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なるほど。冥界か。そこに行けば望叶さんを何とかできるヒントを見つけることができるかもしれない。見に行ってみよう。しかし行き方が分からない。
「幸呼奈。方法ならある。俺が呼んでみよう」
例の冥界の入り口となっている木の前に皆で向かった。茉津李が木と手を合わせる。茉津李の体には強い霊力が宿っている。ひょっとして霊媒でもするというのか。いや、よその家の次男に自分たちの三男が宿るって望叶さんたち複雑意外の感情なくないか?私には霊感などないが、彼らの間を霊力が流れていることを感じる。しばらくしていると木が光を放っていく。やがて誰も目を開けていられないほどの光が村を包んだ。それと同時に目の前は真っ暗に……
「望夢さーん!助けてー!」
目を開けるとそこは川だった。上に月が浮かんでいる。ここはまさか……冥界!
「来ちゃった!」
この世界に望夢さんもいるかもしれない。顔もほとんど覚えていないが、宮籐家やお姉の記憶を頼りに色々なところを探し回る。探し回った先でたどり着いた先。目の前に花畑。一面にゆらゆらと煙る赤。これが……今回の事件で使われようとしていた……血の花……そしてこの川の先。その川の上流で待ち構えている人がいた。水平線の向こうに何かが見える。青白い人が空を見上げている。腹部からは血が流れているようだ。
「望夢さん!」
「え?みんな?」
やはりか。望夢さん。腹部の血は生前、自分の血の花に呪いを封じ込めた時のものだろうか。
「まずなんでみんながここにいるのか教えてほしいんだけど 」
「実はカクカクがシカジカしちゃって……」
「えっと……カクカクがシカジカって何?」
大抵はこれで何故か伝わる流れではないのか。まあ伝わる他の人たちの方がおかしいのだろうが。カクカクシカジカを話した。
「え!望叶が⁉︎」
「そうなのよ」
お姉が答える。この人は死んだ幼馴染に会えたというのに何故こうも肝っ玉が据わっているのか。
「みんながとんでもないことになってるんです」
「分かりました。こうなったら、やるしかありませんね」
「やるって……方法があるんですか?」
「ある」
「何ですか?」
そういえば彼はかなり痩せている。あまり健康と表現できる雰囲気ではない。ガリガリで、どこか病人めいている。
「肉親から集めた血の花の花びらをちぎり、それを蘇らせたい人の血の花に植え付け、そこから仮初めのエネルギーを吸い上げさせることによって生きながらえさせる禁断の術。それが死者蘇生だ。あの羽菜っていう子に僕の血を飲ませようとしてたのもその死者蘇生の一貫だろう」
「そういう状態だったんですね」
一歩間違えば羽菜ちゃんは望夢さんの一部にされようとしていたというのに当たり前のように納得している磨輝。望夢さんから話は続く。望叶さんに会わせてほしいという。
「でも異能もない望叶さんをどうやって?」
この村での死者との交流というのはあくまで交信のようなもので直接は会えていない。
「幸呼奈。君にはこの世界(冥界)の花を一輪だけやる。すると……無能力者でも1時間だけこの世界にいられる」
1時間!冥界を茉津李と望夢さんに任せてそして現世に向かった。
「望叶さん!来てください!」
「え?」
望叶さんの手を握って冥界の入り口……あの木の前へ来た。
「ちゃんと話してきてください」
「わっ!」
彼女に少しだけ素直になれる力を注いで背中を押す。ついに望叶さんと望夢さんを合わせることに成功した。
「望叶」
「……?え……?のぞ……む……?」
まだ理解には程遠いのだろう。ただただ唖然としている。しかしその困惑は怖いからではない。あとは望夢さんに任せよう。
「今、みんなから何してたのか聞いたよ。何やってんだよ。バカ望叶」
「ごめんね、望叶……」
泣き崩れる望叶さんを優しく抱きしめる望夢さん。
「でも……どうしようもなかったの……!望夢は呪いを飲み込んでるからあの木からの交信もできなくて……!」
「僕のことを思ってくれてるのは嬉しい。でもそのために他の家族を傷つけるような君であってほしくない。花屋敷家だってもう本家の血を継いでる人間は多くない。もう僕はここにいるしかないから、君は璃偉太と佑果とちゃんと生きて」
「……ああ、ずっと側にいてくれていたのか……望夢……」
望夢さんをゆっくり抱きしめる望叶さん。
「……愛してる」
「あんまり璃偉太や佑果や歌華たちに迷惑かけちゃダメだよ?」
望夢さんのその言葉を最後に私たちの体は消え初めていった。もうお別れの時間がきた。恐れがあるからこそ、死を悼める。全ての呪縛が解けたらしい。エンディングは近い。その後、警察も到着し、事件は幕を下ろした。
「殺人未遂で逮捕する!」
「え?殺人未遂?」
全員の声が重なる。
「あー。あの人たち死んでなかったんだよ」
「えー!」
「嘘ついてごめんなさい」
磨輝と被害者たちが地下牢からひっそりと出てきた。
「死んだフリをしてたの?」
「いいえ。望叶さん。僕が治したんです」
磨輝……まさかこいつ……異能が目覚めた⁉︎
「そういえば指、怪我してたのにもう治ってるのね」
「うん。手当してくれるって言ってたのにゴメンね、とう姉。前はちょっと治るのを早くするくらいだったけど……完全に治せるようになったよ」
「まあなんかあるとは思ってたけどな」
「渚冬は気づいてたの?」
「まあ筋肉の動きから明らかだったからな」
お姉が尋ねてお兄が答える。
「何で言ってくれなかったんですか!」
「だって聞かれなかったし」
「💢」
「生きてたならいいだろ」
銀俄くんに怒られるお兄。
「あんなに小さかったあの子が……ありがとう。貴方たちのお陰よ」
「色々、大変だったね」
「璃偉太さん。佑果さん。お世話になりました」
私たちと宮籐家に頭を下げて帰路についていく銀俄くんと羽菜ちゃん。
「幸呼奈。あの水鉄砲の案は驚いたよ」
「ありがとう、茉津李。まさかアイドル時代の知識が活きるとはね」
本当に人生は分からないことだらけだ。
「あたしももっと鍛えるわ!」
「いやいや、地下牢お姉に蹴飛ばされて完全に壊れてたじゃん……」
「スゴい姉……」
本当にロクでもないところかと思ったが、調べてみると意外にも色々と見えてきたものだ。ふと望叶さんの花壇を見やる。蝶々が花にとまった。蜜を吸いながら美味そうに羽をパタパタしている。ここに着いてすぐはやまない雨もあるのではないかと思うほど雨が降っていたのに。私たちも帰ろう。それぞれの部屋に行って荷物をまとめる。そういえば事件のせいでほとんど自分の部屋にいなかった。
「あの電車、逃したら次2時間後よ!死ぬ気で走れー!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」