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「ドワーフの拠点? ということは、ここで何かを守っている?」
「炎スライムが狙っているものがここにある。……倒したか?」
「倒すことは出来たが、生かしておいた。何か問題でも?」
「……何も無い。瀕死状態に出来る腕ならば、客人のお前に預ける」
話が見えないまま、ドワーフは淡々と話を進めた。スライムのことで実力を確かめられたような、そんな感じがする。
倒した方が良かったのか、それとも――?
あれこれ考えるおれに向けて、ドワーフの男は何かの装身具を見せてきた。
「――それは?」
「チャルカの首輪。ドワーフが認めた者にしか着けられない品になる。それをお前……」
「おれはアックだ」
「アックに預けることを決めた。この先、別のダンジョンにも拠点がある。アックが身に着けている首輪に気付けば、魔物を差し向けることが無くなる」
他のダンジョン内にもドワーフがいるってことか。
魔物を差し向けるということは守り人のようなものだろうか?
「よく分からないがもらっておく。……それはそうと、ここにドワーフの娘が来なかったか? おれの仲間なんだが……」
「たとえドワーフだろうと資格無き者には魔物を与えている」
「来てないんだな?」
「スライムに出遭う前に魔物に遭えば、ここにはたどり着いていない…………」
はっきり言って意味が分からないが、ルティたちは別の道に行ってしまった可能性がある。そうなるとスライムに止めを刺すべきなのか。
「この先には何がある?」
「この先は、外への出口。ロネード丘陵地へと繋がっている……」
やはりダンジョンにおける”最後”の拠点のようだ。思っていたより大して広くないダンジョンだったが、属性違いで難易度も変わるのだろうか。
この先が外なら、後は出て行くだけになる。その前に給水拠点ということならシーニャを休ませておくか。
「……ん? シーニャ? あれ……どこに行ったんだ」
ドワーフの男が知っている感じには見えないし、探すしか無い。話が長くなりそうだと判断するとシーニャはどこかにいなくなる癖がある。
それとも、自分で判断して水でも取りに行ったか?
「客人アック。ドワーフの装身具を集めて遺物を封じろ……」
「遺物を封じる? 何だ、どういう意味――うっ! い、いない!?」
ドワーフの男は役目を終えたかのようにおれの前から姿を消していた。あの男が亡霊だったのかどうかは分からないが、拠点のドワーフに何かを託されてしまった。
ここは古代文明の遺跡ダンジョン。何が起こっても驚かないが、簡単に頼られてもって話になる。
「アック、アック~! こっちに来るのだ!! 水が沢山あって涼しいのだ!」
亡霊ドワーフと話をしている間に、シーニャは水を見つけていた。声がした方に向かうと、気持ち良さそうに水浴びをしているシーニャの姿があった。
「ははっ、楽しそうだな」
「ウニャッ、ウニャニャ!! 気持ちいいのだ~! アックも一緒に入るのだ」
「飲み水としての貯水池のような気がするけど、まぁいいか」
装束一式を外したシーニャは、無邪気な姿で水に飛び込んでいる。さすがにそこまで脱ぐことは厳しいので、上半身だけ脱いで思いきり水をかけ合うことに。
「ほらほらっ! シーニャ、思いきり行くぞ!」
「フニャウゥ!! ウニャッ!」
拠点となっているが熱いことには変わりない。そのせいもあって、久々に水を浴びまくりだ。本来なら防具を濡らしてはいけないが、水属性と氷属性を併せ持っているので特に問題は無さそう。
そんな感じで、どれくらい経ったか分からないくらい遊んでしまった。
するとそこに――。
「あーーーーーーーーーーー!! ズルい! どうして二人だけで遊んでいるんですかぁぁぁ」
どうやらルティたちがここにたどり着いたようだ。