テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
77
#💎🫧🎧
マリン.
130,988
学校帰り、私は家の近くの公園の前にピンク色のなにかが落ちているのを見つけた。
「なんだろう」
拾い上げると、最新機種のスマホだった。ケースはラメが入ったピンク色のものでかなり派手だ。おまけにゆるキャラのキーホルダーが三つもついている。
交番に届けようか迷ったけれど、あることが頭によぎった。
これSNSに載せたらバズるかも?
この間も電車の中に落ちていた鍵を拾った人がSNSに載せてバズり、持ち主に届いたということがあった。
ちょっとした好奇心から、私は拾ったスマホを持ったまま公園に入った。
自分のスマホのカメラアプリをつけて、拾ったスマホを左手で持ち上げる。
正面と裏面を撮影して、自分のアカウントを開く。
#拡散希望 #落としもの
というタグをつけて、画像とともに投稿した。
わずか一分で、通知が鳴り止まなくなる。
「すご!」
想像以上の反応に私は口角が持ち上がった。
もう三桁も拡散されてる。フォロワーも増え始めて、他の投稿にもいいねがつく。
ちょっと有名人になった気分だ。
すると、いくつかリプライがつき始めた。
【ここ芝丘公園じゃね?】
指摘にひやりとした。特徴的なものがないから大丈夫だと思っていたけれど、知っている人にはバレてしまったみたいだ。
慌てて投稿を削除して、私はベンチから立ち上がった。
せっかくバズったのにな……。でも誰かがこの公園に来たらと思うと怖い。私は拾ったスマホをカバンの中に押し込んで公園を出る。
やっぱり交番に届けよう。
ブブッとスマホが振動する。DMが届いていた。
嫌な予感がして、おそるおそる開いてみると、【消しても無駄だよ】というメッセージだった。
【拾ってくれてありがとう】
【今すぐ行くね】
連続で届いたDMに肌が粟立つ。
早歩きでその場から離れる。私は人が多い駅まで辿り着くと、ほっと息をつく。ここまでくれば流石に大丈夫なはず。
念の為、DMをもう一度確認してみる。さっきの人からは届いていない。その代わり、別の人から届いていた。私を心配するような内容が書いてあった。
【先月インフルエンサーのミノちゃんのスマホと似ているかもしれないです。気のせいかもしれませんが……それにミノちゃんも失踪する前に似たような経験をしていたんです】
ミノちゃん?
検索をかけてみると、ミノちゃんという人の記事が出てきた。
<失踪したインフルエンサー ミノちゃんの謎>
記事にはミノちゃんという美容系インフルエンサーが、ある日誰かのスマホを拾ったと配信中に言って、拾ったスマホを見せていたそうだ。そしてその翌日、ミノちゃんが失踪した。
いまだに行方がわかっていないそうで、捜索願いを出しているらしい。
記事の最後に載っていた当時の配信の画像には、ピンク色の長い爪をしている女性が、拾ったというスマホを手に持っていた。
……状況は確かに私と似ているけど。そこまで気にする必要ななさそうだ。
ふとカバンの中で、なにかが振動していることに気づいた。
私のスマホは手に持っているから違う。
つまり……あのスマホだ。出ちゃダメ。
直感的にそう思って、そのまま交番に駆け込むことにした。
「え……?」
腕を誰かに掴まれて、私は顔を引き攣らせる。
冷たい指先が、私の手首に食い込んだ。それはカバンの中に押し込んだはずの、あのスマホの画面から這い出していた。
「ひ!」
助けて!と叫んだはずなのに、喉から音が出ない。駅のホームを行き交う人々は、スマホの画面を見つめたまま、私の異常事態に誰ひとりとして気づかなかった。
いや、やめて……!
腕を引っ張られ、そのままスマホの中に引き摺り込まれる。
『拾ってくれてありがとう』
声と一緒に、スマホの画面の奥から血まみれの手がもう一本伸びてくる。それは、あの記事に載っていたミノちゃんと同じネイルをしていた。
誰か……助けて。
私の手に持っていたスマホが地面に転がった。
コメント
1件
読ませていただきました。SNSでバズりたい気持ちから拾ったスマホを載せてしまう――すごく現代的な怖さで、最初の軽いノリからじわじわと不気味になっていく展開にゾクゾクしました。最後の「ミノちゃんと同じネイル」の描写、背筋が凍りました……続きが気になります!