まで熱くなってしまう。
「おっはよ〜!アンナ!」
『あ、ハンジさん。おはようございます』
厨房に入ってきた、今日も元気いっぱいなハンジさん。
「…ん?アンナ、どうしたの?元気がないし、なんだか顔が赤いような…… 」
いやだ、気付かれた…。
『いえ、な…何でもないですよ!』
誤魔化し方も下手だったんだろう。
そして何か思いついたようにズイッと私に近寄ってきた。
「ね、もしかして恋してる??」
『ひぇっ!?こっ…こい??』
私が慌てたのを見逃さなかったハンジさん。
「えっ、ほんとに!?当てずっぽうだったのに!誰!誰!?」
『ちっ…違います!リヴァイ兵長なんて関係ないですから………あ』
「えぇ〜〜!!リヴァイ!!??」
やめてよハンジさん!大きな声で!!
もうどうすることもできなくて、朝ごはんを作りながら仕方なく昨夜のことをハンジさんに話した。
「なるほどねぇ。リヴァイがねえ〜…」
一部始終を聞いたハンジさんがニマニマした笑みを浮かべる。
『おでこにキスとか、その…子どもの頃に両親からされたくらいで…、それ以外の、しかも男の人からされたのなんて初めてだったんです』
頬を赤らめながら話してくれたアンナ。
照れた顔も可愛らしい。
全く。リヴァイったらこんな“免疫”なさそうな子に何してんの。
でもあのリヴァイがキスねえ。おでこだけど。
面白いイジりネタできちゃった。
顔がニヤけるのが抑えられない。
『あ、でもこの世界って、仲間同士のハグとかのスキンシップって日常でありますか?』
「え?あぁ、うん、そうだね」
リヴァイに関してはしなさそうだけど。
するとアンナが急に何かを思いついたような表情を見せた。
『それなら、リヴァイ兵長の行動も大して深い意味はないですよね!調査兵団は私にとって家族みたいな存在ですから。兵長からしてもただの仲間とのスキンシップですよね!』
「えっ?ちょっとアンナ…」
そんな解決の仕方ある??
もうちょっとイジりのネタが欲しかったのに。
『なーんだ。昨夜考え込んでた自分、何だったんだろう。あ~スッキリした!』
ほんとにスッキリしたんだろう。
アンナはさっきまでとは打って変わって晴れやかな表情で鼻歌なんか歌いながら鍋をかき混ぜている。
ん〜。まあ、とりあえず見守るとしようかな。
リヴァイが一体どんな心境なのかも気になるし要観察だ。
巨人の研究以外に面白そうなこと見つけちゃった。
さ、これからどうなるか楽しみだなあ〜!
つづく