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蒼乃
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翠(´・ω・`)
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#我々だ
目を覚ます。
いつも通りだった。
暗い。
静か。
時計はない。
窓には厚いカーテン。
外が夜なのか、それとも朝なのか。
もう、それを気にすることもなくなっていた。
レウはベッドから起き上がる。
欠伸をする。
少しだけぼんやりした頭で、部屋を見回す。
机。
棚。
本。
窓辺の石。
乾いた花。
少しずつ増えていった、自分のもの。
最初は何もなかった部屋が。
今では、自分の部屋らしくなっている。
それが少し嬉しかった。
「……お腹空いた」
呟く。
立ち上がる。
いつものように食堂へ向かった。
長い廊下。
階段。
角を曲がる。
最近では、もう迷わない。
最初の頃は何度も遭難した。
今思えば、よくあんな城で生活できたものだ。
食堂の扉を開ける。
「おはよう」
返事はない。
レウは少しだけ首を傾げた。
「……らっだぁ?」
いない。
いつもなら、どこかにいる。
本を読んでいる。
椅子に座っている。
窓のない部屋でぼんやりしている。
たまに突然現れて、変な命令をする。
それがいつものことだった。
けれど。
今日は誰もいない。
「⋯寝てるのかな」
そう思って、レウは椅子に座った。
しばらく待つ。
何も起きない。
腹が鳴る。
「……先に食べよ」
一人で食べ始める。
肉を焼く。
スープを温める。
パンを切る。
最近では、料理も少しだけ慣れてきた。
らっだぁが前に城の奥から探し出してくれた、長期保存できるらしいパンやスープ。
狩りで捕ってくれた獣肉。
森の豊かな果実や野菜。
最初は火を使うのすら怖かった。
今では当たり前になっている。
二人分の皿を出す。
そこで。
レウは手を止めた。
「……」
二枚。
癖だった。
自分の分と。
らっだぁの分。
でも。
今日はらっだぁはいない。
けれど。
いつからか二枚出すようになっていた。
レウは少し考える。
そして。
そのまま置いておいた。
「……別にいっか」
椅子に座る。
一人で食べる。
静かだった。
前なら。
これが普通だった。
何も聞こえない。
誰もいない。
ただ食べて。
寝る。
それだけ。
なのに。
今は。
少しだけ違った。
「……静かだな」
思わず呟く。
当然、返事はない。
レウは食事を続けた。
けれど。
いつもより美味しくない気がした。
食事を終える。
皿を片付ける。
二枚あった皿は、一枚だけになった。
それを棚へ戻す。
もう一枚は、そのまま残した。
理由は分からなかった。
「……あとで食べるかもしれないし」
誰に言うでもなく呟く。
自分でも変だと思った。
その後。
城の中を歩いた。
らっだぁを探すつもりはなかった。
ただ。
暇だったから。
そういうことにしておこうと思った。
廊下を歩く。
中庭を見る。
花は少し枯れていた。
森で拾った石を見る。
階段を上る。
地下へ続く階段の前まで来る。
足を止める。
「……」
昨日までなら。
ここでらっだぁが突然現れたかもしれない。
『命令』
なんて言って。
くだらないことを頼んでくる。
けれど。
今日は来ない。
「……どこ行ったんだろ」
小さく呟く。
その時。
遠くから音がした。
扉が開く音。
レウは振り返る。
「らっだぁ?」
返事はない。
違った。
風の音だった。
少しだけ。
胸の高鳴りが落ちる。
「……何期待してんだ」
自分で自分に呆れる。
そして歩き出した。
しばらくして。
らっだぁの部屋の前に着いた。
扉は閉まっている。
レウは立ち止まった。
ノックをする。
「らっだぁ?」
返事はない。
もう一度。
「いる?」
静かだった。
少し迷う。
入っていいのか分からない。
でも。
今まで何度も入っている。
花冠だって見た。
だから。
そっと扉を開けた。
「……」
いない。
部屋は暗い。
机の上には本。
その隣には。
あの花冠。
もうかなり乾いている。
それでも。
そこにある。
「……まだ飾ってるんだ」
少し笑う。
部屋の中を見回す。
何も変わっていない。
なのに。
らっだぁがいないだけで。
こんなに広く感じる。
「……」
レウは机の前の椅子に座った。
少しだけ待つ。
戻ってくるかもしれない。
そう思った。
でも。
時間は分からない。
時計がないから。
どれくらい待ったのかも分からない。
ただただ、静かだった。
「……帰ってくるよな」
誰もいない部屋で呟く。
返事はない。
レウは少しだけ俯いた。
そして。
「……早く帰ってこないかな」
小さな声だった。
自分で言ってから。
少し驚く。
いつの間にか。
らっだぁがいることが。
当たり前になっていた。
しばらくして。
廊下から足音が聞こえた。
レウは顔を上げる。
ゆっくりと。
近付いてくる。
聞き慣れた足音。
扉が開く。
「……何してるの?」
らっだぁだった。
レウは思わず立ち上がる。
「遅い」
「?」
らっだぁが首を傾げる。
「どこ行ってたの」
「森」
「一人で?」
「うん」
「何しに?」
「散歩」
「散歩……」
レウはため息を吐く。
「言ってよ」
「なんで?」
「……」
理由。
理由なんて。
分からない。
でも。
「……心配するから」
らっだぁが瞬きをする。
「心配?」
「そう」
「俺が?」
「うん」
「なんで?」
レウは少し黙る。
それから。
「……らっだぁがいなかったから」
そう答えた。
らっだぁは何も言わなかった。
ただ。
少しだけ目を細める。
「そっか」
それだけ。
レウは少し不満になる。
「何それ」
「嬉しい」
「……」
今度はレウが黙った。
らっだぁはいつものように笑っている。
でも。
ほんの少しだけ。
いつもより嬉しそうだった。
それを見て、レウはある言葉を思いついた。
「じゃあ、俺から命令」
「なに?」
「次から言って」
「どこか行く時?」
「うん」
「分かった」
らっだぁは頷く。
「命令だから?」
「……そういうことにしとく」
「そっか」
また笑う。
その後。
食堂には二枚の皿が並んでいた。
レウはそれを見て。
少しだけ笑う。
らっだぁは相変わらず食べない。
けれど。
向かいには座っている。
「何食べてるの?」
「鹿」
「美味しい?」
「美味しい」
「そう」
らっだぁはそれだけ言う。
レウも食べ続ける。
静かな食堂。
大きな机。
二人分の椅子。
二枚の皿。
何も変わっていない。
でも。
少し前までは。
この場所に誰もいなかった。
今は違う。
「ねえ」
「なに?」
「明日、森行く?」
「いいよ」
「じゃあ決まり」
「命令?」
「違う」
「珍しいね」
「たまにはいいでしょ」
「うん」
らっだぁが笑う。
レウも笑った。
二人の声が。
広すぎる食堂に響く。
それは。
ほんの少しだけ。
この広すぎる城を狭くしてくれる音だった。
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コメント失礼します(* .ˬ.)" どの作品もとても大好きで楽しみに見てます 体調に気をつけて頑張ってください 応援してます 続きを楽しみに待っています
一生幸せに生きてくれ…