がつ、がつ、と彼の肉欲がわたしを攻め立てる。
いつも十分過ぎるほどわたしが潤ってから挿れる彼にしては、性急で珍しい。
ベッドのうえの女はあえぎ、そんな彼の言動を受け入れている。
最奥を突かれるたび女のからだがバウンドする。
鏡のなかの女と目が合う。視覚的に、犯されている感じがする。こういうところの天井に鏡があることの意味を、わたしはからだで、知った。
激しいセックスを終えたあと。
身支度を整えるわたしに、彼が、言った。
「きみは、綾音がきみになにをしたのかを、おれが気づかないとでも思っているのか」
課長は、怒っている。
隠しごとをされるのが、嫌いな性格だ。
「……大したこと、ないし」とわたしはハイヒールに足を入れた。
「……綾音は、ちゃんときみに謝ったんだな。でなければ実家にUターンするつもりだが」
「……ごめんなさい、って言ってくれたよ、ちゃんと……」わたしは彼の目を見た。彼の正面に回り込み、
「わたし。分かる気がするの。綾音ちゃんの気持ち……」
「ん?」と彼は目を開く。わたしは彼の頬に触れ、
「こんなに魅力的なお兄さんがいたとして、突然現れた見も知らぬ女にかっさらわれたとしたら普通じゃいられない。頭に来るよ」
課長は、わたしの手に自分の手を重ね、
「綾音が、取り立てておれに好意を持っているとは思えないが。あくまで家族の範疇だ」
にぶいなあ、お兄ちゃんは。
わたしは彼の肉の薄い頬をつついた。
「わたし課長と出会えて変わったの。強くなったの。どんなことも乗り越えられるの。……だからいつかきっと。
綾音ちゃんにも認めてもらえるように、頑張るね……」
「莉子」課長がわたしを抱きしめる。
のみならず……。
「ん、課長、駄目ですってば」濃厚な接吻をわたしに与える。これをされるとわたしは腰砕けになってしまう。「もう服、着ちゃいましたから」
「脱げよ莉子。おれは、怒っている。
おまえひとりに背負わせていることを、怒っている」言いながら手早く課長はわたしを脱がせる。いつもながら器用だ。
「焦る、ことなんか、ないですよ、課長……んっ」ぎゅうっと乳房を掴まれた。
「これ、弱いんだよな」と課長は笑い、自分のワイシャツに手をかける。
さきにわたしを全裸にしたあとベッドに乗せ。
はだかになった課長が、わたしに覆いかぶさり
わたしの、中心に、入ってくる。彼と出会って初めて。
受け入れる喜びを知った。
性の悦びを知った。愛されることの意味を知った。
与えられたすべてを返してあげたい。
今日の課長は、やたら激しい。それでも順応するわたしのからだ。場所が場所ということもあり、声に遠慮などしなかった。すると課長は。
いったん引き抜くと、わたしを反転させ、腰を支え、おしりを突き出す体勢にさせる。
わたしの最も熱いところが、ひく、ひく、と失った彼を求め、震えている。
課長の強い、視線を感じればなおのこと。
「すげえ、濡れてる」
「言わ、ないで……」わたしは枕に顔をうずめた。
つう、と愛液が内腿を伝う。
課長に見られているということが、間違いなくわたしの感覚を引き出させている。
「舌がいい、それとも……どっちだ」
「課長が、……欲しいです」素直に正直な気持ちをいったのに。
課長は、わたしを思いっきり両手で開かせると、顔を突っ込んだ。
やわらかくてぬめぬめとしたところにざりざりとした感触。あまりの恍惚。自分を見失いそうになる……。
わたしは枕を噛み、耐えた。それでも彼の愛撫が止まるはずなどもなく。
限界まで、連れて行く。
「課長。わたし、もう、あ。あ」短い叫びとともにわたしは達した。
腰の後ろから背骨を電流が突き抜ける感触。自然と涙が頬をつたい課長が、それを拭ってくれた。直後。
彼は、彼自身を、わたしのなかにぐっと押し込めた。いまだ絶頂のさなかにあるわたしには、酷な行動だった。だが、からだは悦びとともに彼を受け入れる。
ぐったりとしたわたしの胸に手を回し上体を起こす。そうすると、課長を受け入れたまま密着する体勢となり荒ぶる彼の鼓動を背中に。呼吸音を耳の後ろに。熱い欲望を両の乳房に感じられる。
くい、と彼はわたしの顎に手をかけわたしの口内をもてあそぶ。彼は強弱をつけてわたしの二つの内側を攻める。強くするたび、わたしの内壁は躍動し。さらなる高みへと二人を、追いやる。
課長の熱いものに串刺しされている感覚が、わたしの被虐趣味を駆り立てる。
ある程度のところまで行くと。課長はわたしのからだを倒し無我夢中で追い求める。わたしもそれに、従った。といっても。
顔を横に向け、必死に叫ぶだけだけれど。
わたしはまたも達した。続けて課長が達すると、
「……莉子。おれ、もう、……おまえから、離れられない」
唇に、キスを与えた。
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