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#短編
水底 ずい
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友だちのお姉さんの話。
友だちとお姉さんはそこそこ年の離れた姉妹で、確か七歳差だったかな。お姉さんが大学入学をきっかけに上京した頃、私たちはまだ小学生でした。
だから、お盆と年末年始くらいしかお姉さんに会えなくなって、友だちは結構寂しそうにしていましたね。
お姉さんの方も慣れない一人暮らしや学校生活で、やれ勉強が大変だ、やれバイトが忙しいって。電話がかかってくる度に嘆いていたそうですけど、なんだかんだ充実した生活を送っているようでした。
「あんたも勉強頑張りなって毎回言われるのよ?」
そう言って友だちは頭を抱えていましたけど、電話があった翌日は大抵機嫌が良くて、お姉さんが好きなんだなって本当に微笑ましくなりました。
それで、三年の春までは特に何事もなく過ごしていたそうですけど、その春以降変な顔が見え始めたみたいです。
お姉さんが住んでいたのは三階の部屋らしく、ある日窓の向こうに一瞬だけ人の顔が見えたそうです。体は見えないけど、片手だけ窓にペタァって張り付く感じで。
その日は疲れてるのかもって早めに床についたそうなんですが、それ以降ふとしたきっかけでそいつを見ることが増えて、お姉さんは少しずつノイローゼ気味になってしまったんです。
だんだん様子がおかしくなっていくお姉さんに、両親は早く帰ってこいって言ったそうですが、お姉さんはなかなか首を縦に振らなかったそうで……。それでも、ある日突然財布だけ持った状態で帰ってきたって言っていました。
お姉さんは帰宅早々家中の窓とカーテンを閉め切ると、部屋の隅でガタガタと震えていたらしいです。
「あんたにだから話すけど……」
そう前置きをすると、両親にも話さなかった理由をぽつぽつと話してくれたそうです。でも友だちは、未だに自分にだけ話した理由が分からないって困惑していました。
お姉さんが窓の外に変なものを見かけるようになって二週間が経った頃、連日の疲れからつい寝落ちしてしまったそうです。窓は施錠していたそうですが、カーテンは全開。色々と無用心だったって本人も言っていたみたいです。
それで、ふとした物音に目を覚ますと、寝ぼけ眼の向こう側──、要は全開のカーテンの向こうにあの顔が覗いていたそうです。
思わずヤバい! と思って目を閉じたところ、施錠したはずの窓が開く音はするわ、生温い風が入るわで吐きそうになってしまったそう。殆ど藁にも縋る思いで知っている御経を心の中で唱えていったらしいんですけど、突然耳元で、
「無駄だよ」
そう、楽しそうに笑われたそうです。もう一瞬で全身の毛が総毛立ち、無意識に枕元の財布を引っ掴むと、転がるように部屋から這い出たようでした。
実家に帰ってからもお姉さんは落ち着かず、閉め切られた窓の方をちらちらと見ていたそうです。そんなある日気分転換に連れられた高層複合型施設で、お姉さんは吹き抜けのある最上階から身を投げて死んでしまったそうです。
お姉さんがそこで何を見たのかは誰にも分かりませんが、そんな一連のお話を友だちがニコニコと楽しそうに話してくれたことを今でも忘れられません。
コメント
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うわっ…最後の「ニコニコと楽しそうに話してくれた」でゾッとした😭💦 お姉さんの体験ももちろん怖いけど、それを笑顔で語る友だちの方がむしろ不気味すぎて鳥肌立ったよ…「無駄だよ」のセリフの軽さが逆に怖さ倍増させてる!! ホラーとしての余韻がやばい、これは忘れられない話になるわ…