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宿にガーランドの友と一緒に帰った二人は、疲れからか食事を早々に切り上げると、すぐに再び取れた部屋へと戻っていた。
「じゃあ次からは5分に一度は魔力探知をするわね」
「うん!大変だろうけど頼むね!僕も気を抜かないように周りの観察をするよ」
レビンはミルキィの魔力探知にどれだけの労力が掛かるのかわからない。
ミルキィはいくらでも出来るとレビンに伝えたが、レビンからすればミルキィが役に立てると思い、無理をして宣言したのかもしれないと思っていた。
(ホントに何でもないのに…過保護なんだから)
(ミルキィにばかり負担を強いる訳にはいかないよね…僕にも何かできる事が……現状維持?くらいしか思いつかないや…)
レビンはカレンから魔力探知にかかる労力を聞いていたが、 あくまでもカレンが感じるものしか分からなかったのだ。
しかし、ヴァンパイアとエルフのハーフであるミルキィは、レビンの想像以上の類い稀な魔法適正があった。
魔力探知にかかる労力は流石に呼吸をするようにとは言えないが、息を止めるくらいには簡単な事であった。
(慣れれば常に魔力探知し続けられそうだけれど……レビンに言えば心配するだけだから出来る様になってからも暫くは黙ってましょう)
「じゃあ明日は必要な物を揃えたらダンジョンだね!」
「ええ。お金の管理は任せているけど…大丈夫?」
「うん。僕達の支出は生活費くらいだから全然余裕だよ。むしろ魔石の売上でどんどん増えていってるよ」
ミルキィはサリー達が遣り繰りで苦労していたのを間近で見ていた。その為、レビンに任せきりしていたので、少し心配だったようだ。
「そう。何だかカレンさん達他の冒険者に悪いわね」
「そう?」
お金の管理をしているレビンは頓着なかった。
ミルキィはこいつに任せてホントに大丈夫か?と思うものの、今まで上手くいっていたのでこれからも任せる事にして、眠りについた。
翌朝ミルキィが起きるとレビンの姿がなかった。
朝の支度を終え、朝食を摂るために食堂に向かうと、そこにはレビンとサリーの姿があった。
「おはよう。サリーさんと…何かあったのかしら?」
自分に何も告げず、他の女性との逢瀬を楽しんでいたレビンへと、少し棘のある言い方をしたミルキィ。
もちろんレビンは気づいていない。
「おはよう。ぐっすり寝てたから声をかけそびれちゃった。サリーさんには他の冒険者のお金関係の事を聞いてたんだ」
「おはようミルキィちゃん。ふふっ。何もやましい事はないからそんなに怖い顔しなくても大丈夫だよ」
サリーに指摘され、ミルキィは慌てて自分の顔を両手で触って確かめた。
そして、いつも通り顔を赤くすると……
「レビンッ!それならそうと言いなさいよねっ!」
「えっ…だから…ごにょごにょ…」
先程の言い訳が聞こえていなかったとも思えず、さらにレビンは何で怒っているのかわからなくて、口籠もってしまう。
「…まぁ理由はわかったわ。それで?良い話は聞けたの?」
「…う、うん。やっぱりミルキィが言っていたみたいに、僕達は恵まれてたみたいだね」
レビンが聞いた話によると、ダンジョン以外の冒険者は、一度の冒険で、支出に対して5倍から10倍の収入を得るようだ。
その中には装備の摩耗は含まれていない。なので暮らしていけるからといって収入の殆どを使ってしまうと、消耗品でいつか詰んでしまう。
さらには怪我などの治療費やその間の生活費なども勘定に入っていないため、何らかの理由がありソロで活動している冒険者の早期退職率はかなり高い。
命や、文字通り身体を賭けて働いている割に、収入は高いとは言えないだろう。
それでも冒険者になるものが跡を絶たないのは、この世界の教育レベル、又は発展具合が低いからである。
レビンの愛読書である『冒険録』にでてくる登場人物達も、ほとんどは寒村出身者であり、貧しい暮らしからの一発逆転劇が話の大半でもある。
そういった英雄録・冒険録はその辺に溢れていて、その話を聞いた子供達がお金に夢を見てなるのが冒険者であり、少し裕福な家庭に育った子供達が立身出世に夢を見てなるのが兵士(騎士)である。
レベルや魔法が存在するこの世界に、いい意味でも悪い意味でも男女差別(区別)はない。
「じゃあ素材や依頼料が貰えないダンジョンだと、かなりキツいわね…」
ミルキィの感想の通り、ダンジョンの戦闘での見返りはかなり低いと言わざるを得ない。
同じ戦闘に限って言えば、2割程の収入に落ち込んでしまう。
しかし支出は同じくらい掛かるわけで…つまり、かなり効率的に効果的に魔物を狩れなければ生計はたてられないのである。
魔物との遭遇率はダンジョン以外の場所とはかけ離れて高い。
それをうまく利用し、尚且つ支出の少ない戦い方をしていかなければ早期退場待った無しである。
「僕の使っている剣だとかなり先に進まない限り壊れる事がないみたいだね。
あの時勢いに任せて買っていてよかったよ」
「…正直あの時は止めようか少し迷っていたわ」
レビンの持つ黒曜鉄と少量のヒヒイロカネの合金の剣は、あの当時の全財産だった。
金に無頓着なレビンであっても、普通であれば保身に走り買う決断を下す事など出来ないのだが……色々とタイミングが良かったと言わざるを得ない。
「それでいてミルキィちゃんは魔法適正が高くて魔力もカレンより豊富でしょ?
パーティの財布係としては二人をアランとカレンとトレードしたいわ…」
(サリーさん。それだと全く違うパーティなんじゃ…)
声に出してつっこもうかと思うレビンだったが、サリーの表情と声色から本気度が伺えなかったので、心の中に留めるのであった。
サリーと良い?話が出来た二人は早目に朝食を摂り、次のダンジョン探索の買い出しへと向かうことに。
「それにしても他の冒険者は大変ね…」
買い出し中にもミルキィは気づいた事がある。
「傷薬に魔法薬…それの予備…みんな買ってるね」
雑貨屋の中で割と高価な部類に入る商品棚の商品が、飛ぶように売れているのを再確認した二人。
元々目には入っていたが、自分達には不必要な為、深く考えてはいなかったのだ。
(ミルキィが偶に怪我をしてもレベルドレインすれば治るし、僕が怪我した事はない……強いて言えばアランさんに小突かれた頭のたんこぶくらい)
二人は一応傷薬なども持っているが、使った事はない。
最初の頃にミルキィが怪我をした時と、レビンの自傷行為の時にミルキィが使ったきりだ。
最近ではミルキィがかすり傷や捻挫をすればレベルドレインで治している。
(初めてレベルドレインで怪我が治った時は驚いたな…)
レビンの回想にミルキィの回想が被る。
(あの時はレビンが調べたがってたのに、私が傷つくから我慢してて…
結局それに気付いた私が自傷行為をして、レビンに怒られながら血を吸ったのだったわね)
回想まで被るとは……双子疑惑が微レ存……
レベル
レビン:11(79)
ミルキィ:68