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黒星
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彼の衣服はひどく乱れており、額には大量の汗がにじみ、前髪が肌に張り付いている。
その様子からは、彼がどれほど凄まじい焦りと必死さで、ここまで文字通り死に物狂いで走ってきてくれたのかが、一目で見てとれた。
「さっちゃん…っ!!!無事……っ!?」
倉庫の中に響き渡る、怜治さんの切実な叫び声。
それを聞いた瞬間、僕の心臓がドクンと大きく跳ね上がった。
「…!れ、怜治……さん……っ」
怜治さんが僕の姿を見つけるなり、大きな歩幅で慌ててこちらへと駆け寄ってくる。
その姿を見た瞬間、僕の張り詰めていた緊張の糸が、ぷつりと完全に切れてしまった。
「……っ!う、ぅ…っ、う、あぁぁ~……っ!!」
涙が止まらなくなり、嗚咽混じりで泣きじゃくりながら、怜治さんの腕にしがみついた。
怜治さんはそんな僕の小さな身体を、壊れ物を扱うかのような強さでギュッと力強く受け止めてくれた。
「大丈夫、もう大丈夫だよ……遅くなってごめんね」
そう言って、彼は僕の背中を大きな手で何度もさすり、乱れた髪を愛おしそうに優しく撫でてくれた。
「さっちゃん…どこか、あの男に乱暴にされたり、怪我させられたりしてない……?」
「……うっ、あっ、ぅん…だいじょ、ぶ。でもっ、体熱くて…まだ不安で……頭がおかしくなっちゃいそうで…っ」
ヒートのせいで正常な判断力が完全に麻痺してしまっている僕は
とにかく怜治さんの体温から一瞬でも離れたくなくて
彼のワイシャツの胸元に顔をぐいぐいと押し付け、必死にしがみついてしまった。
「……落ち着いて。大丈夫だからね」
怜治さんの声が鼓膜に染み込む。
彼の広い胸元に顔を埋めたまま、僕は小刻みにガタガタと震え続けていた。
僕の口から熱く淫らな吐息が漏れるたびに、彼の薄いシャツの生地が
僕の涙と息の熱でじっとりと湿っていくのが自分でもよく分かる。
僕を抱きしめる彼の両腕の力はとても強く、確かな男の感触を持ちながらも
決して僕を苦しめるような締め付け方はせず
僕が呼吸を繋ぎ止められるだけの絶妙な隙間を、常に残してくれていた。
「怖かったよね。こんなところに一人で閉じ込められて……でも安心して。あの男は、俺がここに来る直前、完全に組み伏せて警察の連中に突き出しておいたから」
胸の奥から低く響いてくる声。
その大人の男の声が耳元で心地よく揺れるたびに
僕のオメガの身体の奥底から、狂おしいほどの『ある渇望』が、津波のように一気に押し寄せてきた。
怜治さんの、匂い
いつもお店で香っている清潔な石鹸の匂いと
大人の男特有の、シトラスの深い、濃厚な香り。
コメント
1件
第27話、読み終わりました。怜治さんが倉庫に駆けつけるシーンの切実さと、さっちゃんが泣きじゃくりながらしがみつく瞬間の安堵感が、本当に胸に迫りましたね。特に「大丈夫、もう大丈夫」の台詞と、彼のシャツが涙と息で湿っていく描写が印象的です。ヒートの不安定さの中での、匂いへの依存と渇望——オメガの本能が巧みに描かれていて、設定が生きているなと感じました。怜治さんの強さと優しさのバランスも秀逸です。