テラーノベル
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「私はコーヒーを飲むけど、柚原さんは?何かいる?クリームソーダとかどう?」
「・・・じゃぁ・・・クリームソーダで・・・」
必ずしも自分に好意的とは言えない態度の希実を後にして、桜子はフードコートのカフェでコーヒーとクリームソーダを買った、トレイを両手に持って戻りながら、桜子はちらりと考える
小説教室は働きながらは毎回準備が大変だが、数万単位の添削依頼ならこれからも続けてもいいかもしれない、トレイをテーブルに置き、クリームソーダのグラスを添削の顧客だろう希実の前にそっと滑らせて微笑んだ
「私の添削を受けてくれる気になってくれて嬉しいわ、一緒に良いものを作りましょうね、それで?私はどんな風にあなたの力になればいいのかしら?原稿は持ってきた?」
希実はプラスチック製のピンク色の小さなUSBメモリーをスッと桜子に差し出した、桜子はそれを受け取りながら、思いのほか重みのあるその小さな物体を手の平でしばらく転がした
「ここに原稿が入っています、ページは40×40の163ページ、260,800文字」
「・・・後で私のメールアドレスにファイルを添付してくれてもいいのよ?」
「ネット経由なんか、どこでどう漏れるか分からないじゃないですか、だからこうしてここまでわざわざ手渡しで持ってきたんです」
「・・・・」
とにかく自分の作品に恐ろしく自信があって、それを漏洩されるのを極端に嫌がっている・・・そんな印象を受けた希実が言った
「私はエージェントを紹介して欲しいんです」
「エージェント・・・」
「出版局に作品を持って行く『営業職』のことですよ!私の作品を最適の出版局に持ち込んでもらえる、そんな営業職の人や編集者を探しているんです、先生の個人的な推薦があれば見てくれる人がいるでしょ?」
彼女の問いに桜子は大見栄を張って言った、コーヒーカップを口元に運びながら精一杯の余裕を顔に貼りつける
「・・・そりゃあ・・・いるかもしれないけど・・・コネで本を出してくれる出版局など無きに等しいわよ?」
だんだんこの子に腹が立ってきた、カップを置く音が意図したよりも少しだけ強くテーブルに響いた
「断言して言うけど、新人は商業本を出せない世の中じゃないのよ?むしろその逆で、プライドだけが高くて色んな出版局の手垢が着いた古参作家よりも、聞き訳が良くて、過去作の残念な販売部数を引きずっていない、新しい作家をどこも欲しがっているわ、スコッパーなんか特に地下アイドルみたいに自分が推している新人作家に育ってもらいたいものよ、そんな人達を味方につけたら―」
「ま、『言うは易し、行うは難し』ですよね」
驚いたことに希実は桜子の意見に声を上げて笑い出した、クリームソーダのストローを指先でくるくる回しながら、本当におかしそうに肩を揺らしている、桜子は眉間に皺を寄せて言った
「・・・何がおかしいの?ふざけているなら添削は他の人をあたってちょうだい」
私はそんなに暇じゃないのよとばかりに真剣にムッとした桜子の空気が希実に伝わったのか、急に彼女がソワソワし出して言った、手の中のストローを所在なげに弄ぶ指先が少しだけ止まる
「すいません・・・つまり・・・私は・・・その、あの教室で自分の作品のことをバラしたくなかったんです、私の作品は完璧だから」
「完璧?どういう所が完璧なの?」
すると希実は車椅子から立ち上がる勢いで、身を乗り出して桜子に語りかけた、頬がほんのり上気し、瞳の奥に先ほどまでとは違う熱がともっている
空音
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シュメール
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コメント
2件
希実…それだけの自信があるのなら自分で出版社に売り込みに行くのはどうかな🤔桜子に任せて大丈夫かな🥺
希実さんの「完璧だから」って断言するところ、すごく印象的でした。それまでコソコソした態度だったのに、急に情熱が溢れてくる感じがして。クリームソーダとUSBメモリーっていう組み合わせも、なんだか彼女らしさが出てるなと。それにしても、エージェント紹介をいきなり頼むって大胆すぎますよね…でも、そこからどう展開するのか、すごく気になります。