【能力者名】 姉ヶ崎茜色
【能力名】 クーネル•エンゲーザー
《タイプ:友好型》
【能力】 触れたものをひんやりさせる
能力
【以下、細菌達の記録】
《土曜日の午前十時、米津高校家庭科室にて》
「おねえちゃーん☆」
そう言って《ボランティア部》の一人、恋原表裏一体は姉ヶ崎茜色に抱きついた。
「わー、表裏一体ちゃん!!それにどろりくんに海街くんも今日はよろしくねー。」
やんわりと表裏一体を抱きしめ頭をよしよししながら姉ヶ崎はどろりと海街に挨拶をした。
「おねえちゃ…..姉ヶ崎先輩、そしてお料理クラブの皆さん。 本日はよろしくお願いします。」
礼儀正しいどろりはそう言ってお料理クラブのメンバー5人に挨拶した。
「…..どうも。」
他人にまるで興味のない海街はそっけなく 挨拶した。
「あっ、どろりくん。海街くん。今日は
よろしくね……..。」
お料理クラブのメンバーの一人でどろり達の
クラスメイトの白雪毒林檎は二人に挨拶した。
「へー☆白雪ちゃんもお料理クラブなんだー?えー、どうしよっかなー。ボクボランティア部辞めてお料理クラブに転部しよっかなー?」
白雪ちゃんに抱きつきながら表裏一体は
どろりの方をジト目で見てにやにや笑った。
「姉ヶ崎先輩達に迷惑をかけるのはよくない、かなしいことだ。」
どろりはそう言いながら表裏一体を鼻で笑った。
「はぁー!?ひっどーい!!!どろりの恥ずかしい秘密今ここでおねえちゃん達に言ってあげてもいいんだよー!?」
表裏一体はそう言ってどろりの恥ずかしい
秘密を話そうとした。
「えー、何々ー?」
お料理クラブのメンバーの一人で姉ヶ崎のクラスメイトの曽根近がいたずらっぽい顔で
それを聞こうとした。
「悪かった !!俺が悪かった表裏一体!!!!そう言うのよくない!!!!そう言うのほんっとによくない!!!!」
顔を真っ赤にしながらどろりは謝った。
どろりは表裏一体に逆らえなかった。
ありとあらゆる弱味を握られているからだ。
(早く帰りたい。)
と海街心蔵は思った。
《その後5分くらいの雑談タイム》
「はい、皆しっかり手を洗ったねー?…..
そしたら今日はアップルパイを作りまーす。どろりくんと海街くんは私と曽根近ちゃんと材料を混ぜて生地を作ってねー。」
朗らかにお料理クラブの部長姉ヶ崎は
言った。
「わかりました。」「 …..はい。」
「よろしくねー二人ともー。」
どろりと海街は曽根近ちゃんに挨拶をした。
「そして、表裏一体ちゃんは残りのメンバーと一緒に林檎のコンポートをお願いね。
包丁を使うから手をケガしないように気をつけてねー。」
「はーい☆皆ーよろしくねー!!」
そう言って表裏一体はお料理クラブのメンバーに元気よく挨拶した。
どうやら表裏一体は早々にお料理クラブのメンバーと打ち解けたようだ。
「アップルパイが完成したら顧問のロカ先生が紅茶を持ってきてくれるから皆でお茶会に
しようねー。」
姉ヶ崎がにっこりと笑いながら言った。
その時、ボランティア部三人の間に緊張が
走った。
三人はこの緊張を決して周囲には悟られないようにした。
「わー!!!お茶会楽しみだなー☆ボク楽しみすぎて踊っちゃう!!!」
そう言って表裏一体はキレッキレのダンスを
しながらハンドサインでどろりにこう問いかけた。
(どういうこと!!?ねぇどういうこと!!?ロカ先生がお料理クラブの顧問なんて聞いてないんだけど!!!?どうすんのさロカ先生にボク達の裏の《ボランティア活動》がバレたら!!!?)
表裏一体は決して表情一つ変えなかったが
内心は汗ダラッダラだった。
「えー、表裏一体ちゃんすごーい。Tiktok で流行ってるあのダンスじゃん。オリジナルの手の振り付けもかっこいいー。」
曽根近は感心して表裏一体のダンスを動画
で撮った。
「実は《ボランティア部》紹介動画のためにTiktok の撮影用に練習してたんですよ!!
ほら、こんな風にね!!」
そう言ってどろりも無駄にキレッキレなダンスを踊りながら表裏一体とハンドサインで
会話をした。
(落ち着け表裏一体、これも作戦の内だ!!!
ロカ先生は僕達一年生を警戒している!!!非公認の 《ボランティア部》なんて怪しまれるに決まってるだろう!!!ここは敢えてこちらからロカ先生に接近して警戒を解くんだ!!!!)
「どろり君もすごいねー、手の動きとかも
キレッキレでプロみたーい。後でおねえちゃんにもそのダンス教えてー。」
そう言って姉ヶ崎茜色は微笑ましそうに
笑った。
そんなこんなでアップルパイ作りがスタートした。
【特殊ミッション 美味しいアップルパイを作れ!! &ロカ先生に嘘を突き通せ!!】
《どろり&海街&曽根近&姉ヶ崎チーム》
改めて手をしっかりと洗ったどろり達は
早速、アップルパイの生地作りに取り掛かった。
「わー、どろりくん生地混ぜるの上手だねー。」
そうやって調理用エプロンをつけた姉ヶ崎はどろりを褒めた。
「いやー、どうもー。混ぜるの好きなんでー。」
どろりは姉ヶ崎の言葉に照れながらも器用にパイ生地をまぜまぜした。
「うん、そうそうそんな感じー。初めてにしてはいい感じだよー。」
曽根近ちゃんはそうやって海街を褒めた。
海街ははじめてのお菓子作りに苦戦している
ようだった。
(……くっ、こんな手間かけなくても、コンビニとかケーキ屋行けばおいしいアップルパイが買えるのに …….!!!)
海街はそんな身も蓋もないことを 考えながらパイ生地をまぜた。
どろり達が生地をまぜ終わった。
生地を冷蔵庫で冷やしながらどろり達はお昼休憩をとり、雑談をした。
【二時間後】
「パイ生地もいいかんじだねー。おりゃー、《クーネル•エンゲーザー》。」
そう言いながら姉ヶ崎は自らの触れたものをひんやりさせる能力《クーネル•エンゲーザー》で生地を冷やしながらめん棒と手でパイ生地をこねた。
お菓子作りに慣れているのかその手際の良さは見事なものだった。
「とりゃー、《ミルククラウン•オン•ソーネチカ》。」
曽根近はそう言いながら自らの牛乳を使った料理をめちゃくちゃ美味しくする能力
《ミルククラウン•オン•ソーネチカ》で
パイ生地をめちゃくちゃ美味しくした。
二人の能力者の手によって、そのパイ生地は
極上のパイ生地へと”成”った。
《一方、表裏一体達リンゴのコンポートチーム》
「白雪ちゃん助けてー!?リンゴの皮剥いてたらリンゴが無くなったー!! !これ能力者の攻撃かなー!!?」
芯だけになったりんごを手にもちながら
表裏一体はあたふたした。
表裏一体はこれまでほとんど包丁を握った
ことがなかった。そのため料理センスが壊滅的だった。
「落ち着いて表裏一体ちゃん……。こうやってあらかじめりんごをカットしてから剥いた方が最初の内はやりやすいよ。」
そうやって白雪ちゃんはトントンとりんごを八等分し、綺麗にりんごの皮を向いてみせた。
「白雪ちゃんすっごーい☆」
「えへへー。」
そう言って白雪ちゃんと表裏一体は笑いあった。
「失敗した林檎とか生ゴミはあたしの
《ジャバヲォッキー•ジャバウォッカ》で
生み出したウパちゃんに食べてもらうから
気にせずガンガントライしなよー。」
米津学園の清掃委員長にしてお料理クラブ
の二年生烏屋茶茶茶が能力で三十センチのウーパールーパーのような生き物を産み出し、肩に乗せながら言った。
こうして表裏一体達はワイワイ雑談をしながらリンゴのコンポートを作った。
《ロカ先生vsボランティア部》
オーブンから甘くて香ばしいアップルパイのいい香りがした。
「はい、完成ー!!出来立てのアップルパイだよー。熱々だから冷やしたい人は私に言ってねー。」
そう言って触れたものをひんやりさせる能力、《クーネルエンゲーザー》を持つ 姉ヶ崎茜色は皆にアップルパイを切り分けて 配った。
その時、ガラガラと家庭科室のドアが開く音がした。
「お疲れ様、皆。ダージリンティーの茶葉を持ってきたわよ。」
お料理部の顧問にしてどろり達の宿敵、
ロカ•タランティーネがティーポットを片手にやって来た。
「あ、ロカ先生お疲れ様です!!」
そう言って姉ヶ崎茜色はロカ先生に挨拶した。
ロカ先生は198cmある体を少し屈めながら姉ヶ崎からアップルパイを受け取った。
「あら、今日はどろり君達も一緒なのね?」
そう言ってロカ先生はどろり達ボランティア部を見渡した。あくまで柔和な表情。しかし、その表情の裏にわずかばかりの疑念と
警戒の感情が隠されていることを勘の鋭い
どろりは察知した。
「それじゃ、皆もお菓子作りで疲れたでしょう?」
「皆でお茶会にしましょう。」
そうやってロカ先生は冷ややかに笑い上品に紅茶を淹れた。
お料理クラブのメンバーと《ボランティア部》の三人に丁寧に紅茶を配った 。
かくしてお茶会の体を装ったロカ先生による《ボランティア部》への尋問が、始まるのだった。