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さとみくんは少しずつ変わっていった


最初は返信が遅くなっただけだった

「ごめん今忙しくて」

そう言われれば、それ以上は何も言えなかった


会っていても、スマホを見る時間が増えた。

俺が話しかけても、


「あとで聞く」

「今その話じゃなくてよくない?」


声は荒くないのに、線を引かれているみたいだった。


前は、些細な話でも笑ってくれたのに。

前は、名前を呼んでくれたのに。


ある日、勇気を出して聞いた。


「……俺、なんかした?」


さとみくんは少し黙ってから、短く言った。


「別に」

「考えすぎじゃない?」


それ以上、会話は続かなかった。



隣にいるのに、触れられない距離。

好きなのに、邪魔者みたいな気分。


夜、ひとりで指輪を外しては、また戻した。

泣くほどじゃない。

でも、胸の奥がずっと重かった。


このままだと、自分が壊れてしまう気がした。


だから、俺の方から切り出した。


夜だった。

部屋の明かりはついているのに、空気が冷えていた。


「……少し、ちゃんと話したい」


俺がそう言うと、

さとみくんは少し面倒そうにしながらも、ソファに座った。


「今?」


「今じゃないと、言えなくなるから」


沈黙が落ちる。

時計の音だけが、やけに大きく聞こえた。


俺は、指先をぎゅっと握りしめてから口を開く。


「最近さ、俺……一緒にいるのに、ずっとひとりなんだ」


「……どういう意味?」


「話しても、ちゃんと聞いてもらえない」

「触れようとすると、避けられる」

「俺が何か言うたびに、邪魔してるみたいな顔される」


一つずつ、確かめるように言葉を置く。


「俺が悪いなら、直したい」

「でも、何が悪いのかも分からないままなのが、いちばんつらい」


さとみくんは目を伏せたまま、短く息を吐いた。


「……そんなつもりじゃない」


「じゃあ、どんなつもりだったの?」


問いかける声は、強くなかった。

責めるというより、縋るような声。


「忙しかっただけだよ」

「余裕、なかった」


「それ、何ヶ月も続いてる」


俺はそう言って、少し笑った。

自分でも驚くくらい、静かな笑いだった。


「俺さ、最近自分が嫌いになりそうだった」

「愛されてないって思う自分も」

「それでも期待しちゃう自分も」


さとみくんは、何も言わない。


「このままだと、俺……壊れる」


その一言で、ようやくさとみくんが顔を上げた。


「……別れたいってこと?」


俺は、少しだけ間を置いて、頷いた。


「嫌いになったわけじゃない」

「でも、このまま一緒にいたら、きっともっと傷つく」


「俺は……」


さとみくんが何か言いかけて、言葉を止める。


その沈黙で、十分だった。


「ごめんね」


俺はそう言って、立ち上がった。

指輪には、まだ触れなかった。


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