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深澤side
辰「ん……。」
目を覚ますと寝室の天井が見えた。インターホンに気づいて玄関に向かったところから記憶が曖昧。だけど今こうしてベッドに横たわっているから、きっと何事もなかったんだろうと思った。
辰「すぅっ、ふぅー…。」
深呼吸をして体を起こす。そのとき右手が何かに触れたのに驚いて視線を落とすと、そこに居たのは別れを告げたはずの元恋人がベッドに突っ伏してすよすよと眠っていた。
辰「ひ、ひか…る。なんっ、で……。」
2人きりで会うの自体が久しぶりで、混乱が募る。
照「ん………。あ!っ、ふっか!大丈夫?!」
辰「え、うん。だいじょぶだけど…。」
照「良かった、倒れてたからめっちゃ焦った。」
辰「倒れてたの?俺。」
照が言うには、マネージャーに言われてお見舞いに来たら玄関には鍵がかかってないし、呼んでも返事はないし、探していると寝室のドア近くで倒れていたらしく抱えて寝かせてくれたらしい。
辰「やさしぃなぁ…照は…ほんと。((ボソッ」
照「ん?何か言った?」
辰「ううん、言ってないよ。俺大丈夫だし、もう帰ってもいいよ。ありがとね。」
照「ふっかは俺に帰って欲しい?」
辰「えっ?」
照は泣きそうな顔でそう言うと、ごめん。とひとこと言って俺に抱きついた。久しぶりの照とのハグは暖かくて涙が出そうなほど強く、強く抱きしめられた。
照「嫌だったら蹴り飛ばしても殴っても何してもいいんだよ…。」
辰「ん…、うん。」
ここで照を殴ればこの関係は完全に終わる。
少しの間、沈黙が流れた。その間も、照は腕の力を緩めることなく俺のことを抱きしめていた。
照「…殴らないの?」
辰「…殴れないよ……。」
俺は照のことを殴れなかった。きっと、心のどこかでまだ照と一緒に居たいという気持ちが照を苦しめたくないという気持ちよりも大きくなって居たんだと思う。
照「俺のこと嫌いになったんじゃないの?」
辰「そんな訳…、ないだろ。」
照「じゃあなんで、、、!」
辰「言えない、言えないけど…。」
照「ふっか、改めて告白してもいい?」
辰「ダメ、絶対ダメ。」
照「なんでっ、!?」
辰「だから…、!…っ、言えない。」
絶対に言えない。今告白されたら、確実にOKしてしまう。照のことを苦しめたくないって決めたのに、照が告白してきてくれるのを心のどこかで期待している自分が居るのが許せない。
辰「っ…。ふっ…グスッ、……っ。」泣
照ともう一度付き合いたい。
照を俺のせいで苦しめたくない。
ふたつの気持ちがどっちも強くて、決めたつもりが決めきれていなかった自分が情けなくて涙が止まらない。
照「ふっか、なんで泣いて…。」
辰「っ…、……っんだよっ!」泣
照「え、今なんて…。」
辰「っ、照を苦しめたくないんだよ!!」泣
言ってしまった。きっと、優しい照のことだからそんなこと気にするなと言ってくるに違いない。
照「…〜っはぁ〜焦ったぁ……。」
辰「…へ?……グスッ…。」泣
照「顔も見たくないとか言われるかと思った…」
辰「そんなこと…。」
照「ねえ、ふっか。」
…あ、まずい。この目、知ってる。
照が真剣なときにする目だ。
照「俺ともう1回付き合ってほしい。」
辰「……だめ…だめだよ…。」
照「じゃあ、ふっかのことまだ好きでもいい? 」
照はほんと、ずるいなぁ……。
辰「…ん、いいよ。」
俺がどんなに照を突き放したところで、この先これからも俺と照が戻れることはない。
少なくともきっと、友達には。