テラーノベル
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テレビ局の狭い楽屋。 他のメンバー3人は、スタッフとの打ち合わせやケータリングを取りに部屋を空けていた。奇跡的に二人きりになった数分間。
柔太朗はソファに座り、台本をチェックしているふりをしていたが、その耳は廊下から聞こえる足音に過敏に反応していた。
「……ねえ、勇ちゃん。さっきの収録中、やりすぎだってば」
柔太朗が低い声で窘める。本番中、勇斗は事あるごとに柔太朗の肩を抱き、耳元で内緒話をしたり、カメラに映らない位置でその手を軽く握ったりしていたのだ。
「えー? 普通のスキンシップでしょ。みんな『仲良いなー』って笑ってたよ」
勇斗は鏡の前で髪を整えながら、鏡越しに柔太朗を凝視した。その瞳は、全然「普通」じゃない。獲物を狙うような、熱い独占欲が透けて見える。
「笑ってたのはメンバーだけ! スタッフさん、変な顔してたもん……っ」
柔太朗が言い切る前に、勇斗が素早く動いた。 ソファの背もたれに手を突き、柔太朗を覆い隠すように身を乗り出す。
「……スタッフさんが見てたから、怒ってるの? それとも……俺に触られて、変な感じになっちゃったから?」
「なっ……! 違うし……!」
柔太朗は顔を真っ赤にして顔を背けた。 でも、勇斗は知っている。柔太朗がこうして強く否定するときほど、実は心が揺れていることを。23歳の年下の恋人は、強がりの裏でいつも勇斗の愛を求めている。
「……柔、こっち向いて」
勇斗の声が、一段低くなる。 抵抗しようとした柔太朗だったが、勇斗の大きな手に頬を包み込まれると、抗えずに視線を合わせた。潤んだ瞳が、助けを求めるように揺れている。
「……勇ちゃん、ここ楽屋だよ? 誰か来ちゃう……」
「わかってる。だから、声出さないでね」
勇斗は柔太朗の唇を、自分の親指でなぞった。 それだけで柔太朗の呼吸が浅くなり、「ひっ……」と小さな吐息が漏れる。勇斗はその隙を逃さず、柔太朗の首筋に鼻先を寄せ、深くその香りを吸い込んだ。
「……っ、ん……勇ちゃん、だめ……っ」
柔太朗の手が、勇斗のシャツの胸元をぎゅっと掴む。 「だめ」と言いながらも、その指先は勇斗を突き放すのではなく、しがみつくように震えていた。これこそが、勇斗を狂わせる柔太朗の「無自覚な誘惑」だ。
勇斗は理性を必死に繋ぎ止めながら、柔太朗の耳たぶを甘噛みし、そのまま鎖骨のあたりへと唇を滑らせた。衣装のシャツを少しだけ押し広げ、そこに自分だけの「印」を刻もうとする。
「……っあ、……勇ちゃん……! そこ、衣装で隠れない……っ!」
「隠せばいいじゃん。……お前が俺のものだってこと、俺だけが知ってればいいんだから」
勇斗の独占欲が、狭い楽屋の空気を熱く染め上げる。 柔太朗は逃げ場のないソファの上で、勇斗の肩に顔を埋め、漏れそうになる声を必死に堪えていた。
その時。
「おーい! 弁当選ぶの早すぎだってばー!」
廊下から、元気なメンバーの声が近づいてくる。 柔太朗は弾かれたように勇斗を突き放し、慌てて乱れたシャツを整えた。勇斗も素早く定位置に戻り、何食わぬ顔でスマホを手に取る。
「……っ、……ばか、勇ちゃんのバカ……」
顔を真っ赤にしたまま、柔太朗は足早に楽屋を飛び出していった。 その後ろ姿を見送りながら、勇斗はふっと満足げな笑みを浮かべる。
(……あんな顔、メンバーに見せんなよな。……帰ったら、たっぷり可愛がってやるから)
ポケットの中で握りしめた拳は、まだ熱を持ったままだった。
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