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昼下がり、井戸端で水を汲んでいたときやった。背後から、低く押さえた声が聞こえた。
【……あんた、健と関わるんはやめとき】
振り向くと、昨日も睨んできた年配の男が立っていた。
その背後には、村の女たちが数人。みんな目を細め、口を固く結んでいる。
【健は呪われとる。あれに関わったら、あんたもろとも不幸になるだけや。】
「呪いって……」
【あの家元の血は、人を喰う。昔からや。】
ざわり、と背筋を冷たいものが走った。
確かに、昨夜の健さんの姿を思えば否定はできない。
でも……
「……それでも、私は彼を信じます」
その言葉に、女たちの表情が一瞬固まった。
だがすぐに、年配の男が鼻で笑った。
【なら、覚悟しとけ。あいつは、愛するもんほど喰い殺す】
その言葉は、石のように重く胸に沈んだ。
井戸の水面に映る自分の顔は、少しだけ強がって見えた。
屋敷に戻る途中、風が強くなり、木々の影が道を揺らす。
ふと、森の奥から視線を感じた。
黄金色の輝き……
健の瞳やった。
その瞳は、まるで『俺から離れるな』と言っているように見えた。