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「クリスマスは予定あるの〜?」
「…うん」
「え、あるの?!」
「なんで予定入れてるの?!」
『なんで予定入れてるの』ってそんなの僕の自由じゃんか…
「せっかくのクリスマス、凛と過ごさないの?!」
あ…そっちね。
「過ごすよ」
「え?!」
「何、もしかして私が知らないうちにもう約束してたの?!」
「うん」
「なら先に言ってよ〜!」
そう言いながら海琴は満面の笑みを隠せないまま。
ていうか先に言って欲しいのは僕も同じなのだが…
クリスマスのほぼ3日前の日。
海琴からメールが来た。
内容は『クリスマス “ カップル ” デートにピッタリなスポット7選!!』についてだった。
こんなの余計なお世話な気が…
そう思ったが、確かに畑葉さんと僕とでこういう場所には行ったことがない。
から、案外嬉しい情報なのかもしれない。
とりあえず行く場所のチケットやらなんやらを確認しておかなきゃな…
そう思い、僕はネットで水族館のチケットを2枚買った。
それ以外にもクリスマスメニューがあるカフェを調べたり、
イルミネーションの点灯時間を調べたり。
というかデートだと思ってはしゃいでいるのは僕だけかもしれない。
そう思ったが、調べているうちに『これ畑葉さん好きそう』とか『これ見たら満面の笑みになりそう』だとか僕の頭の中は畑葉さんに染まっていて、止めようがなかった。
「古〜佐くん!!」
そう言いながら合鍵を使って僕の家に入ってくる畑葉さん。
今日は12月24日。
待ちに待ったクリスマスデート…
いや、畑葉さんとクリスマスを過ごす日。
ところで畑葉さんは今日、
時間はあるのだろうか。
無かったら僕の考えているデートは無くなる。
「…なんか私に用?」
そんなことを考えながらでも、
瞳は畑葉さんの方を向いていた。
それのせいだろうか。
それのせいで『なんか用?』だなんて聞かれているのだろうか。
ただでさえデートだと思っている僕…
に声をかけるなんて…
僕の胸打つ速度は一気に上がる。
「今日って、時間ある…?」
思い切って聞いてみると
「古佐くんと過ごす以外、予定は無いよ?」
と言われる。
心の中の僕はきっとガッツポーズを決めているだろう。
「じゃあ今日一緒に、お出かけしない?」
「お出かけ?!」
「行く!!」
ピョンピョンと兎のように跳ねながら喜ぶ畑葉さん。
多分、心の中にいる小さい僕も同じ行動をしているだろう。
「ね、ね!!今どこに向かってるの?」
「内緒」
そう言いながら僕の人差し指を畑葉さんの唇に当てる。
今日は攻めた行動してやる…!!
そう決意の心を持ちながら。
「むぅ〜…」
『内緒』と言ったせいかそう言いながら拗ねる畑葉さん。
可愛い…
水族館。
近くのところにすれば良かったのに張り切りすぎて遠くの大きい水族館を選んでしまった。
畑葉さんが喜んでくれるのは同じだと思うけど、
見る場所が沢山あったら畑葉さんと居る時間も増えそう。
そう思って選んだ場所。
「ね、古佐くん!」
「なに?」
「私、古佐くんと一緒にお出かけするの好きだからいつか一緒に旅行とかしたいね!!」
「そうだね」
そんな会話を交わしながら電車の窓から過ぎ去る景色を眺める。
「うわぁ〜!!大きい!」
今日は跳ねてばかりの畑葉さん。
あ、やばい。
そう。
僕は今、重大な問題を思い出した。
それは畑葉さんへのクリスマスプレゼントを用意していないということ。
『プレゼントは僕です』?
いやいや、有り得ない。
カップルにもなってない人に対してそれはどうかと思う。
でも、まぁ…
今は楽しむことが優先かもしれない。
そんなことを考えながら畑葉さんと共に水族館の中へと歩みを進めた。
「古佐くん!!見て!!琥珀糖みたい!!」
そう言って最初に着いた場所はクラゲゾーン。
どこが琥珀糖?
そう思っていたが、すぐ納得する。
クラゲの水槽の中には鉱物などのオブジェが飾られていた。
それのせいで鉱物洞窟のようにも見えるし、
お宝が沈んだ海のようにも見える。
「わぁ!?」
いつの間にか少し離れたところに居る畑葉さんがそんな声を上げながら尻もちを着く。
「どうしたの?」
恐る恐る近づくと、
そのゾーンはクリオネゾーン。
そして畑葉さんの目の前に居るクリオネは餌を捕食する姿、
通称バッカルコーンの姿になっていた。
「怖い…」
涙ながらにそう言いながら僕に抱きついてくる畑葉さん。
ナイスクリオネ。
そう心の中で思いながらも
「レアシーンだよ畑葉さん!!」
なんて言う。
「そうなの?」
「うん、滅多に見られないよ!!」
「そうなんだ…」
「でも怖い…」
そう言いながら畑葉さんは小動物のようにクリオネに向かって威嚇のような睨みをする。
「こっちの方が可愛い…」
「透明なのに全然違う…」
そう言いながらクラゲゾーンではしゃぐ。
確かにクリオネの捕食姿を見た後にクラゲを見たら可愛いと思うかもしれない。
でも僕はあまりクラゲが好きじゃない。
なんかたまに水槽の中に千切れた触手が漂ってるのが嫌。
再生するからなんて事ないなんて聞くけど。
気分はあまり良くない。
そう心で独り言を零していると
「古佐くん!!クラゲ!!触手!!」
だなんて声を上げる畑葉さん。
あまりにもタイミングがよすぎる。
「畑葉さん、少し静かにしないと怒られるよ」
そう軽く注意すると
「…はーい」
と口を尖らせながら僕の方に向いていた体をクラゲの方へ戻す。
なんだかこう見たら親子の会話のようにしか見えない。