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コンサート当日の夜、彼女がよく行くカフェで待ち合わせをした。
「お待たせしてすいません。」
「いえ。お仕事お疲れ様です。行きましょうか。」
広げていたスケッチブックを片付けて、向かった先は個室居酒屋。
「お酒飲みますか??」
「今日はやめときます。先生は。」
「なら私もやめときます。」
「遠慮しないで。どうぞ好きなのを。」
「じゃあ、1杯だけ。」
と頼んだお酒はウイスキーロック。
「強いんですか、お酒。」
「強いほうだと思います。」
料理を食べながら、少しずつ飲み進める彼女。
「そう言えば、カフェで広げていたスケッチブックって。」
「今日観たオペラをイメージして描いてたんです。」
「魔笛、でしたね。」
「ご存じですか??」
「サビがやたら高音の歌は、街中でよく耳にします。」
「魔笛の代表曲ですからね。観る度に感じ方が変わるので、その都度スケッチしてるんです。見ますか??」
「よかったら、是非。」
渡されたスケッチブックを捲っていく。
「これは。」
「夜の女王のアリアです。あの歌をイメージして描いたんです。」
「気迫が凄い。」
「復讐の歌ですからね。」
「それは、初耳です。」
「綺麗なメロディからは想像もつかないですよね。」
紙を捲りながら色々教えてくれる。
「音楽の知識もすごいですね。」
「絵を描くときに調べていると、自然と身に付きました。でも、楽器はからっきしダメなんです。」
盛り上がっていると、ラストオーダーの時間に。
「帰りますか。」
彼女は財布を出して席を立つ。
「先生がお手洗い行ってる間に済ませました。」
「そんな、悪いです。お酒飲んでないのに。半分出します!!」
「気にしないで。オペラの話楽しかったのでその分も。」
「ほんとにすいません。ごちそうさまでした。」
店を出て。
「よかったら送ります。家はどの辺に??」「学校の近くなんです。」
「なら、一緒に帰りましょう。」
電車に乗り、最寄駅に着いた瞬間。
「降ってきましたね。もう少し保つかと思ったのに。」
「小雨のうちに、急ぎましょう。」
の筈が、大粒の雨に。
「ここです!!」
とオートロック付きのアパートに到着した。「相澤先生、風邪引きます!!うちに上がって身体拭いて下さい。」
「俺は大丈夫です。」
「ダメです。それで熱出したら私、申し訳たたないです!!入ってください!!」
言われるがまま部屋に案内され、タオルを用意してくれる。
「お風呂沸かしてますから、上がってください。」
「ほんとに、大丈夫ですから。」
「すぐ止むと◯ーグルも言ってます。お風呂入って服が乾く頃には止んでますよ。」
ほんとに止むのかと言うくらい雨音が大きくなる。流れのまま、お風呂もいただくことに。
「男女兼用のバスローブです。洗濯してるので、よかったら着替えて下さい。その間に服乾かしますから。」
「すいません、ほんと。」
「気にしないでください。」
「先生も着替えてください。そのままだと風邪引きます。」
「そうでした。着替えてきますね。」
下着が透けているまでは言えなかった。言えばどうなるか分かってしまうから。
「相澤先生、お風呂どうぞ。」
「心絵先生が先に入ってください。」
「…長くなりますよ??」
「構いません。」
「分かりました。」
数十分後。
「今度こそどうぞ。」
「行ってきます。」
リビングに戻ると、彼女は眠ってしまっていて。
「先生、心絵先生。」
ゆすると、目を開ける。と思えば、また眠ってしまう。ため息をついて少し様子を伺う。乾ききっていない髪が横顔にかかっているのが妙に色っぽい。それを耳にかけても起きない。
「心絵先生。ベッド行きましょう。」
と抱上げてベッドまで運んでいると。
「相澤、先生っ!?」
「暴れない…っ!?」
2人ベッドに倒れこみ、沈黙する。そして無意識に唇を奪っていた。しかし彼女は抵抗しない。
「抵抗しないのか。」
「今日じゃないけど、いつかこうなるって気がして。私、相澤先生のこと好きです。今日1日で確信しました。」
「俺も好きだ。初めて話した時から…。」
彼女は、身体を委ねた。雨が止んでいるのに気づかずに、この夜2人は教師という一線を越えた。