💙翔太side
💙いや、忘れてたあああああ!!!
アラームで目が覚めた直後、今日のスケジュールを確認し、俺は叫んだ。
事前に配られているスケジュールによると、今日は朝からよりによって涼太と二人だけで雑誌の取材を受ける予定になっていたのだった。
芸能人の幼なじみ特集とやらで、二人で何枚か写真を撮り、インタビューに答える企画だ。
先週マネージャーから説明を受けていたのに、すっかり忘れていた…。
昨日の今日で涼太に会うのはさすがに気まずい。
気まずいけど、仕事なら仕方がない。
俺は行きたくない気持ちを抑え、ため息まじりに支度をして、取材場所まで向かった。
足が鉛のように重い……
💙おはようございます、今日はよろしくお願いします。
雑誌の編集者やカメラマンに挨拶をして楽屋に入ると、既に涼太はそこにいた。
💙おはよ…
❤️おはよう
……なにこいつ、ふつーだ。
涼太は昨日のことなど何事もなかったように俺に挨拶してきた。
……なんだかイラッとする。
俺だけ、気にしてるみたいじゃん。
だから、言ってやった。
💙昨日は随分とお熱かったみてぇだな…
❤️そう?
💙手なんか繋いじゃって…
❤️……
涼太はじっと俺を見返し、
❤️そうだね、繋いだね
と平然と答えた。
💙ちぇっ、、、からかいがいな。おもんなっ!
なんだよ、全然照れねえじゃん。
自信満々かよ。
そんなに阿部ちゃんが大事かよ。
俺がつまらない気分になって不貞腐れていると、涼太は静かに言った。
❤️翔太
💙なんだよ?
❤️自分はどうなの?
💙は?
❤️目黒とキスしてたよね?
💙なっ……!!!
コンコン。
タイミングよく?
楽屋のドアがノックされ、スタイリストさんたちが入ってきた。
俺たちは話すのをやめた。
涼太には隠していたが、内心、俺はめちゃくちゃ動揺していた。
脇汗がハンパない。
なんで????
なんで涼太が目黒とのこと知ってんの?
目黒が話したの???
くっそ、あいつ、何考えてるんだよ。
涼太に相談でもしたのか?
死ぬほどやりづれぇじゃん、今日…
それからは涼太に問いただす隙もなく、メイクやヘアセットをし、衣装に着替え、すぐに撮影が始まった。
写真撮影が一通り済み、続いてインタビューが始まる。
俺が代表して俺たちの幼なじみの定番エピソードを披露していると、記者さんが
「お二人はやはり他のメンバーさんより仲が良かったりするんですか?」
と聞いてきた。
💙仲良いですよ
❤️いや全然
ほぼ同時に正反対の返事が返ってきたので、記者さんがびっくりしている。
そして、さっきまでほとんど黙っていた涼太がいきなり口を挟んできた。
💙おい!
❤️だって普段俺たち別に遊んだりもしないし、絡みないじゃん
💙それは…
❤️お互い別の仲の良いメンバーといることの方が多いですね
「仲の良いメンバーと言いますと?」
❤️翔太だったら目黒とかですかね(ニコッ
そう涼しい顔で答えると、涼太はそうでしょ?とでも言いたげに俺の方を見ている。
こいつ………💢
💙り、涼太も阿部ちゃんとよく話してるよな〜?
❤️阿部くんとは仲良くさせていただいてます(ニコッ
一瞬慌てた俺と違って涼太は顔色ひとつ変えない。
憎たらしい。
一人でどぎまぎしてる俺がバカみたいじゃないか。
それでも記者さんに俺たちの仲が悪いという印象を与えないように俺は必死でフォローし、その後は涼太も少しは物腰柔らかい感じで応対したので、場はだんだんと収まっていく。最終的には無事に和やかなムードで取材は終了した。
やれやれ…なんとか終わってよかった……
俺は個人的に非常に嫌な汗をかいたけど…
そうして鈍感な俺にもようやくわかったことがある。
涼太は、理由は不明だが、なぜか俺に怒ってるってこと。
本当に意味がわからないんだが…。
❤️涼太side
今日、翔太と二人だけの仕事があることはひと月以上前からわかっていたし、あんなことさえなければ本当に楽しみにしていたのに。
俺は朝から沈んだ気分で、でもこれは仕事だと割り切ることでなんとか現場に顔を出したのだが…
💙昨日は随分とお熱かったみてぇだな…
カチン。
…この一言で完全に理性を失ってしまった。
今さら何?
何なの??
お熱いのは翔太の方だろ、と言いたい。
翔太は悪くない。
俺だって頭ではわかっている。
翔太は悪くないけど、少しは考えてみてほしい。
10年以上片想いしている想い人に全く相手にされず、あまつさえ、いきなり現れた他の男に奪われる身にもなってみろ。
それもこれも…俺が気持ちを伝えるのが遅かったから……
そう思って我慢していたのに…
❤️自分はどうなの?
💙は?
❤️目黒とキスしてたよね?
つい、言ってしまった。
しまった、と思ったけどもう遅い。
発した言葉はもう元には戻らない。
一生言うつもりはなかったのに、どうしても翔太の前だと冷静でいられなくなる。
ふいをつかれた翔太は目を丸くして、そして顔を真っ赤にして何か言い返そうとしていたが、同じタイミングで楽屋にスタイリストさんたちが入ってきたせいでそのまま話はうやむやになってしまった。
その後のインタビューの間中、俺の頭の中はやり場のない怒りと悲しみと後悔とがごちゃごちゃになり、表面上の平静を装うのに苦労した。
そしてそれでもやはり興奮がおさまってなかったのか、記者さんの質問に今は別に仲良くないという答え方をしてしまったのだった。
俺ってこんなに心が狭かったのか……
突然の目黒の出現で間違いなく心が乱されている。
せっかく阿部という癒しを得たのに、これじゃ堂々巡りじゃないかと自分でも呆れる。
取材後、翔太はずっと俺を見ているが、俺ももう引っ込みがつかない。
今さら謝るのも変だし、わざわざ話し合うことでもない。
何か言いたげにこちらをずっとうかがっている翔太の視線を感じながらどうしたものかと考えているとスマホが鳴った。
💚もしもし?
❤️もしもし
💚あ、もう取材終わった?
❤️ああ、今終わったとこ…
阿部からの着信だった。
そのまま俺は席を立ち、部屋を出た。
背中越しに翔太の視線を感じながら。
俺のこのもやもや、早く吹っ切れればいいのに。
コメント
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くうぅぅぅ…すれ違ってるぅ… 上手くいってくれいっ( ߹꒳߹ )