始まりは一夜の過ちだった。
ツアーが始まって数週間。
全国を飛び回るスケジュールに、疲労はピークを迎えていた。
それでも、ステージに立てばそんな疲れはどこかへ消える。
ファンの歓声、メンバーとの一体感、照明の熱――。
すべてが心地よくて、ずっとこの時間が続けばいいと思う。
だけど、現実はそう甘くない。
公演が終わり、楽屋へ戻ると、どっと疲れが押し寄せる。
「ふぅ……今日もやり切ったな」
ソファに深く腰掛けながら、息を吐いた。
タオルで汗を拭いながら、メンバーたちの様子を眺める。
舘さんは黙々とストレッチをし、翔太はスマホを片手に何かを打ち込んでいる。
佐久間と阿部は楽しそうに話し込み、康二とめめとラウはふざけ合っていた。
そして、照は――。
ふと目を向けると、照は黙ったまま水を飲んでいた。
端正な横顔が、どこか疲れて見える。
「照、今日キレキレだったな」
「……ん、まあな」
俺の声に、照は小さく頷いた。
「でも、無理すんなよ。照、疲れてんじゃね?」
「……ふっかこそ、さっきからソファと一体化してんぞ」
「はは、否定はしねぇ」
そう言いながら、俺は笑った。
だけど、その笑顔の裏にある疲れは、きっと照にはバレてる。
「……部屋戻って、ちゃんと休めよ」
「照もな」
その言葉を最後に、楽屋を後にする。
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