非力ながらも

目黒ー幸せだよね〜。

渡辺ーん。

目黒ー何も起こらないよね〜。

渡辺ーん。

目黒ー何？

渡辺ー何も？

目黒ーホントに？

渡辺ー幸せを噛み締めてる。

目黒ー翔太くんに何も起こらないの嬉しいね。

渡辺ーふふふ。

こんな幸せな会話をしていたのが、つい最近のこと。

なのに、今は渡辺は食べないし、眠れない。いつもの厄災がやって来た。目黒が気がついた時にはもう渡辺は疲れていた。

目黒ー言う約束したよね？

渡辺ー言ったら、お前にも被害が及ぶ。

目黒ー具体的に言って？

向井とサウナに行った帰り、やんちゃな男たち3人に絡まれた。

ナイフを出して来た。

咄嗟に向井を庇った。背中に熱いものを感じた。

男の1人が言う、「こんなに綺麗なら、男でもいい」渡辺を引き寄せようとする。向井が対抗して渡辺を守った。

別の男が言う、「こいつ目黒と仲良いじゃん、目黒を連れて来いよ」と。目黒を連れて歩いたら、女の子が寄って来るからと。

向井が「しょっぴー、相手にせんと帰ろ」と言った。お前は黙ってろと向井を殴った。流石に顔は避けた。

向井は渡辺を背中に庇い、男たちに対峙していた。

誰かが、警察を呼んだ。男たちは逃げて行った。

それが、先々週のこと。

男たちの1人が、渡辺の乗ったタクシーの後をつけた。家を特定された。それから家の周りで見る。

「こんなに綺麗なら、男でもいい」と言った男だ。

目黒が迎えに来て車に乗って出かけるのも、見ていた。

男ー目黒がよく来るじゃないか。

渡辺ー・・。

男ー仲良いんだろ、紹介しろよ。

渡辺ー断る。

男ー目黒に直接話してもいい。

渡辺ーやめろ。

男ーお前、ホントに綺麗だな、相手しろよ。

渡辺ー無理言うな。

この男はしつこい。

たびたびやって来る。そして、目黒を紹介するか、自分の相手をするか、毎回のように言う。

目黒ー俺が言おうか？

渡辺ーなんて？

目黒ー翔太くんに近づくな。

渡辺ーだめ、目黒が顔合わせたらだめ。

目黒ー俺なら大丈夫。ずっと付き纏ってるの嫌でしょ？

渡辺ー・・。

目黒ー翔太くん？

渡辺ー俺は守られてばかり？康二も怪我しながら俺を守った。今度は目黒に守れるの？

目黒ー背中に怪我したの聞いてないんだけど。

渡辺ー大したことなかったから。

目黒ー今は俺を守ってくれてるんだ？

渡辺ーお前を女の子と仲良くなるためのエサにしようとしてるから。

目黒ーそのために、翔太くんが嫌な思いしてる。

渡辺ー俺はいい。

目黒ー良くない。食べないし、どうせ寝てないでしょ？

渡辺ー俺はお前を守れないほど弱いか？

目黒ーでも、その男に言い寄られてるんだ？

渡辺ー無視してる。

その１週間後、渡辺の家に迎えに来た目黒の車。目黒が渡辺の家に入ったので例の男がイタズラした。

車体に釘で引っ掻きキズを付けた。

目黒ーやられた。

渡辺ーごめん。

目黒ー何のごめん？

渡辺ー俺が家に呼んで車から離れたから。

目黒ーその男も、しつこいね。

渡辺ー何とかする。

目黒ー冗談でしょ、翔太くんに何かあったら困る。

渡辺ーでも！

目黒ーだめ、車は俺のだし。

きっと、どこかで見ている。

2人のやり取りを笑って見ている。

悔しかった。目黒に迷惑かけてしまった。