あれから、週一だったデートも、二回、三回と回数が増えていった。
変わったのは数だけではない。
デートの度に毎回と言って良いほど、おれはゆぺくんと体を重ねた。
最初の頃の抵抗感も恥ずかしさも、回数を重ねるごとに、少しずつ薄れていく。
それでもまだ、この恥ずかしさが消えることは無かった。
知っている人、ましてや本物の弟のように可愛がっていた人相手に慣れないというのもある。
あんなにおれよりも背丈が低くて可愛かったのに、今ではまるでそれが幻だったかのよう。
気付いたら越えられていた背丈。
昔よりももっと綺麗な顔立ちになり、可愛い顔からかっこいい顔になっていた。
行為中、必ずゆぺくんはおれに「愛してる」なんて言葉を何度も呟く。
それが本当かどうかなんて、おれには分からない。
だけど吐息混じりのそれは、かっこよくてまるで王子様のよう。
あんな風に言われたら、誰であろうと恋に落ちてしまうのだろう。
…それと同時に、あの言葉で、今まで何人もの人を落としてきたんだろうと思った。
おれ以外にだって、きっと言っているんだろうなあ。
そう思えば思うほど、どこか胸が苦しくなった。
そんな気持ちを捨て去りたくて、おれは必死に忘れようとした。
…だけど、無駄だった。
ゆぺくんと過ごしていくにつれ、どんどん気持ちが溢れていく。
最近のおれはおかしい。
それは周りにも知られているようで、今なら殺せるんじゃないかとどこからか情報を嗅ぎつけた奴らが、度々おれを狙ってくるようになった。
どうやら、下の者が上の者を破る、いわゆる下剋上を試みるやつが多いらしい。
だけど、何人来ようと結果は同じ。
おれは狙ってくる奴らを次々と倒した。
そんなおれにゆぺくんは言った。
🌟「僕も手伝う、」
声色は普段よりも少し低く、青色の透き通った瞳の奥には、若干怒っているような、だけどどこか悲しそうに見えた。
全く感情は読めないけど、明るい雰囲気ではないことは確かだ。
🌸「どうして?」
そう問いかけてみれば、ゆぺくんは不思議そうに言った。
🌟「え?だって、好きな人は守りたくなるでしょ?」
当たり前のようにそう言う姿がどこかおかしく、つい、ふっ、と笑ってしまった。
おれはゆぺくんのそういうところが好きなんだろうな、と今更ながらに思った。
🌸「…分かった、お願い」
🌟「ふふっ、笑」
ゆぺくんは顔をくしゃっとさせて笑った。
あれから、おれたちは共に戦った。
自然と連携がとれ、どんなに強い敵がこようとも、おれ達二人なら倒せそうとさえ思った。
その日も、復讐だとか言って殺そうとしてきた奴らが押し寄せてきた。
モブ「…なんで敵同士つるんでんだよ!」
🌟「誰と誰が敵同士だって?言葉は選んだ方が良いよ。お前の為にも。」
ゆぺくんはその敵めがけて銃を打った。
🌸「…どうして学習しないんだろうね」
🌟「それな、負けるって分かってるよね」
戦いが終わったあと、普通の人からしたらちょっぴりおかしな話をゆぺくんとしながら、もう動かない”それら”を無視して、のんびりと帰り始めた。
それにしても、ゆぺくんとおれは相性が良いのかもしれない。
ふと帰りながら思ったことはそんなことだった。
元々おれは、接近戦での戦いがほとんど。それは使う武器が刀やナイフだから。
一方ゆぺくんはというと、拳や銃で戦っている。前に得た情報通りだ。
そして戦い方を見る限り、力は人一倍強いし、銃の正確さはずば抜けている。
だけど、判断力が少し欠けている気もする。
普通のマフィアよりは良いけど、強いマフィアと比べると遅い。
それに、つい自分の気持ちに身を任せて動いてしまっている部分もあるように見えた。
挑発されたらすぐに力に任せる、きっと売られた喧嘩は全て買うタイプの人間だと思った。
おれとは逆のタイプ。でも、だからこそお互いの苦手な部分を補えるんだ。
🌟「ほら、俺たちが組めば最強でしょ?笑」
ゆぺくんはいたずらっ子のようにそう笑った。
確かにそうなのかもしれない。
前にもゆぺくんから同じようなことを言われたことがあったけど、その時は信じなかった。
でも今は違う。おれ達なら…
🌸「…あれ、」
どうしてゆぺくんとなら、って思ってしまうのだろうか。
そもそも忘れかけていたけど、仮にもゆぺくんはおれの標的。
本来つるんではいけないし、一緒に戦うなんて以ての外だ。
🌟「…どうしたの?」
心配そうにゆぺくんはおれの顔を覗き込んだ。
🌸「あーいや、なんでもない」
おれは適当に誤魔化した。
…それにしても、どうしたものか。
期間は残り二週間にまで迫っていた。
それは全て、おれが先延ばしにしてきたのもあるし、そもそもゆぺくん相手に勝てそうに無いというのもある。
だけど一番の理由は、おれにゆぺくんを殺す気が無いからだと思う。
もちろん任務だからやらないといけないのは分かってる。
分かってるけどできなかった。
仕事と恋愛、どっちが大切なのか。
それはおれの深刻な悩みだった。
みなさんは仕事と恋愛、どっちを取りますか?
更新遅くて申し訳ないです((
私物語の流れとかメモしてるんですけど、最近変更点多すぎてやばい(?)
書いていくにつれ、こっちの方が面白いんじゃないかとか考えてたら最初と全然違う展開になってましたw
とりあえずスクロールお疲れ様です🫶🏻
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