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忘愛症候群。原因不明のそれは、ある日突然、彼女に襲いかかった。
「蘭くん!また明日ね〜!」
「……………..迷惑だからもう来んな。」
照れ隠しみたいなものだった。どうせ明日も、幼馴染は灰谷家の玄関のドアを叩き、竜胆が部屋に入れ、俺が追い返す。彼女は「また明日!」って寂しそうな笑顔で俺らに手を振って帰る。そう信じて疑わなかった。
「忘愛症候群?なぁに、それ。」
両想いもしくは両片想いであることを絶対条件とし、何かをきっかけに発病する病気らしい。聞いたことはあるけど創作だと思ってた。実際創作の奇病だと世間には広まってるのは知ってるし、まさか身近に信じる奴が居たなんて。
「本当にあるんだもん!経験したことあるし!」
「そっか〜。でも俺は信じられない、かな笑」
そう言うと彼女は顔をくもらせた。最初は信じてもらえないことに対して泣き出しそうになってるのかと思ったけどそうじゃないらしい。
「忘愛症候群ってね、どちらかが死ねば思い出せるんだよ。もし蘭くんの好きな人が忘愛症候群になったら蘭くんはどうする……..?」
「自殺するかも。さ、もう遅いし帰りなよ。」
そう言ってその日も彼女を追い返した。
次の日、彼女は来なかった。どうしても外せない用事があったとか生理痛が酷かったとか、何とか理由を作って、納得させようとしたけど昨日の話が頭をよぎって離れない。
まさか、忘れられた……..?いや、忘れるはずがない。ケータイのロック画面には俺と竜胆と彼女のスリーショット。彼女の手首には、小さいながらも蜘蛛の刺青が入ってる。俺と竜胆が身体に入れたのと同じデザインだし、目に付きやすい。
こんなにも思い出せる要素があるのに、なんで忘れちまうんだよ。
「兄ちゃん、恋雪が………帰ってきてないって。」
「誰、その恋雪って。竜胆の女?」
「………は?そんな冗談笑えないって!俺も好きだけど何より兄ちゃんの好きな奴じゃん!!」
夜。竜胆にそう言われた。いや、恋雪って誰なんだよ。俺が好きなのは彼女だ。毎日のように俺に会いに来る、健気な幼馴染なんだ。でも、そういえばどんな顔だったか思い出せない。名前も、思い出せ……..ない。
もしかして、忘れてんのって俺……..?
𝙴𝙽𝙳
補足】
13〜15歳の出来事だと思ってください🙇♀️
「俺も好きだけど」なんて言ってるけど、竜胆は恋雪に恋愛感情持ってないです。
竜胆→(利用しやすい♡)←恋雪→(好き)←蘭
ずっと冷たかった蘭が急に優しくなったことに違和感を感じた幼馴染の恋雪。
蘭が優しくする相手は、初対面の人や警戒してる人(主に女)、利用したい人のみ。(捏造)
自分のことを忘れているのだと気付いた恋雪は蘭の「自殺するかも。」という一言を聞いて、蘭の覚悟を悟る。そして、自分もそれだけの覚悟があることを知ってもらおうとする。
彼女は今頃、何処で何をしているのだろうか。
※忘愛症候群には一瞬で相手に関する全てのことを忘れるタイプと、少しずつ記憶が消えていくタイプがありますが、今回の蘭は後者です。