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羽海汐遠
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おちゃ @卒業まであとわずか!
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作者コメント┊︎ ラテちゃんは猫である
みぅだよ🤍🥀 第四十話読んだよ〜。 ラテが猫に「ねた?」って聞いて、返ってきた「ねた。」にビビるシーン、めっちゃ可愛かったにゃ……! あの一瞬で空気が変わったのが伝わってきたよ。鈴凛が「半神になりかけてる」って言ったときの重みとか、ラテが自分と重ねて見てる感じが切なくて。 最後に鈴凛が「言い過ぎたアル」って謝るの、不器用だけど確かに受け入れてるって伝わってきてじーんとした……。猫がちゃんと帰る場所を見つけられて、本当に良かったね🌙
薄く差し込む朝日が、瞼の裏を橙色に染めていた。
「……あれ……。」
ラテはゆっくりと目を開け、寝ぼけ眼で辺りを見回す。
「ふわぁ……寝ちゃってたにゃ……。」
昨夜、猫の傍にいるつもりが、そのまま眠り込んでしまっていたらしい。
「ぬぐぐぅ………よいしょ…っとにゃ…。」
体のあちこちが、床の硬さを訴えていた。
「……すっかり雨も止んじゃったにゃ。」
窓の外は、嘘のように晴れ渡っている。
昨夜の激しい雨音が幻だったかのような、澄んだ朝の空気だった。
ラテはしばらくぼんやりと傍らで丸まって眠る猫の寝顔を見つめていた。
「みんな集まったかい?」
時期に倉庫の外からフローの声が響いてくる。
「まだルカとラテがいないアルよ。」
鈴凛が眠そうに欠伸を噛み殺しながら答えた。
「あ、ルカくんなら私とソフィアちゃんで起こしに行ったけど、全然起きなかったんだよね……。」
ニアが困ったように肩をすくめる。
「そっとしておいてあげよう。色々と疲れただろうしね……。」
フローが苦笑気味に言うと、倉庫の戸を開ける。
その場に集まった皆の視線が、自然とラテの方へ向いた。
「えっ!?ラテちゃん早いね〜。」
ニアが驚いたような表情でラテを見る。
「えへへ…うっかり倉庫で寝落ちしちゃったにゃ……。」
「……猫ちゃん、ちゃんと寝たかにゃ……?」
ラテが猫の頭をそっと撫でながら尋ねる。
「ねた。」
「にゃー、それは良かった……にゃ……?」
一拍置いて、ラテの表情が固まる。
返ってきたのは、確かな言葉だった。
「にゃーー?!?!」
弾かれたように飛び上がり、盛大な悲鳴を上げた。
「ど、どうしたんだいラテくん……?」
フローが驚いて駆け寄る。
「また何か見つけたの……?」
ソフィアも不思議そうにラテを見る。
その時、倉庫の戸がガラッと開いた。
「な、何事ですか……!?」
「朝っぱらから何よ……!」
テルとリーナまでもが騒ぎを聞きつけ、駆けつけてきたのだ。
「って……何よ、大集合じゃないの……。」
リーナが倉庫の中を見回し、怪訝そうに眉をひそめた。
「ご、ごめんにゃ……。」
ラテは慌てて口を押さえたが、興奮はまだ収まらない。
「で、でも!い、今猫が……。」
「……猫?」
テルが不思議そうに首を傾げた。
「なんでもないアル。埃を猫と見間違えただけアル。」
鈴凛がすかさず割って入り、平然とした顔で誤魔化す。
「う、うん!テルさんとリーナちゃんは戻って大丈夫だよ。」
ニアも慌てて調子を合わせた。
「……なんか隠してるわね……?」
リーナが訝しげに目を細める。
それでも、これ以上は踏み込まないことにしたのか、小さく息をついた。
「……わかりました……。」
テルも渋々といった様子で頷く。
「また何かあったら呼んでくださいねー。」
「はぁ、ここ埃っぽいんだから早く出てきなさいよ。」
リーナは名残惜しそうにもう一度倉庫の中を見やってから、踵を返した。
「それじゃ。」
二人の足音が遠ざかっていくのを、皆は息を潜めて見送った。
「あぶなかった〜……!」
ニアが胸を撫で下ろす。
「ほぼバレてたけどね……?」
ソフィアが苦笑を浮かべた。
「ごめんにゃ……びっくりしすぎて……。」
ラテはしゅんと肩を落とす。
「……で、結局なんで叫んだアル……?」
鈴凛が改めて問い詰めるように腕を組んだ。
「そ、それが……。」
ラテは深呼吸を一つしてから、皆の顔を見回した。
先程起こったこと…猫が喋ったことを、正直に話す。
「ね、猫が喋った!?」
ニアが素っ頓狂な声を上げる。
「えぇ〜…?ほんとに?私には聞こえなかったけど……。」
ソフィアが猫の方を覗き込みながら、首を捻った。
「ほ、ほんとにゃ!ちゃんと『ねた。』って聞こえたにゃ!」
ラテは必死に主張する。
誰にも信じてもらえない不安が、その声に滲んでいた。
「……猫又が喋るっていう話は聞いたことがあるけれど……」
フローが顎に手を当て、思案げに呟く。
「ラテくんだけが聞こえるというのは少し奇妙だね……。」
「……ラテ、その猫又の声…どういう風に聞こえたアル?」
鈴凛が鋭い目つきで尋ねた。
「……思えば……あれは耳じゃなくて……脳……にゃ……?」
ラテは記憶を辿るように、こめかみのあたりを指差した。
「…猫ちゃん、わたしに話しかけてみて?」
ニアが猫の前にしゃがみ込み、期待を込めた目で見つめる。
「にゃーん。」
返ってきたのは、ただの鳴き声だけだった。
「……この子、ラテくんに凄く懐いていたし……人を選んでいるのかもしれない。」
フローがその様子を見て、静かに考察を口にする。
「わたし怪我治してあげたのにぃ……。」
ニアが悲しそうに猫を見つめた。
「猫同士気が合うんじゃない……?」
ソフィアがからかうように笑う。
「……この猫又、半神になりかけてないアルか?」
その時、鈴凛がぽつりと呟いた一言に、場の空気が一変した。
「にゃ……?」
ラテが目を丸くする。
「…え、それって……。」
ニアも息を呑んだ。
「見ろ、……しっぽが変色してるアル。」
鈴凛が猫の二股に分かれた尾を指差す。
よく見れば、根元から先端にかけて、うっすらと光を帯びたような色合いが滲んでいた。
「……本当だね……気が付かなかった……。」
フローも身を乗り出し、驚いたように目を見開く。
「…人間は半神がいる空間と長くいると、半神に変化する可能性が高まるアル。」
鈴凛は淡々と、しかし確信を持った口調で続けた。
「これは人間だけじゃなくても、命あるもの全てに言えるアル。」
「……。」
ラテは言葉を失ったまま、じっと猫を見つめていた。
かつて、自分自身がそうだったように――ただの猫が、少しずつ何か別のものへと変わっていく。
その事実の重みが、じわじわと胸に染み込んでくる。
「リンちゃん……この子がもし本当に半神になりかけてたら……。」
ラテはおずおずと、それでいてどこか縋るように鈴凛を見上げた。
「……まぁ……間違いなくこの屋敷で保護アルね。」
鈴凛はあっさりと、しかしきっぱりと言い切った。
昨夜あれほど反対していたはずのその声に、迷いは欠片も感じられなかった。
「にゃ……!」
ラテの顔が、ぱっと輝く。
目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「ひ、ひとまず……テルくんたちに報告しよう。」
フローが皆を見渡し、少し照れくさそうに咳払いをする。
「話はそれからだ。」
朝の光が差し込む倉庫の中、小さな毛布の上で、猫はまだ何も知らないまま、大きな欠伸を一つした。
◇
「ラテさんやってくれましたね……?」
テルが呆れとも安堵ともつかない表情で、そっと息をついた。
「まったく、早めに報告しておけばこんな面倒事にはならなかったのに……。」
リーナも腕を組み、やれやれといった調子で肩をすくめる。
「ご、ごめんにゃ……。」
ラテはしゅんと耳を伏せ、小さくなった。
「昨日から謝ってばっかりにゃ……。」
その呟きには、疲れと少しの苦笑が滲んでいた。
「まぁ、もう過ぎたことはいいわよ……。」
リーナはそう言って、あっさりと矛を収めた。
「村長がティモシーさんで良かったですよほんとに。」
テルが胸を撫で下ろすように呟く。
融通の利かない村長だったら、事はもっとややこしくなっていたに違いない。
「色々終わったらちゃんとした寝床作らないとだね!」
ニアが早くも次の算段を立てるように、明るい声を上げた。
「そうだね。丸く収まったみたいで本当に良かったよ……。」
フローも安堵の笑みを浮かべる。
長い夜がようやく終わった、という空気が、皆の間に緩やかに広がっていた。
「……そうなんだ。」
寝ぼけ眼でようやく合流したルカが、状況を呑み込みきれない様子で相槌を打つ。
「ルカくん寝てたからね……。」
ソフィアがくすりと笑いながら、簡単に事情を説明してやっていた。
その輪から少し離れたところで、鈴凛がラテのもとへと歩み寄る。
「……ラテ。」
「…リンちゃん?どうしたのにゃ?」
急に名前を呼ばれ、ラテは目を瞬かせた。
「あの時は……ちょっと言い過ぎたアル。」
鈴凛は視線をわずかに逸らしながら、ぼそりと言った。
素直に謝るのが得意ではないのか、その口調はいつもよりぎこちなかった。
「にゃ?」
ラテは一瞬きょとんとしてから、すぐに首を横に振った。
「…にゃ!全然気にしてないにゃよ。」
「いや……気にしてないって言ったら嘘になるけどにゃ……」
正直に言い直しながら、ラテは照れくさそうに笑う。
「でも、もう大丈夫にゃ!」
その笑顔には、昨夜の重苦しさはもうどこにも残っていなかった。
「……はぁ、それなら良かったアル。」
鈴凛はほっとしたように、小さく息を吐いた。
「リンちゃんこそ、猫ちゃんを飼うことには抵抗ないアル?」
ラテがそっと尋ねる。
「自我ができたのなら、暴れることもないと思うアル。」
鈴凛は倉庫の方へ視線をやりながら、淡々と答えた。
「簡単に言えば……ラテと同じようなやつが増えるだけだから問題ないアル。」
その言い方には、不器用なりの受け入れの気持ちが滲んでいた。
「それなら良かったにゃ!」
ラテは満面の笑みを浮かべる。
朝の光が差し込む庭先で、皆の笑い声が久しぶりに賑やかに響いていた。
傷ついていた小さな命は、今度こそ本当の意味で、帰る場所を見つけたのだった。