前回と同じ店‥
一緒に来た小川さん、智さんと共に個室に通される‥
祐希さんに会うのはあれから一ヶ月ぶりだろうか‥‥。その間、電話も連絡も一切していなかった‥
個室に入る前に足が止まる‥そんな俺の背中を小川さんが思いっきり引っ叩いてきた!
「‥ったーーー!!痛いっすよ!」
涙声で後ろを振り向くと、
(元気出せ!!俺からの愛情だよ♡)と口パクで伝える小川さん‥。
いや‥口で言ってくれ‥‥‥
「なんだ、お前たち、相変わらず元気だなー笑」
そんな俺たちに、先に来ていた太志さんが笑いながら声をかけてきた。‥‥その隣に‥山内さん、そして、祐希さんがいた‥‥。
「お疲れ様っす‥」
情けない事に、挨拶するのが精一杯だった‥‥‥‥。
年内最後ということもあり、各々色んな話題で盛り上がっていく‥‥。
俺も近くに小川さん達がいたので、何とか普段通りに出来ていたと思う。
そんな時‥‥‥
「遅れましたーすんません」
入口で声が聞こえ、振り向くと勇斗がそこにいた。そして‥‥‥
「(ぴょこ‥)キャッ♡代表の皆さんじゃないですかー、会えて嬉しいです♡」
勇斗の後ろからも声が聞こえ、ひょっこりと現れたのは‥‥‥‥モデルのエリカさんだった。
「えっ、もしかして‥あのモデルの!?」
途端に周りがざわめき出す‥そりゃ、そうだ、今最も人気のあるモデルさんなのだから‥。
「ごめんなさい♡勇ちゃんと近くで会ったから、どんな食事会なのかなって来てしまって‥とてもたのしそうだけど‥お邪魔になりますよね、私なんかが入ったら‥」
「まさか!全然、祐希とCMでも一緒でしたよね?よかったら一緒にどうですか?」
山内さんが嬉しそうに案内する。
「えっ♡いいんですかー、嬉しい♡」
エリカさんはそう言うと、迷うことなく祐希さんの近くに行き、隣に座っている太志さんを見つめ‥
「わたし‥人見知りしちゃうから‥‥祐希さんの隣じゃないと‥って、ごめんなさい!ご迷惑ですよね?」
「あー、全然大丈夫、どうぞ」
スッと、自分の席を彼女に差し出す‥隣が空いたため、嬉しそうに彼女は座りニコニコと祐希さんを見つめていた‥‥。
「‥どっかの誰かと同じぐらい厚かましい態度だな‥」
「誰の事っすか?」
小川さんの皮肉めいた言葉に、勇斗が聞き返す。
「お前以外にいねぇだろ、今日も俺の席取りやがって」
‥そう、俺の隣に座っていた小川さんが、トイレに立った瞬間に素早く移動してきた勇斗がその席を占拠していたのだ‥。
「藍の隣は俺なの」
「ちょっ、誰が決めたん?そんな事」
聞き捨てならない言葉に反応するが、勇斗はただ笑ってるだけだった。
「あのモデルもお前もなんか似てるよな」
「あー、そりゃまあ、従姉弟だから」
「えっ、従姉弟なの?なら、似てるのも納得か‥」
小川さんが感心したように呟く。
俺もまじまじと2人を見比べる。彼女に最初に会った時、誰かに似てるなと思ったが‥勇斗だったのか‥‥
時折、エリカさんの楽しそうな声がやけに響いてくる。見たくはなかったが、時折チラッと見てしまい‥エリカさんが祐希さんに触れるたびに胸が痛んだ‥。
触らないで‥‥‥。
祐希さんはどんな顔をしているんだろうか‥怖くて表情を見ることは出来なかった‥。
勇斗Side
エリカのやつ。近くで会ったって‥アイツ、俺の携帯見たな‥。
じゃなきゃ、絶対に会うはずなんてないからな‥。
まぁ、それだけキャプテンが、好きなのか‥
そんな事を考えながら、ふと、隣の藍を見る。
一ヶ月前、泣いている藍を抱きしめてから‥日を追うごとに藍が気になって仕方なかった。
今日は‥どうなんだろうか。
俺の知らないところで泣いていないだろうか‥。
理由は聞かないと言ったが‥もし藍を泣かせたやつを見つけたら、ぶん殴ろう‥そんな風にまで思っていた‥。
‥‥‥隣の藍は、いつも通り笑っているかと思ったが‥ふと下を見つめた時の表情は‥前にも見た切なさを含んでるやりきれない顔をしていた‥。
‥笑って欲しい。
藍には笑っていて欲しい。
思わず自分の手に持っていたビールを藍の前に差し出す‥
「えっ?」
「藍も呑んでみろよ!呑めるんだろ?」
「呑めるけど‥迷惑かけるから、呑まんようにしてる」
「迷惑?人の事気にして呑まないようにしてんの?」
「‥まぁ、そんなとこかな‥もう意味はないんかもしれんけど‥」
藍Side
それでもしつこく、お酒を勧めてくる勇斗を何とか交わしていると‥‥‥
「キャッ♡これ、強いお酒なんですねー。酔っちゃったかも♡」
‥エリカさんの楽しそうな声が響く。お酒も進み、相変わらず祐希さんの隣りで幸せそうに話すエリカさんを見るたび‥羨ましくて仕方なかった。
周りの皆も、「美男美女」だと囃し立てる‥。
‥耐えきれずに、トイレ‥と伝え、部屋からとびだす。外に出ると、冷たい夜の空気が肺の中に入り込み‥内側からも凍っていくようなそんな感覚を味わいながらふと、考える‥。
来てよかったんやろか‥今だに祐希さんと挨拶以外、話せていない‥。
ポケットの中にそっと手を入れる‥そこには、以前祐希さんから貰った指輪を入れたポーチを忍ばせていた‥。
ポーチからそっと取り出し、指輪を眺める‥。
今はつけることもできない指輪‥‥‥。
ふぅー、‥あまり遅くなってはいけないと思い、中に戻ろうとした瞬間‥
キャッ!!
と向かいから走ってきた女性とぶつかりそうになった!それを何とか交わした俺だったが、その弾みで後ろに転んでしまう‥。
「わっ!ビックリした‥って、藍さんじゃないですかー」
走ってきていたのはエリカさんだった‥。
「ごめんなさい!マネージャーから電話があったから!早く戻らなきゃって急いでて‥」
「全然ええですよ、エリカさんも怪我はなかったですか?」
ううん、大丈夫とニッコリ笑うエリカさん‥。
「今日は‥祐希さんとたくさんお話出来て嬉しくて‥♡二次会も一緒に行っていいって言われたんです!フフフ♡」
良かったですね‥。
それを言うだけで精一杯だった‥。
‥早く席に戻ろう‥‥‥‥‥‥‥。
エリカSide
話をした後‥藍さんはすぐに個室に向かって歩き出していた‥その時‥何かポケットから床に落ちたので、拾って渡そうと思ったが‥
「藍さん‥何か‥‥‥」
そう言いかけて途中でやめる‥‥。
「ん?どうかしました?」
「やっ‥‥‥‥ううん、何でもないです!わたしの勘違いだったみたい‥」
そう言うと、藍さんはそのまま部屋に戻っていった‥。
わたしは‥藍さんが落としたであろう‥指輪を掌で握りしめていた‥‥。
この指輪‥‥‥。
藍さんがいなくなってから、指輪を凝視する‥。シルバーのシンプルな指輪‥‥。
でも、中には刻印が刻まれている‥。
わたしはこれと同じものをあの日、見た‥‥‥‥‥、
あれは‥‥‥‥1ヶ月前‥‥‥‥‥‥
テレビ局での仕事を終え、次の撮影現場に向かっていた時‥廊下を歩いていたら、偶然祐希さんを見かけた。
こんなところで会うなんて♡嬉しくなってつい駆け出した時‥思わず転んでしまい声が出てしまう。
「大丈夫ですか?」
わたしの声に気づき、祐希さんが駆けつけてくれる♡
「祐希さん///恥ずかしい‥見てました?わたし、そそっかしくて‥/// 」
差し伸べられる手を握りしめ、愛しい祐希さんを見つめる‥。
もっと一緒にいたいな‥‥‥。
立ち上がると同時に祐希さんの手が離れようとしたので、考えるよりも先に祐希さんの胸に倒れ込むようにもたれかかる‥。
「!、大丈夫ですか?」
「あっ、ごめんなさい。急に立ち眩みがして‥でも、大丈夫です、歩けますから‥祐希さんに迷惑かけるわけにはいかないですし‥少し休めば‥」
「どこに行くつもりでした?俺、送るよ」
「えっ?いいんですか♡次の撮影があるので駐車場に行こうと思ってたんです‥ 」
俺も仕事終わったので、送りますと祐希さんは、軽々とわたしを抱っこして、駐車場まで送ってくれた‥。
腕に抱かれながら、チラッと祐希さんの顔を覗くと、時折目が合い‥恥ずかしそうに背ける顔が素敵だった♡
‥この時間が続けばいいな‥そう思ったが‥何やら祐希さんは時々時計を見て、時間を気にしてる素振りを見せる‥
‥待ち合わせでもあるんだろうか‥まさか、他の女性!?
‥そんな事を考えていたら、駐車場に着いてしまった‥
祐希さんと離れなければならない‥
「どの車かな?」
「あっ、えーっと‥‥やだっ、いけない!マネージャーに連絡するの忘れてて、もしかしたら次の現場に先に向かっているのかも‥」
咄嗟に嘘を付く。
「次の撮影場所はどこ?」
「◯◯っていう場所なんですけど‥」
「それなら、俺で良かったら送っていくよ。どうですか?」
「えええー!いいんですか?嬉しいです♡」
それなら‥と祐希さんは自分の車までわたしを連れて行ってくれて‥助手席に座らせてくれる‥
祐希さんの車に乗っちゃった♡テンションが上がるわたしの横で席に座ろうとした祐希さんに着信が‥。
ごめん‥と外に出て少し離れた場所に移動する祐希さん‥
その姿に見惚れながらふと、車内の中を見渡す。
どれもきちんと整理されていて、祐希さんらしい。そんな中、引き出しが少し開いていたので外で話す祐希さんを気にしながら、中を覗く‥。
すると‥‥小さな箱があり、開封してあるようなのでバレないように中を覗いてみる‥
綺麗なシルバーリングが入っていた‥。よく見ると何か彫ってあるのが見える‥
Ti amo‥。
確か意味は‥愛してるとかじゃないかな‥。
祐希さんのものなのだろうか‥
それとも‥‥‥‥‥‥。そんな事を考えていたら、走ってくる祐希さんが見え慌てて箱をもとに戻す。途中で充電切れちゃって、笑いながら話す祐希さんの横顔に見惚れていたわたしは、そのあと‥すっかり指輪の事を忘れていた‥。
そうだ‥‥‥
祐希さんが持っていた指輪と同じデザインにメッセージ‥‥‥。
何故これを藍さんが‥‥‥‥
わたしはそっと指輪を握りしめ‥自分の鞄にしまい込む‥‥‥‥
何もなかったかのように‥‥‥‥‥‥。
コメント
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続きが気になると同時に エリカさんを申し訳ないけど シバき倒したい😅
心臓ギューってなるー